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最愛は呪いだって話


残りの人生、あの人を呪う為に使う。と覚悟が決まって数ヶ月経ちました。
あの人のお陰でようやく自己同一性を身につけられた気がしています。

昔から素直じゃない子どもでした。自分の気持ちと理性の区別が付かず、心にいる自分を無視し続けていた幼少期だったように思います。

自分の気持ちを大切にしなさい。と言われた経験はありますか?
私はその度に大切にする方法なんかよく分かっていない癖に、取り敢えずその場が収まらないのでただただ頷くだけでした。

自分の気持ちを大切にするとは何か。今の私は「自分から出てくる感情を理解する」という所に落ち着いています。

好きも嫌いも興味も、それに付随する嬉しさや楽しさ、悲しみや怒りも。それらの感情全てが表出をコントロール出来ない。
自分ですらコントロールできないなら他人にはもっと無理な訳です。

自分でもどうしようもないんだから仕方がないね。

感情は表出をコントロール出来ませんが、それを外に表現するかどうかは理性にかかっています。

私はどちらかと言えば理性ちゃんの方が力関係が強かったみたい。
プラスの感情ならともかく、マイナスの感情をあまり外に出したくはなかった。良い子でなくなってしまうみたいだったから。だからその感情は無いことにした。

自分が自分の感情を無視し続けるから自己否定感が産まれて沈んでいく。自己肯定感云々よりも、自己否定感が強すぎた。

自己肯定感という言葉を軽く使っていたものの、意味なんて分かっていなかったんだという理解。自己肯定感は自分の気持ちを受けとめる事でしか生まれない。他人に褒められたところで自己肯定感が上がる訳がない。読んで字の如くだね。

自分の気持ちを大切にすると言うことは、自分から出てきた感情がどこから出てきた代物で、何が原因で、自分はそれをどうしたいのか、ひたすらに考えることだと思うようになりました。今まで自己否定感が強かったのは自分の感情を無視していたから。ごめんね。

怒りを見つめたら大抵悲しみがいる。やるせなさや切なさにはどうしようもない好きがあった。好きの中には嬉しさと興味と憧れがあった。


これは全てあの人を考え続けた結果、出た結論です。あの人の事を考え続けたら自分への理解も付録で付いてきました。

今、私が胸を張ってあの人の事が好きだと言えるのは自信がついたからでも、あの人と数年越しに再会して好きを再確認したからでもなく、自分の気持ちをようやく自分で認められたからです。

あの頃の私には到底たどり着くことのできなかった答えが、あの人と離れようと決意してから5年、連絡を絶ってから4年が経ち、初めて理解できた気がしています。

あの人が私に言った「答えが出るまで、頭が痛くなるまで考えて考えて考え続けろ」という言葉。その言葉を反芻して生きた結果です。私の思考はあの人のお陰でできている。

答えが出るまで、頭が痛くなるまで考え続けろと教えてくれたあの人のお陰で、私は愛と恋の解像度があの頃よりもずっと高くなった。自分の感情を言語化するのもあの頃よりもずっと上手になった。全部全部あの人のお陰。

あの人に憧れ続けて、それはとうに信仰になった。あの人は私の信じる宗教で、あたしの神様。だからあの人の吸う煙草はあたしの御守り。

あの人の善悪の判断に、あの人の信念に、あの人の美学に、あの人の生き方にずっと興味がある。
あの人の善悪の判断が、あたしの狭い世界の全てであってほしいという歪んだこの感情が愛に分類されればいいと思う。

「そんな人のどこがいいんだ」なんてよく言われて、今までずっと上手く答えられなくて「そうだね。」と言っていたけれど、ようやく言語化できました。

自分に芯があるところ。自分の感情に素直なところ。自分の意見に自信があるところ。飾らないところ。あの人の、そういうところに心の底から惚れちゃった。しくじったね。




私の好きな小説に、「別れる男に、花の名を1つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」という有名な文言が出てきます。
この呪いよろしく、あの日あたしはあいつの煙草に呪いを込めた。

煙草を吸うお前の隣で、お前と同じ煙草を吸って。この煙草はもう私の御守りだと言った。

あの人がよく目にするものにあたしの名前を書いておく。あたしがその煙草を透かしてお前を見ていたように、お前もその煙草を透かしてあたしのことを思い出せ。あたしのことを考えろ。最愛のお前に向けた、今あたしにできる1番強い呪いだと信じている。

あたしはお前の事を考え続けて、お前を愛したこの自分に結論をつけた。
もうあたしはお前以外いらない。お前に選ばれないなら結婚なんかしなくたっていい。他の誰かと結ばれる未来は捨てた。お前に選ばれなくたって、あたしは勝手にお前を選び続ける。これから先の人生、お前を呪い続ける。離れてなんかやらない。そんな覚悟ができている。

だから次はあんたの番。待つのは慣れている。いつまでだってお前のことを考えて待っているから、いつか答えが出たら2人で話をしよう。それまであたしはずっとあんたを待っている。

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