番外編 ・ 「玻璃」という書物を知って いますか?
※ この画像( 表紙・装丁 )のキャプションは本頁末尾に記載いたします。
■ 番外編として " 美しいと想う書物 ” をご紹介したいとおもいます。
かつて關川左木夫というひとが刊行した「玻璃」という書物がありました。上の写真のそれは90歳で逝去した關川氏を追悼して翌 ’98年に刊行された 追悼号であり同時に終刊号なのだそうです。 ボクはこれを然る友人から贈られたのですが添えられていたメモを見ると 16年前( '05年 )のことでした。
關川左木夫というひとをご存知でしょうか? 日夏耿之介に師事した英文学者でありピアズリ―(ピアズレイ)などの 美術研究もしていたそうで「ボオドレエル・暮鳥・朔太郎詩法系列」など、著書も多くあるのだそうです。というのは正直なところボクもそれまでこの關川なるひとの存在すら知りませんでした。
この書物(雑誌?)は手漉き和紙と正漢字による活版印刷、さらには両面刷りの袋とじ製本。という古典的体裁で萩原英雄、深沢幸雄のオリジナル版画の使用という故人のこだわりを継承した追悼号なのだそうです。 したがって生前親交の厚かった人たち、作家たちがそれぞれ追悼文や詩などを寄せているのですが、フランスに渡り終生パリで制作を続けた版画家の 長谷川潔とも親交があったそうでパリからの長谷川の書簡も紹介されて います。( 長谷川は '80年にパリで没 )
これを手にしたボクは実にとまどいながらもペーパーナイフ ( が無かった のでカッターナイフ )で注意深くその袋とじを切り裂きながら一頁づつ ゆっくりと見開いていったのです。 それは今の時代に何でこんな本(?)があるのだろうか・・・!? という素朴な好奇心と驚きの瞬間でした。 縦 25.5 × 横 15.5 ( ㎝ ) 本文頁数64頁。 奥付を見ると限定300部と記されていました。
’82年の創刊からこの号まで16年間にたった4冊発刊されただけの この「玻璃」という書物。( あえて書物とします ) 本はもちろんその内容、何が書かれているかが重要なのですが、 時代にあらがい現代の印刷技術に背を向け " 装本 " の美しさに惹かれ こだわり、追求し続けた關川左木夫というひと。ただの数寄者、好事家 ではないように想うのです。少し難解にも感じますが、その情熱と信念には驚愕するばかりです。( ちなみに玻璃とは水晶の意 )
■ 画像 (本文ヘッダー)表紙・装丁版画 「顔の中の人」 深沢幸雄
上段 ・「玻璃」発刊の趣旨 ( 付録綴じ込み ) 關川左木夫 中段 ・ 版画 / 詩 「ポプラ」萩原英雄 下段 ・ 長谷川潔書簡文