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私の100冊②~現代小説篇①~

篠田くらげが選ぶ面白かった本、第2回です。第1回はこちらです。


今回は現代小説篇その1です。例によって「どこまでが現代小説か」は適当です。アマゾンのリンクを貼りますが、お好きなところでお探しください。


9.羊と鋼の森(宮下奈都、文藝春秋)

宮下さんの小説はよく出来た料理のようです。吟味された食材を腕のいい料理人が調理した、その料理をゆっくりいただいているような読後感があって好きな作家さんです。この小説はピアノ調律師が主人公で、特に派手な事件が起きるわけではないのですが、「ああ、読んでよかった。私の人生の中にこの本を読む時間があってよかった」としみじみ思える本だと思います。


10.舟を編む(三浦しをん、光文社)

「いろいろあるけど、最終的には人間のことを信じたい」という思いが伝わってくるのが三浦さんの小説のいいところだと思います。この本は辞書を作る人が主人公です。三浦さんらしいユーモアが爆発するところもあり、「そうか、そうだよな」としみじみするところもあり。BLに造詣が深い三浦さんならではの箇所もあって、素敵な小説です。


11.悪魔のいる天国(星新一、新潮社)

三浦さんが最終的に人間を信じようとするなら、「いろいろあるけど、人間なんか絶対信じない」というブラックさが星さんの小説の魅力です。「この人、人間が心底嫌いだったんだろうな」と読むたびに思う作風です(そうでなかったらごめんなさいですが)。でもそういう人がこんなにたくさん素晴らしいショートショートを書いてくれたなんて、なんだか不思議な気がしますね。


12.姑獲鳥の夏(京極夏彦、講談社)

京極さんは色々な小説を書いておられますが、これは「妖怪シリーズ」とか「京極堂シリーズ」とか言われる分厚いシリーズです。別の本ですが、「京極夏彦史上、もっとも薄い本!」というポップを書店で見た時は笑いました。ものすごくたくさん知識が出てきて圧倒されるのですが、「この世には不思議なことなど何もないのだよ」がシリーズを通してのキャッチフレーズで、全てがつながったときはすごい爽快感があります。


13.十二国記シリーズ(小野不由美、新潮社など)

十二国記は長く続いている、そして多くのファンが続きを待ち望んでいるシリーズです。中国風の異世界を舞台に、「麒麟」が王を選び、選ばれた王が不老不死となって国を統治するが王が統治者としての道を踏み外すと国もろとも破滅する、という世界になっています。第1作はその世界に紛れ込んでしまった現代日本の女の子が生き抜こうとする話です。第1作がけっこう暗いので、はじめて読む方に「ネズミが出てくるまでがんばれ」と声をかけるのがこの世界の先輩としてのつとめとされています。ただ、読めば絶大な人気があるのがわかる本です。「国って何だろう」と考えることうけあいです。


14.銀河英雄伝説シリーズ(田中芳樹、東京創元社)

この間アニメ化されたのも記憶に新しい銀河英雄伝説です。本編だけで10巻ありますが、気後れする必要はありません。一度読めば一気に完結まで夢中になり、終わってしまうのが残念に思えることでしょう。「最悪の民主主義と最良の君主主義ではどちらが勝るか」という読み方もできるし、二人の主人公(ヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラム)のどっちが好き? という読み方もできるし、必読といえるシリーズです。ちなみに私はオリビエ・ポプランとビッテンフェルトが好きです。


15.三国志(北方謙三、角川春樹事務所)

三国志はいろいろな作家が書いていますし、ゲーム等もありますが、今回は北方謙三さんの三国志をご紹介します。オリジナル要素が強いので「三国志のストーリーを知っておきたい」という方なら別の著者のものがいいかもしれません。しかし北方三国志はやはり人物がとてもかっこよくて、「この人好き」と思える人が見つかるでしょうし、逆に「この人は大嫌い」と思う人も見つかるかもしれません。別の作品では悪役にされることも少なくない呂布も非常に魅力的に描かれています。まだ三国志を知らない人が別の人の三国志から入るとしても、北方三国志は一度は読んでほしいです。逆に三国志にすでに詳しい人なら「このシーンこう書くか!」とうなるところが必ずあると思います。


ということで、次回もよろしくお願いします。

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篠田くらげ
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