映画「市子」
映画「52ヘルツのクジラたち」に関連して「市子」を鑑賞。
Amazon Prime Video にて視聴できます。
興味のある方は、ぜひご覧になって見て下さい。
ネタバレ等気にしない方に、ここから先は読んで欲しいと思います。
あくまでも個人的な感想です。
冒頭から音楽の効果がすごかった。
チェロが重たく静かに響いたり、
市子の鼻歌で童謡「にじ」が流れて来る。
「にじ」元々好きな曲だが、こんなにも切なく感じるとは思わなかった。
「きっと明日はいい天気~」この歌詞に息苦しささえ覚える。
そもそも、事の発端は市子の出生にある。
離婚後300日間は、他の人との子どもだとしても元夫の子どもとして戸籍上処理されてしまう。
色々な理由で、元夫と距離を置きたい母親は出生届を出さないという選択をしてしまう。
これって、日本の法律が悪いのでは?と思ってしまう。
どういう経緯で300日なのだろう。甚だ疑問だ。
【4月から変わる】離婚後300日以内でも再婚相手の子どもに嫡出推定の規定見直し 女性の再婚禁止期間も撤廃|日テレNEWS NNN (ntv.co.jp)
疑問に残った為、調べたら、今年の4月1日から施行されるらしい。
少しでも無戸籍問題が解決につながれば、と思う。
(それでも、「再婚していれば」と条件があるのはどうかと思うけれども。)
もっと日本の家族像が自由であればいいなと思う。
必ず両親が揃っているのがいいとか
母親が幼児期は育てるのがいいとか
古い価値観がずっとある。
その人が決めればいい、
何がいいか、どうしたいか。
その時に手続きを踏めばちゃんと認められる世の中になってほしい。
シングルマザーでは出生届出せないのかね?
よくわからん。。。
この映画「市子」では無戸籍であるがゆえに
色々な問題が二次災害の様に立て続けに起こる。
市子は市子として生きられなかったし、
妹の月子も支援が受けられないのもバレないようにだろうし
するとヤングケアラーの市子が月子を世話するし
月子にもちゃんと意思があるのに
目が合ったまま
目の前の姉に命の綱を切られる様に
人工呼吸器を外される。
あの時の杉咲花ちゃんの、何とも言えない
汗のしたたる湿度の中での疲れと
「もういいでしょ」とでも言うような目が
救いようが無くて、
静かに、でもしっかりと意思を持って動く手が
苦しい位、無駄がなくて、迷いもなくて
ああ、本当だったら何か地域のサービスや病院に頼ってどうにか解決できたはずの事をこの家族だけで抱えて、戸籍をごまかして、苦しい苦しい渦の中ずっと暮らしてきたんだな。
後半で出てくる、母親の語りで幸せな時もあった、というのが余計悲しかった。家族4人で写真に写っていて、それを市子は大事に持っていた。
市子の過去もずっと衝撃的だったけど、これから先
冬子として生きて行くのかと思うと、本当に「悪魔」なのだろうか。
でも、そこまでしないと、普通に生きられない市子の境遇は
もう社会全体の責任としか言いようがない。
戸籍を得るために、誰かの身代わりに。
自分の本当の名前を失って、それでも生きてきたし、生きて行く。
普通の人が、しなくてもいい経験をどれだけしても報われない。
彼女の様な人生を歩む人が、どうか1人でも少なくて済むように。
祈るばかりである。
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