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額田大志 アーティストコメント

今回の記事は、15日間の滞在を終えた、額田大志さんによるプログラムを振り返るコメントをお届けします。

「どこで、誰と過ごすか」は新しい創作にとって欠かせない要素だと感じた。世田谷美術館は広大な砧公園の中に位置する。演劇やダンスのリハーサルは、基本的に屋内で行われ、大きな音を出すことも多いので窓のない密閉された空間で粛々と進むことが多い。しかし、この世田谷美術館はガラス張りの場所も多く、開放的で、常にお客さんが美術館内を行き来しているし、学芸員さんたちもたくさんいて、なんだかいるだけで楽しい(逆に音出しについてはかなりシビアだったりもするが)。この「いるだけで楽しい」という感覚が大切だと思った。全くアイデアが浮かばないとき、あるいはちょっとサボりたいときに、とりわけよい。「アーティスト」と書くとなんだか創作のプロフェッショナルのような印象があるが、決して万能ではなく、私も含めてむしろ何かと欠けている人も多い。そんな中で、公園を散歩したり、学芸員さんとダラダラ喋ったり、美術館に来ているお客さんを見たり、と様々な角度で刺激を与えてくれる世田谷美術館は素晴らしい空間だと思った。

少し話は変わるが、私は世田谷美術館と並行して長野市でもレジデンス(NAGANO ORGANIC AIR)を行なっていた。そこのレジデンス場所は基本的に木造の小さなライブハウスで、地域の人々とバンドを結成するプロジェクトだった。ここで驚いたのは、リハーサルの途中にメンバー数名が、ライブハウスのバーカウンターでお酒を飲み出すことだ。ある日には、最初から飲んで登場したメンバーもいた。恐らくこれは、劇場の稽古場やスタジオでは通常起こらないし、酒を飲んで来たメンバーがいたら普通は注意をするだろう。しかし、木造の小さなライブハウスという場所性が、それ自体を可能にしてしまった瞬間があった。ここ、ライブハウスだし、それにライブハウスの人たちも嬉しそうだしな、と。結果的にバンドはノリの良い曲が多く生まれ、ライブは大盛況に終わった。

それほどに、どこで作るかによって、過ごし方はもちろん出来上がる作品の内容も変わってくると思う。もっと私たちの生活に近づけるならば、どこに住むかによって日々の食事や生活スタイルが自然と変わっていくこともあるだろう。東京だとあまり車を使わない人も多いが、少し郊外に出ると車が必要だったり、年中寒い土地では保存食が多かったりと、過ごす場所によって生活の多くが決められていくのではないかとも思う。

普段の創作と異なる環境下での世田谷美術館での滞在は、私たち舞台芸術の作家が作るための場所、そして関わる人々の在り方を、今一度考えさせられる時間となった。そして繰り返しになるが、美術館にいるだけで楽しかった。学芸員さんと舞台芸術の制作さんという異なるプロフェッショナルのチームだったことも大きいと思う。ちょっとだけ異文化を体験したような気持ちもあった。数年後に、また世田谷美術館で何かが作れるようなアーティストになれるよう、私も頑張ります。

テキスト:額田大志

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