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いじめ嫌がらせ相談がダントツ!
「個別労働紛争解決制度」をご存じですか
労働者個人と事業主との間の労働条件や、職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し早期に解決を図るための制度を「個別労働紛争解決制度」といいます。
都道府県労働局では、各地にある労働局や各労働基準監督署にて総合労働相談コーナーを設け、総合労働相談員がその相談にあたりつつ、労働基準法違反か、個別労働紛争解決制度により解決を図った方が良いのか、アドバイスしつつ、その対応にあたります。
紛争解決制度は、都道府県労働局長による「助言」・「指導」と、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があり、先月、厚生労働省が「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。
さて、今年公表されたデーターによれば、相談件数自体は前年度より増え129万782件と昨年度の 8.6%増となりましたが、助言・指導申出の件数、あっせん申請件数はそれぞれ前年度より減少しており、法制度の問い合わせが中心だったようです。
件数は減ったとは言え、「助言・指導・あっせん」の相談内容を見てみると、「いじめ・嫌がらせ」が約8万件、「自己都合退職」が約4万件、ついであまり差はないものの「解雇」となっています。
上記図は「個別労働紛争の主な相談内容別の件数10年間の推移」(厚生労働省)ですが、平成24年を境に解雇相談を抜き、常に1位となっているのが「いじめ・嫌がらせ」、その相談件数も他の相談を大きく引き離し、ダントツの相談件数となっていることがお分りになるかと思います。
パワーハラスメント対策は事業主の義務に
令和2年6月1日(中小企業では令和4年4月1日)から、パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました。
上記の「個別労働紛争の主な相談内容別の件数10年間の推移」において、令和2年度の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が若干、前年度から減ったのには、令和2年度からパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となったことが多少は影響しているのかもしれません。
さて来年は、いよいよ中小企業でもパワハラ対策が事業主の義務になります。実はこの義務化、パワハラ対策が事業主の義務化だけでなく、職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止対策も強化されています。
後者については、企業の規模に関係なく、令和2年6月1日から施行されていますので、中小企業のみなさま、対策は大丈夫でしょうか?
職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置
さて、中小企業では来年から、大企業ではすでに始まっている「職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置」の内容について簡単におさえておきましょう。
1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
➄ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
4. そのほか併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシー(注)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
(注) 性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
これら大きく分けて4つの講ずべき措置が義務になりました。
職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止対策強化
なお、「職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止対策」については、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を中小企業でも講じることが既に義務付けられています。
これらについては、以下の3つの防止対策が強化されました。
1.事業主及び労働者の責務
2.事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
3.自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応
ある日突然、「いじめ・嫌がらせ」に関するあっせん通知書が届いて驚くことがないように、また、社員が安心して働いてもらう職場環境の整備を行うことで、社員の力を存分に発揮してもらえるよう、今一度、自社のパワハラ防止措置について見直されてはいかがでしょうか。