投影機の設計 〜自作プラネタリウムのススメ〜
こんばんは。芝学園天文気象部のプラネタリウム班担当者です。この記事では、ピンホール式プラネタリウム投影機の設計方法について解説します。
1、素材決定
ピンホール式プラネタリウムは、その名の通り素材に穴を開けて光源からの光を出すことで、ドームに星を投影します。そこで、使用する素材や形状によって、作り方や星の正確さが全く異なるので、よく使われる素材ごとに特性をまとめた表を見てみます。
❶地球儀(または天球儀)
まず勧めたいのは地球儀です。地球儀には、緯度・経度が書き込まれていますから、星のプロット作業を容易に行えます。さらに、地球儀は1つ2000円ほどで購入できるので、コストも低く抑えられます。天球儀を使えば、主な星はプロット作業が必要ないので、とても楽に行えます。
この記事では、この先、地球儀で投影機を作ることに沿って説明します。
❷アクリル球
素材が手に入りやすく、サイズも豊富なのがアクリル球です。コストが非常に低いのが利点ですが、すぐに割れやすく、また正確な座標のプロットが難しいという欠点があります。
❸アルミボール
自作プラネタリウムの定番といえばアルミボールです。とにかく丈夫で安い、サイズも沢山あるのが利点です。ただ、金属なので穴が開けにくく、また完全な半球形にするのに加工が必要ですが難しいなどの欠点があります。
❹ボール紙
工作用紙など、片面には桝目がふってあり、寸法を図りやすくなっているものがオススメです。簡単に手に入れることができて、簡単に工作できるのが利点です。ただ、円形ではないので、星図データを編集してプロットする必要があり、高等数学の知識が必要です。
穴あけはキリなどで行いますが、欠点としてはあとで穴がつぶれやすく、糊で固めるなどの対策が必要となります。
❺リスフィルム
リスフィルムに光を当てて、特定の場所だけ光を通すようにすることで作る方法です。ただ、現像などフィルムの取り扱いの専門知識や、座標設定に高等数学の知識が必要でとても難しいです。さらに、近年はカメラのデジタル化が進み、リスフィルムを製造している会社が少ないことから、日本国内では簡単に手に入らないという欠点もあります。私も、リスフィルムに挑戦しようとしましたが、フィルムが手に入らず諦めました。
そのため、初心者にオススメはできません。
2、形状決定
使用する素材によって、投影機の形状も異なってきます。前述の表では、球形と紙面組み立て型の二つを紹介しました。
❶球形
球形の利点は、星図データを編集せずそのまま活用することができるということです。その代わり、球面を加工するので作業が少し大変になります。
❷紙面組み立て(多面体)
紙面組み立ての利点は、平面での作業となるため、とても楽に制作を進められることです。ただ、星図データを編集して、星の位置を算出する必要があるため、高等幾何の知識が必要となってきます。
初心者であれば、星図データの編集を必要としない、球形状の投影機製作をお勧めします。
3、投影機製作に必要なもの
投影機製作には星図データや素材などさまざまなものを必要とします。後続の記事でこれらを詳しく説明する予定です。
❶素材
前述の説明の通りです。地球儀などは中が空洞なものを購入しましょう。(大抵のものは中が空洞になっています。)
❷星図データ
星の位置を示した重要なデータです。これをもとに星をプロットし、穴を開けます。こちらのNASAのページに「ヒッパルコス星表」と呼ばれている星図データが公開されていますので、そこからダウンロードすることができます。
❸表計算ソフト
星図データを処理するのに必要です。
❹作業工具
プロット作業は、等級によって色を分けてマジックで記入します。こちらも用意しておきましょう。
穴あけには、紙質のものであればキリを、プラスチック製のものであれば電動ドリルを使います。電動ドリルは、バッテリー式よりもコード式の方が軽くて継続利用ができて便利です。
❺黒塗料(遮光用)
光源の光が投影機で反射しないように、内側か外側を遮光用に黒い塗料で塗る必要があります。地球儀などは、内部に塗料を塗ることは至難の技なので、外部にぬります。こちらも用意しておきましょう。
❻光源
フィラメントの形が直接投影されるため、光源は点に近いものである必要があります。さらに、暗すぎると映らないので、点光源の特殊な電球を用意する必要があります。つまり、通常販売されている電球では投影をすることができません。
そこで、このような特殊な電球を販売している電気屋を以下に紹介しておきます。
さらに、電球とコンセントを繋ぐのに、変圧器(トランス)が必要です。こちらは、電球の電圧に合わせて購入しましょう。トランスを扱っているお勧めの会社を以下に紹介しておきます。
❼土台
投影機を支える土台と回転軸が必要です。安い赤道儀を使う方法やイレクタパイプを使う方法などがあります。専用の記事で詳しく解説します(準備中)。
まとめ
初心者であれば地球儀を使う方法がとにかくオススメです。自分の作りたいレベルに合わせて素材を選びましょう。
これ以降は地球儀を使う場合について解説します。
参照
東京理科大天文研究部ホームページ
ピンホール式プラネタリウム製作ノウハウ
光東電気
ゼネラルトランス販売
NASA ヒッパルコス星表
次回の記事
次回は投影機の実際の作業工程について載せます。