さざめく夜には
アメリカの詩人リチャード・ウイルバー(1921 ~ 2017)の詩に
「ヒキガエルの死 」というのがあります。
( アメリカ現代詩101人集 /思想社1999 / P170 沢崎順之助 訳 )
( 作中より引用をまじえながら紹介をさせていただきます )
それはヒキガエルが電動芝刈り機に足をとられ、ちぎられ、ひょこひょこと跳ねて庭の隅のシネラリアのほの暗い葉かげで静かに死に向かっていく様子をえがいたものなのですが、ボクはこの詩を読んだ時に何とも言いようのない新鮮なショックを覚えたのです。
確かにヒキガエルにとってはこの上なく不運で残酷な話なのですが・・・
真っ青な芝生、ヒキガエルの心臓の血、土のような皮膚、皮膚のひだと皺、
石のようにじっと動かず厚いまぶたの目が睨む。
小世界の色彩と光と影。やがて止まる時間。
絶命してもなお刈られた芝生のかなたの弱日の移ろいを凝視しているかに
見えるその目。
詩人はこれらのことを不思議なくらいに静謐に美しく表現していると想うのです(死を美化しているわけではありません)。
平和な日常に突如として出現したモンスターに無残にも殺りくされてしまうヒキガエルの運命。
死というものは常に自身のすぐ隣にありモンスターの正体はほかでもない
人間だったわけです。
( 註・訳者によっては「がまがえるの死」ともなっているようです )
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