日本語教師コラム:#2.日本人だから教えられること
私は今フランスにある日本語学校で日本語の先生をしています。
そこに行くまで知らなかったのですが、日本人以外にも日本語の先生は結構いるようです。
私の通っている学校にも3人ほどフランス人の日本語の先生がいました。
彼らは大学や大学院で、7、8年間ほど日本語を勉強して、資格を持っている先生たちです。日本語も一般的なフランス人に比べたらもちろん上手です。
しかし、ネイティブである日本人と比べると”とても上手”なわけではないわけですね。たまに彼らが日本語で話せない分野の説明は英語で会話するくらいのレベルです。
勘違いしないで欲しいのは私は彼らを尊敬していますし、その日本語を教えられる程に外国語を極めたのは素晴らしいことだと思っています。しかし、やはりネイティブとは絶対に異なる感覚で日本語を使っているというのを実感することは多いのです。
他の方のお話
フランス、特にパリは家賃がとても高いです。なので今私は4人でシェアハウスをしています。と言っても、もともと日本でお仕事をして家を購入された大家さんの家に3人の日本人が部屋を借りているという状況です。
そして、その大家さんはもともとパリにある日本語学校の学長?およびかつては現役で日本語を教えていた方だそうです。今は引退されて別のカウンセリングのお仕事をされているようですね。
家で大家さんにあって日本語の先生での悩みや相談はいつでも乗ってくれる優しい方です。
そしてもうお一方、同じシェアハウスの方もかつてはニューカレドニアに20年ほど住まわれてそこで日本語の先生をされていた方でした。
その方からも日本語教師についてのお話をよく聞くのですが、ニューカレドニアの日本語学校の先生もフランス人が多かったそうです。
しかしその先生たちは日本語がとても上手いわけではなく、簡単な会話ができる程度でも先生として教えていたと聞きました。
教えられている側は子供たちがメインだったの、それで十分だったそう。なので、そのフランス人の先生たちと日本語で会話はしたことが一度もなかったそうですが、ニューカレドニアでは彼らは日本人教師としてちゃんと働いていたそうです。
正直私はその話を聞いて、そんな先生でもいいのかと驚きました。
しかし実際にPreplyなどを見ていても300人ほどの日本語教師は日本人ではなく外国の先生であることがありますね。
生徒からの話
オンラインで受け持っている私の生徒さんは国籍は様々です。
その生徒さんの中には始めて日本人と会話するからとても緊張するのだと体験レッスンから緊張しっぱなしの生徒さんもいます。
しかし数名の生徒さんは、何人かの先生から日本語を教わっているらしく、日本語ネイティブの先生と、その生徒さんのネイティブの日本語の先生に教えてもらっているようです。
なので、生徒さんたちは母国語で文法や新しい表現を勉強して、私のようなネイティブの先生により詳しい使い方や用法を聞くという勉強スタイルのようです。もちろん、発音や会話の練習もネイティブの先生としかしたくないとのことです。
その生徒さんとちの国を見ていても、ウクライナや中国、韓国、フランスなどあらゆる国の生徒さんがいるのでその国にもネイティブではない日本語の先生がいるのでしょう。
そう思うと、それも当然ですよね。
日本にも日本人の英語の先生やフランス語の先生がいますものね。そして確かに文法や論理的な説明は母国語でしてもらったほうが理解しやすいと思います。しかし、よりナチュラルな表現や会話はネイティブとした方が自然な言語を身につけられるというのは理にかなっている気がします。
ネイティブだから教えられるもの
では日本語のネイティブだからこそ教えられるものは何なのだろうといつも悩んでしまうんです。
残念ながらフランスにいて、大人になって日本語の勉強をしている人はほとんどが趣味の人です。趣味で日本語を勉強している以上、毎日日本語に触れるかというとそうでもなくて、1年間勉強してもなかなか話せるレベルにもいかないというのはよくある話なんです。
学生や若い人であれば、日本に留学したい!日本で働きたい!日本人の恋人が欲しい!などの強い動機があります。なので比較的インプットとアウトプットのバランスがよく、日本語で会話ができる人も多いです。
そしてそんな人たちに日本語を教えるのであれば、フランス語でわかりやすく教えてくれるフランス人の日本語の先生の方が需要がありそうだなとも思ってしまうのです。
ではネイティブの日本語教師だからこそ、できるものは何でしょう。
私は日本の文化だと思っています。
もちろん、発音や会話文などもナチュラルに教えられると思います、前述したように、2人の先生から教わっている生徒さんが日本人の先生に求めているものはまさにそれでしょう。
しかし、言語を学ぶ上でより大事なものはその国の文化も一緒に学ぶことだと私は思ってます。例えば、私がフランス語を話すときに日本人のマインドで直訳してフランス語を話してもフランス人には伝わらないこともあるのです。文化と言語はとても強い結びつきがあります。
文化を学ばずして日本語を話すことはできません。もちろん日本語に限らずどの言語であってもそうです。
例えば、日本人は何かをお願いされて不可能であるときに、ストレートに「それはできません」とは言いませんね。必ず「それは少し難しいですね」というはずです。これは日本の文化でストレートにものを言って相手に不快な思いをさせない配慮からきていると思います。
しかし、もしこの日本人のマインドでフランス人にお誘いをもらってお断りしないといけないときにフランス語で「それは難しいです」というと、はっきりとNonと言っていないので、可能性があるというふうに思われてしまうのです。フランスの文化を理解してフランス語を話すならば「すみません、それはできません。なぜなら〜」とはっきり理由も添えていうのがフランスの文化の中での会話です。
これは日本語を話す上でも起こり得るもので、会話練習の時は日本の文化も一緒にお伝えするように私はしています。
もちろん、こういった日本の文化も理解した上で日本語を教えることの出来るノンネイティブの方もいると思います。しかし、ネイティブから聞くのとノンネイティブの人から聞くのとでは全く意味や理解が異なってくるようです。
他の先生方がどう思われるかわかりませんが、もしよければ他に日本人だから教えられることがあれば教えてください。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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