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200ページ超のフルカラー同人誌を作った話

 214ページのフルカラーの同人誌(A5)を発行しました。という話です。
 1年半ほどかけてだらだらと描いていたフルカラー漫画+αを収録したものになります。

 この記事は、コミティア150(2024年11月)前に公開予定でしたが、頓挫していたので改めて今、加筆し公開いたします。

 先に言うと、結論:214ページのフルカラーの同人誌はいいぞ

 あとコミティアのカタログ「ティアズマガジン」の次回151号(2025年2月)の「プッシュ&レビュー」で、この同人誌『大脱走』を紹介していただけることになりました!やはり214ページのフルカラーの同人誌はいいということか……。



同人誌の漫画本編

 漫画の内容をごにょごにょと。

 擬人化の漫画です。

 歴史要素も若干……というかだいぶ混じっていて、戦争後の占領期日本が舞台です。戦争×擬人化。あるいは歴史×擬人化でしょうか。

 ニッチですね。いえ、むしろ私のXのタイムラインでは本当によく見る題材です。最強TLの超メジャージャンルです。

表紙

裏表紙(親切な状況説明の記載つき)

 いちおう一次創作(正確には一次創作イベント・コミティアで頒布できるジャンルである擬人化創作)であるものの、実在の企業・商業団体を擬人化創作として扱っているため、この記事でも大きく御社の名前を書く勇気がないのですが……(いわゆる検索除けってやつやね)。

 この漫画の具体的な背景は簡潔に下記に記しますが、同人誌を頒布する時に改めてフライヤーにでもできればいいですね。というのは第二次世界大戦、日中戦争、太平洋戦争、アジア・太平洋戦争、戦没船、宇品、呉、特設艦船……みたいなものをです。

 そっちのオタクじゃないとみんなよくわからないですよね!?すみません。ですが、あえてそういう時代を選択したのです。なぜならその隠れた時代の陥穽こそを提示したかったから。たとえばみなさんは日本軍の軍人と軍属の違いをご存知でしょうか。

同人誌の漫画本編の歴史背景

 軍隊は、あるいは日本海軍は、軍艦・艦艇――戦艦や航空母艦や重・軽巡洋艦など――を頑張って揃えていました。また特務艦や雑役艦船――給油艦や曳船など――も所有しています。

 しかし、平時(戦争のない時期)から常に大量の艦船を造って所有することができません。というか、程度の限界がそこにはあります。

 ふねがたりない。

 ですので、戦争になった時、軍隊とは関係のない民間の会社、船を所有する海運会社から船を借りました。いわゆる徴傭(徴用)です。御国奉公の時代ですから、当然嫌だとも言えずまた言わず、貨客船や貨物船は軍隊の輸送船となります。

 あるいは、新しかったり、構造上の見込みがあったりすれば改装されて特設船、あるいは特設艦になります。特設艦船です。今横浜に繋留されている氷川丸は戦争中は特設病院船氷川丸でした。病院船は国際法で攻撃してはならないことになっており、そのおかげで氷川丸は戦争を生きのびたとも言われています。氷川丸の姉妹船の2隻、平安丸と日枝丸は特設潜水母艦となりました。両船は今は海深くに眠っています。

 船から正規の軍艦、航空母艦へとなるふねたちもおりました。戦争前から航空母艦――空母への改造を望まれて造られた船です。政府から建造の助成金を受け、海運会社はその船たちを造りました。新田丸級貨客船(貨客船新田丸→航空母艦冲鷹、八幡丸→雲鷹、春日丸→大鷹)や、あるぜんちな丸級貨客船(あるぜんちな丸→海鷹、ぶら志”る丸)などです。政府と企業と軍隊の複雑な利益と損失への打算がありました。なにより国のためでした。そういう時代でありました。

 その商船改造空母のいちばんの栄誉を冠したるふねは航空母艦隼鷹でしょう。もともとの名前は貨客船橿原丸でした。戦争がなければ、日米を結ぶ豪華客船になっていたかもしれません。もちろんすべては夢のあとかたでしたが……。

 負け戦であった太平洋戦争では、たとえば日本郵船は237隻の船を失いました。膨大な数でした。もちろん海運業自体が壊滅状態となりました。

 また、船の上に乗っていた熟練の乗組員も失いました。

 彼らは軍属という、軍隊での正規の軍人とは違う人員として、戦闘員ではない輸送任務などに携わることになりました。戦争の始めこそは友好的な交流があったという証言もありますが、太平洋戦争が苦戦するようになると軍属たちは苛烈な戦場の海で消耗品同様として扱われるようになります。

 ちなみに1971年に発行された、戦没船を記録した『日本郵船戦時船史』は、「日本郵船二百三十七隻、三菱汽船四十八隻の他に日本郵船所属の小蒸汽船、機帆船などを加え、計二百八十二編に及び、戦没者は日本郵船四千百四十三人、三菱汽船四百八十七人、更に他社よりの派遣者、徴用による乗組員など、七十八人、計四千七百十七人」の記録が記されています。

部下の乗組員はただちに救命ボートをおろし、必死の救命作業をつづけていました。なにしろ海面には、おびただしい数の兵隊が浮かんでいましたから。ボートはすぐ超満員になる。すると、ひとりの下士官がボートの上で、『船員をたたき殺せぇ。その分、兵隊が余計に助かる!』と怒鳴るんですよ。
/『海に墓標を』

 物語は、ここから始まります。

ウェブでの連載

 本編はウェブに連載していて、加筆修正後の最終版(同人誌版と同じもの)は現在ウェブに掲載しています。pixivか、私の個人サイト(こちらはXへのリンクからさらに飛んでいただければと思います)で読むことができます。

企業擬人化創作漫画 大脱走 1/2 

 漫画を描き始めたきっかけは「華やかじゃない貨客船もの」が描きたいなとか、「戦争というよりは例の課税100%からの再起の話」が描きたいなとか、まあなんだ、そういうふわふわした欲求でした。
(完結するのに数年かかったのはまさにその「ふわふわ」のまま描きだしてしまったところにあります。漫画の連載の計画、なんなら漫画の話にも具体性がほとんどなく、1話終われば休んでまた1話、というふうに描いていたので無駄に時間がかかりました。最初からすべてネームを切っていればもう少し早く完成できたはずです。反省点。)

 ちなみにアップロードした具体的日付は、

1話:2022年5月28日
2話:2022年7月23日
3話:2022年11月21日
4話:2023年4月30日
5話:2023年8月1日
6話:2023年11月28日
7話:2024年1月27日
 ※番外編2編は除く。

 となります。もちろん「大脱走」のみに創作の時間を割いていたわけはありません。

同人誌の内訳

 A5サイズで厚さは1.7cmほど。

 特に今年になって紙とインクの価格が猛烈に値上がりしたため、予算の面でマジで死ぬかと思いました

 フルカラーを極少部数刷り、廉価版としてグレースケールを頒布するか、背伸びをしてフルカラーをn十部数刷るか悩み、後者にしました。n十と言っても限界があり、結局小数部なのには変わりませんが、グレースケール廉価版で妥協するより良かったと思います。マジマジのマジで英断。

 以下、写真です。

これが1.7cmだ!

 表紙は太平洋海域にいる浅間丸、という設定。足元から戦火に燃えています。

 太平洋の女王といわれたうるわしき貨客船でしたが、戦争で軍隊の輸送船となり、雷撃で戦没しました。


 エピグラフと表題です。


 追想の中の浅間丸。


 事件が会議室で起きている…みたいな図になりました。

 この「税」の話もそのうち解説したい。

 

 遊び紙はポルカ紙・ライラック色。

 ライラックは美人の色。美しい思い出の色です。

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回顧と展望

 上記した通り、「プッシュ&レビュー」に掲載していただけるのはとても嬉しいですね。もちろん普段SNS等でご感想をいただけるとたいへん糧になります。ただP&Rはそのうえ公式記録や紙に残るので……。ティアズマガジン絶対買うぞ!!

 次回に長編漫画を描く際は、最初から最後までネーム(せめて詳細なプロット)を切ってから書き始めようと思いました。行き当たりばったりはよくない。

 次回の漫画は「渺渺録」という、これまた企業擬人化漫画の予定でしたが、現在実際に練っているのは一次創作の漫画になっています。どうなるんだぜ……。

 2025年は戦後80年なので、なにかしらの何か(歴史やその擬人化)を描きたいとも思っています。

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