篠田くらげ

本を読んだり短歌を詠んだりします。

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  • 短歌

    短歌関連の記事を集めたマガジンです。

最近の記事

学ぶことの意味と意義

なぜ学ぶ必要があるのか。 教育の世界では教師や講師が生徒に「どうして勉強しなくちゃいけないの?」と問われることがよくあるらしい。しかし、どのような想いでこの問いを発するのかはその人によって、またその時によって違う。だから私が誰かにそれを問われたら、その人がなぜその問いを発したのかを聞いて、それによって答えを変えるだろうと思う。問いが変われば答えもまた変わるものだからだ。 問いの背景としては、たとえば次のようなものが考えられる。 1.勉強をするのは非常に苦痛である。大人が

    • 『翔太と猫のインサイトの夏休み』の問題

      本稿の目的は永井均『翔太と猫のインサイトの夏休み』(ちくま学芸文庫)をご紹介することです。 本書は中学生の翔太と、翔太の家で飼われている猫(名前はインサイト)が対話をしながら哲学の問題を考えるという形式の哲学書です。話し言葉で書かれています。 インサイトは哲学に詳しそうに見えますが、翔太と同様、間違ったことを言っている可能性があるので疑いながら読みましょう。 まず最初に取り上げられるのは、「いまが夢じゃないって証拠はあるか」という問いです。あなたはたぶん今、パソコンやス

      • 永井均『倫理とは何か』をめぐる試論

        あなたが電車の中で座っていると老人を見かける。あなたは座っていたいのだが、老人に席を譲る。 これは道徳的な(道徳的によい)行動である。あなたは座っていたかったのに座るのを断念して席を譲った。だから道徳的な行動は、自分にとって快適な行動(座っていること)を断念して不快な行動(立っていること)を採ることで可能になるのだ。 なぜそんなことが可能なのか。それを論じたのが、永井均『倫理とは何か』である。 ひとつの回答は次のようなものである。 1.もし誰かが道徳的な行動をすれば、

        • コロナ禍日記2022年7月25日

          世界がコロナ禍に入ってすでに2年半になる。 これは私が所属していた(現在活動休止中)文芸サークル「嶌田井書店」が作ったnote記事だが、2020年の初めからコロナウイルスが広がりつつあることがわかる。 厚生労働省のWebサイトによると、2022年7月23日における新規陽性者数は20万人を超えている。2022年7月1日の新規陽性者数は2万人ほどだから、1ヶ月たたないうちに10倍になった計算である。 現時点で誰がいつ感染してもおかしくない状況であるのは間違いないように思える

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          5本

        記事

          勉強しなかったツケの支払い(マシュマロへの回答)

          先日、マシュマロをいただきました。マシュマロというのは匿名でメッセージを送れるサービスです。 何らかの原因で画像が見えなくなったときのために文字で書いておくとこうです。 「小学校・中学校でちゃんと勉強しなかったツケ」っていつ支払いを迫られると考えていますか? ツイートで短くお答えするのが難しいご質問だと思いましたので記事の形でお返事を書くことにしました。以下はそのお返事です。 こんにちは。ご質問ありがとうございます。ツケというもの・支払いというものをどう捉えるかによる

          勉強しなかったツケの支払い(マシュマロへの回答)

          中学生への英語指導のあれこれ

          今回は英語篇です。前回の現代文篇はこちら。 学習指導要領と教科書変更の影響学習指導要領の改訂により、小学校でも本格的に英語の授業が行われるようになっています。昨年度(2021年度)に見た中1の教科書は「これ、中2の教科書?」と思うくらい難しかったです。私が知っている中学生のサンプルが少なすぎるのではっきり言えませんが、個人的な実感としては「小学校で英語をがっつりやって中1開始時点でそれなりの力がついている」わけではなさそうです。私自身は小学校で具体的にどういうことをやってい

          中学生への英語指導のあれこれ

          中学生への現代文指導のあれこれ

          学習塾で公立中学校の平均的な(学校で平均点を取るくらいの)生徒に現代文を教えるのはなかなか難しいです。生徒や保護者の方の多くは定期テストや受験で高得点を取ることを、あるいは落第点を取らないことを期待して受講しています。 しかし、日本語を母語とする中学生が中学生用に作られた国語の教科書を読む以上、本来なら読めるように作られているのではないかと思います。そこまで難解な文章を読むことが要求されているわけではありません。そこで「実は読めていないのではないか」「それはなぜか」が出発点

          中学生への現代文指導のあれこれ

          未来2022年3月号評(陸から海へ欄)

          未来短歌会「陸から海へ」欄は私が所属して毎月歌を送っているところです。選者は黒瀬珂瀾さんです。いつもお世話になっております。 「2022年はなるべく『未来』の評を書きたい!」と今年のお正月に思いまして、4月にして第1弾です。どうなってるんだ。では始めていきます。敬称は略しました。 人生はとてもシンプル アマゾンの箱を開けたら望みは叶う(正岡純子) アマゾンには本だけでなくあらゆるものがあって、欲しい物を買うことができます。およそ私たちが欲しいと思う物はすべてアマゾンの箱で送

          未来2022年3月号評(陸から海へ欄)

          これからやりたいこと

          コロナで思うように出かけられなかったり人と会えなかったりして、みんな我慢を強いられていることと思う。私もそうで、いろいろストレスがたまってきた。ということで、「お金も、コロナも、時間も制約がなかったらやりたいこと」を思いつくままに書き連ねてストレス解消に役立てたい。 1.転職+引っ越し いまの仕事をやめて、新天地に旅立ちたい。次はどんな仕事をしようかなあ。今のところ業種を変えるつもりはあまりなくて、塾講師か予備校講師をやりたいと思っている。どれくらい学力や教えるスキルがあれ

          これからやりたいこと

          2021年度共通テスト感想(英語リーディング)

          共通テスト英語リーディングを解いたので去年に続き感想を書こうと思う。まだ内容を知りたくない人はここで戻ってください(といってもタイトルがタイトルなのでそういう人はいないのかもしれないが)。 全体の感想単語・文法的には難しくない。しかし例によって量が多い。東進によると総単語数は約6000語で、去年より450語以上も多いのだそうだ。 去年に引き続き、文法や発音などの問題は1問もない。読んで情報処理、読んで情報処理、をひたすら繰り返していると途中で飽きてくる。集中力をどう持たせ

          2021年度共通テスト感想(英語リーディング)

          私の100冊⑤~学問篇①~

          私の100冊も第5回になりました。前回の記事はこちらです。 今回は学問篇①です。勉強なんて嫌い! と言う人は多いですが、それは「一定期間内に一定のことを暗記しなければならず、それをテストされて失敗すると不利益がある」状況が嫌いなだけ、ということも多いのではないかと思います。単に知るだけなら、たいていのことは楽しい。それでは行きましょう。 29.数学ガールの秘密ノート(結城浩、SBクリエイティブ) 大人でも「数学が嫌い」「数が嫌い」と言う人は少なくありません。私も以前はそ

          私の100冊⑤~学問篇①~

          私の100冊④~ライトノベル篇~

          私の100冊を続けていきます。④は10月中に出そうと思っていたのになぜこんなことに。前回の記事はこちらです。 今日はライトノベル篇です。ライトノベルの定義は古典の定義より難しいです。ここでは俺がライトノベルだと思ったものがライトノベルだ、ということでよろしくお願いします。何冊も続いているものが多いですが、毎回「〇〇シリーズ」と書くと見づらいので避けました。 22.”文学少女”(野村美月、エンターブレイン) 物語を食べてしまうくらい愛している文学少女の天野遠子と、今はただ

          私の100冊④~ライトノベル篇~

          私の100冊③~古典篇①~

          時間が空いてしまいましたが私の100冊を続けます。前回はこちらです。 今日は古典篇その1です。何が古典なのかは適当なので、「これは古典じゃない」「こっちが古典に入っていないのはおかしい」とお考えの方はぜひご自分の古典篇を作ってください(そしてよかったら教えてください)。 16.吾輩は猫である(夏目漱石、KADOKAWAなど) 漱石の猫です。小学生の時に親に買ってもらって読みました。といっても当時はよくわからず、何年も読んでいるうちに少しずつわかるところが増えていったとい

          私の100冊③~古典篇①~

          私の100冊②~現代小説篇①~

          篠田くらげが選ぶ面白かった本、第2回です。第1回はこちらです。 今回は現代小説篇その1です。例によって「どこまでが現代小説か」は適当です。アマゾンのリンクを貼りますが、お好きなところでお探しください。 9.羊と鋼の森(宮下奈都、文藝春秋) 宮下さんの小説はよく出来た料理のようです。吟味された食材を腕のいい料理人が調理した、その料理をゆっくりいただいているような読後感があって好きな作家さんです。この小説はピアノ調律師が主人公で、特に派手な事件が起きるわけではないのですが、

          私の100冊②~現代小説篇①~

          私の100冊①~児童書篇~

          この企画の目的は私が面白かったので読んでほしい本を紹介することです。方針は次のとおりです。 ・自分が読んで面白かった本を紹介する ・シリーズ物は1冊と数える ・極力、1人の作者につき1冊とする ・絶版になっていたらごめん 「このジャンルを紹介しよう」と決めていたわけではないのですが、それなりにジャンルがまとまったのでジャンル別に紹介することにしました。はじめに、児童書部門です。ジャンル分けはなんとなくなので、「これは児童書じゃないだろ!」と思われる方がいたら申し訳あ

          私の100冊①~児童書篇~

          虫を見ていると精巧にできたロボットという感じで「命があるという点では私と同じである」とはとても思えない。もっとも私も別の生き物からはそう見えるのかもしれないが。「虫の命は価値がない」と思っている人間と「虫の命は人間と同じくらい尊い」と思っている人間ではどちらがまともだろう。

          虫を見ていると精巧にできたロボットという感じで「命があるという点では私と同じである」とはとても思えない。もっとも私も別の生き物からはそう見えるのかもしれないが。「虫の命は価値がない」と思っている人間と「虫の命は人間と同じくらい尊い」と思っている人間ではどちらがまともだろう。