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なんてことのない休みの日
この寒さのせいかあまり気分が良くない。最強の寒気は過ぎようとしているというのに頭が重い。今日は休みだったのでのんびりというと響きは良いが、だらだらと過ごしてしまった。
ひと通りの朝の家事を終えてまた布団に潜り込む。眠れるわけでもないのに何もやる気がしない。
昨夜寝る前に見ていた動画でアナベルは冬に剪定して緩徐に効く肥料をあげると良い、と言っていたので、なんとかそれだけはやった。思い立ったときにやっておかないと日々の慌ただしさに流されて忘れてしまう。
昼も過ぎた頃、そういえばホテルの日帰り入浴のスタンプカードが満タンになって1回無料で入れたな、と思い出す。ずるずると布団から這い出てお風呂に行く準備をする。
日曜日なのできっと人が多いかもしれない、と頭をよぎったが大きな湯船に浸かりたいと一度思ったらどうしても浸かりたくなってしまった。土日はホテルのランチ&入浴セットというのもあるので、平日に比べるとそこそこ人がいる。平日はいても1人2人なのにね。
受付で、お風呂いいですか?とポイントカードを出すと、カードがいっぱいなので今日は無料の日ですね、とお姉さんは微笑みお風呂用のタオル類が入ったバッグを手渡してくれ、新しいカードをくれた。新しいカードにはスタンプが一つ押されていて、無料で入れるのにスタンプも押してくれるなんてなんとなく2回得した気分になった。
階段を登り大浴場の入り口の下駄箱に靴を入れる。思ったよりたくさん靴が入っていている。混んでるかなと思いながら中へ進む。まあまあの人。小さな子ども連れの親子も多い。それでも出ていく人もいたりしてスーパー銭湯を思えばやっぱりゆったり入れる。細かな話になるけれど、こういうところのシャワーはワンプッシュで何秒か出る仕組みなのだがホテルの方が出ている時間が長いのが良いし、シャワーから出るお湯の量も申し分ない。
全身をくまなく洗い、友達からもらったSABONのスクラブで膝や膝や踵をマッサージする。ジャスミンの香りがとても良くオイルスクラブなのかマッサージ後はしっとりとする。あまり強く擦るのは塩が刺激になるので良くない、擦れば良いというものでもないらしい。ひと通り流し終わったら湯船に浸かる。温泉では無いが気持ちが良い。熱めの湯船で温まったら外のガーデン炭酸風呂に向かう。
2階のフロアに大浴場があって、ガーデン炭酸風呂の壁の隙間からは堤防と内海が見える。太陽に照らされてキラキラと光る海に大きなタンカーが何隻も見え、向こう側に見える岸には電力発電の風車がくるくると回っている。夕暮れ時には湯船に入りながら沈む太陽と赤く染まる海や空が見えるのでとても贅沢な気分になる。
炭酸風呂にしばらく浸かり体の芯まで温まったので出ることにした。体を拭きフェイスシートを顔に乗せてメイクスペースに座ると、その並びに小学2年生か3年生くらいかなという女の子が2人座った。2人ともまだ濡れている長い髪を目の前に置いてある使い捨てのクシでときながら
「うちの前髪シースルーだからさー、〇〇ちゃんの前髪めっちゃ少ないね、どうしたらそんな少なくなるの?ガチでうらやましい」
と言ったので心の中でつい笑ってしまった。なんとまあギャルのような言葉遣いなのかしら、シースルーって分かってて使ってるのかな、とにかくとっても可愛い。そして学校のお友達のことなのか話を始めて
「あー、□□ちゃん?この前遊ぼって言ってきて、アピール?してきた」とか。女の子は小さな頃からいっちょ前だなぁと感心する。
フェイスシートを外し美容液を目元口元につけながら鏡を見る。来た時よりちょっとましな顔をしてる。ヘアオイルをつけて髪の毛を乾かしたら出来上がり。
家のお風呂も悪くないけど、何も気にせずに行って帰ってこれるお風呂屋さんはやっぱり良いなと思う。
外に出るともう日が少し傾きはじめ風は冷たさを増していた。椰子の木が風に揺れて音を立てる。見上げるとまだ青い空にぼんやりと光る薄白い月がそこにあった。
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