始まりは桜の雨から

ちいさなしあわせをかき集めて暮らしています。

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最近の記事

記憶

仕事の帰り。 すれちがった男の人から「ふわっ」と懐かしいにおいがして、立ち止まって後ろ姿を追ってしまった 。 いま思い返しても どんな人だったのか、どんな服を着ていたのかも全く思い出せない。 ただ、懐かしいにおいだけが 私の遠い記憶を呼び起こして通り過ぎた 。   いちごやうさぎの柄の香りつき鉛筆。 色とりどりのろうねんど。 こすると香りのする折り紙。 書くとくだものの匂いのするボールペン 。   身につけている香水だろうか。 洗剤や柔軟剤の香りなのだろうか。 ある

    • 花火大会

      毎年、近くの花火大会が結婚式を挙げた日とほぼ重なる。だから私たちはその日を結婚記念日と呼んだ。     いつだったか、普段は多くのことを語らない主人が、「花火職人になりたかった」と話してくれた事があった。 そんな彼に似合う日だと思う。 結婚して2年目くらいだったか、ささやかだがお祝いをと、食事の用意をしていると 「ドン ドン ド~ン」花火の音が聞こえてきた。     「あ!!今日は花火大会だった!!」 そう言ったか言わないか、娘を自転車にひょいと乗せて、花火の音のする

      • 循環

        先日。電車の中での出来事。 日中暑かったせいか疲れていた。 乗車して、向こう側のドア近くにふと空席を見つけ、誰も座りそうもないので少しホッとして近づくと、 その横のシートの端に座る男性と目が合う。 私は何かしたのか?くらいの違和感を感じながらもその男性の横に腰を下ろした。 しばらくすると、右隣に体の大きな男性がいることに気づく。 その男性がしゃっくりのような声をあげた。 「酔っ払いかも。ちょっと失敗したかな」 そんなことを思いながら、かと言ってすぐに立ったり移動したり