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記憶


仕事の帰り。

すれちがった男の人から「ふわっ」と懐かしいにおいがして、立ち止まって後ろ姿を追ってしまった 。

いま思い返しても どんな人だったのか、どんな服を着ていたのかも全く思い出せない。

ただ、懐かしいにおいだけが 私の遠い記憶を呼び起こして通り過ぎた 。  



いちごやうさぎの柄の香りつき鉛筆。
色とりどりのろうねんど。
こすると香りのする折り紙。
書くとくだものの匂いのするボールペン 。  

身につけている香水だろうか。
洗剤や柔軟剤の香りなのだろうか。
あるいは、その人が持っていた荷物の何かだったのだろうか。


陽炎の立つ、暑い暑い夏の
一瞬の時間旅行。


小学校の正門の前の文房具屋さん。
川からの坂道を登り切った駄菓子屋さんの
アイスケース。

中学校の購買。
それから思い出したの。

夏になるとそこここでバッグやビーチサンダル、
ボールなどのビニールの匂いがしたこと。

家の近くにプールがあって、アイドルの曲が聞こえてきていたこと。

特別だった永遠の夏。


そのうち行ってみようか。
子供の頃に通っていた学校。          


https://youtu.be/gJX2iy6nhHc

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