ドラレコとあおり運転と俺
最近、”あおり運転”の影響もあって、会社の車にドライブレコーダーが設置された。
前後に一つずつカメラが付いている。おまけに、運転技術が採点される機能付き。
毎日運転するたびに、誰かに見張られているようで緊張する。
今日も取引先を回るため、車に乗らなければならない。
乗車する前には、必ず点呼をする。
『お酒を飲んでいませんか?アルコールチェックお願いします。』
『薬を飲んでいませんか?』
『睡眠時間は何時間くらいですか?』・・・
一連の点呼を終え車に乗車。
シートベルト、バックミラー、サイドミラー、ガソリンの有無を確認し、ブレーキを踏みサイドブレーキを解除、周りを確認し、そ~っとアクセルを踏む。
そ~~っとだ。
急発進、急ブレーキは絶対にご法度だ。点数が下がるうえ危険運転と認識され、すぐ会社へメールが飛ぶ。
スピードも出せない。法定速度で走る。一般道を走るので、だいたい40~50kmで走る。40kmで走る時は、感覚的にかなり遅く感じる。
二車線ならば左側を走行できる。でも、一車線しかない道路では、安全運転だから常にあおられっぱなし…。
バックミラーを見ると『早く行け!』と言わんばかりに、後ろの車が迫ってくる。
ものすご~く近い!バックミラーいっぱいに車が見える。
たまらず後ろの車を先に行かせようと駐車できる場所を探した。コンビニの看板が目に入り、一息呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
すると、コンコンと窓をたたく人相の悪い男が脇に立っている!
アァァァ…あおってきた車に乗っていた男だぁ…警察に連絡しようかな…窓は開けない方が良いんだよな…どうしよう、怖いよぅ…
「兄ちゃん、これ。」
男が何やら差し出した。あれ?どこかで見たことのあるカバン…
私は車内に置いたはずのカバンを探した。
『ない!!』
なぜ、男が持っている???
「兄ちゃん、このカバン、車の上にのってたぞ、ずーっと。おっちょこちょいだな、ははは。」
「ははははは。」
ドラレコに気を取られ、なぜか乗車する前、無意識のうちに車の上にカバンを置いてしまっていたらしい。
幸い安全運転だったため、落とさずに済んだ。
知らずに落としていたら、契約がパァになるとこだった…
人相の悪い男だと思っていたが、なんとも神様に見えてくる。
「ありがとうございます!会社クビにならずに済みます!」
深々と頭を下げてお礼を言った。
と同時に、あおり運転でイチャモンをつけられるのかと誤解したことも心の中で謝った。
『人は顔じゃない、心だよ』と教訓になった。
あと、ドラレコの機能に車の屋根にもカメラが付くようにしてもらえたら、ありがたい…。
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