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40歳でも彼氏ができた女(11):私たちがどうやって婚約(仮)したかについて。

それは突然のことだった。

その日、まずはわたしの大好きなお店でランチをした。

引越しのことばかり頭にあったから、そのことは今日は話さないと決めてしまったら、何を話したらいいか分からなくなった。
わたしが喋らないと意外と会話が少ないなと思ったりして、Mさんはけっこうおとなしい人なのかもと今更ながら気付いた。
それでいい。
わたしも勢いよく話すタイプではないし、心地よいのが1番だから。

先週出してくれたからと、わたしがお会計をした。
デートでお金を出すことは大嫌いだけど、Mさんとのデートはこれまでの男たちとのデートとは違うのだ。
Mさんはとても誠実だからわたしも誠実であろうとすると、わたしもお金を出すというのが自然なことに思える。
家まで送ってくれたらその日の夜ご飯はわたしが出すとか、昨日の夜ご飯は出してくれたから今日のランチはわたしが出そうとか、ごく自然なことに思える。
今までの恋愛とは何もかもが違う。
とはいえ、ここでわたしがお金を出したらモヤっとするなと思うところでは出さない。
自分の気持ちを先読みして回避できるようになったのだと思うと、今までの恋愛のあらゆる失敗やつらかった気持ちもこの時のためにあったのだと思えてくる。

そのあと2人で背伸びをして、ふだん買い物をすることなんてない三越でウィンドウショッピングした。
お金持ちになりたい。

シャンプーが売っているエリアを歩きながら、
「もうすぐMさんの家のわたしのシャンプーがなくなるから買わなきゃ」と言う。
2ヶ月半くらい前にMさんの家に持ち込んだわたし用のシャンプーも、そろそろ買い足しておいた方が安心だ。
あの頃は、このシャンプーを使い切らないまま持って帰る日が来たりして、とか考えたりしていた。

その時だった。

「もう僕の部屋に住んじゃえばいいじゃん」

、、、、、

え?!今なんと????????

Mさん、何か聞き間違えたのかな。
わたしはシャンプーを買わなきゃと言っただけなのに。
なにをどう聞き間違えたのかなんて愚問だと思ったから、聞かなかった。

「うん、住む!」と言ってMさんの腕に飛びつけばよかった。

しかしあいにくわたしはそんな可愛い仕上がりにはなっておらず、
「え、わたしはいいけどMさんは狭い空間に2人暮らしでも大丈夫なの?」と答えた。

この先の未来に関わる重要な発言をされたものだから、そのまま飛び上がって三越の屋上まで突き破っていってしまいそうなほど嬉しかったけれど、買えもしない高級なものたちが並ぶ店内では大騒ぎもできず、冷静さを保ちつつも心の中では100人くらいのわたしが踊っていた。

場所をスタバに移し、わたしたちはその続きを話した。

スタバに行く途中、ティファニーとかハリーウィンストンを通った時に、「どんな結婚指輪がいいとかあるの?」と聞かれて「ある」とわたしは夢を語った。
「結婚式はしたくないって言ってたよね?それなら新婚旅行を豪華にしようか」とも言ってくれた。
どうしたのかと思うほど、この日は具体的な話をしてくれた。
その理由は今も分からないままだ。

日曜のスタバはだいたい席が埋まっている。
かろうじて大きな相席のようなところが空いていた。
周りには勉強をしている人もいたのに、わたしたちはお構いなしにこの先の2人の話をした。
いい歳になっても、幸せな時はやっぱり周りが見えなくなってしまうのだ。
それはやっぱり気をつけないといけないなと、後から少し反省した。
でも向かい側のカップルもキスしていたし、あの日のあの席はきっとそういう雰囲気だったのだ。

この先の話をするのなら、わたしはどうしても伝えておきたいことがあった。

初めて会った時に、子供を望んでいるという話をした。
Mさんも同じだった。
あの時の気持ちが変わっていないのならば、きっと年齢的に不妊治療をすることになるから、保険が効くのは42歳までだからのんびりしている時間はないということ。

大切なことだけ伝えたから、あとはもうMさんのタイミングに任せようと思う。

女性としては、少しは男性に決断をしてもらいたいから。
わたしはそのための材料を与えるまでだ。

家の更新料を払わず退去のタイミングを1ヶ月延長してもらえないか不動産会社に問い合わせる、
ものすごく急いで9月に引っ越す、
わたしが今の部屋にとりあえず引っ越す、
この3択に決まった。

この1週間のモヤモヤが嘘のように、一気に話が具体的になった。
のんびりしていたら積極的な女に持ってかれるというのはよく聞く話。

実は先日、このモヤモヤを弟のお嫁さんに相談していた。
お嫁さんは、弟と結婚に至るまで自分からグイグイいきました、と。
思い返してみると結婚した友人たちも、結婚願望が強くてけっこうグイグイいっていた。
あとはできちゃったとか。

やっぱり結婚というのは、よきタイミングで女性が仕掛けたり、女性がリードしてないようで実はしていたりとか、どうしてものんびりしようとする男性のお尻を叩かなければいけないのかもしれない。
わたしたちには家の更新というよきタイミングが来たから、このチャンスを逃すわけにいかないと思ってわたしが少し仕掛けたのがよかったのだろう。
先日読んだ本も参考にしつつも(最近のわたしの記事7を読んでみてください)逃してはならないチャンスには挑んでみて正解だったはずだ。

2人が同じくらいのテンションでこの先の2人の話をして、それはそれは幸せな夜だった。
そんな夜に「泊まりに来ないの?」と言われてしまったら、泊まりに行かない理由なんてひとつもなかった。
明日はリモートで始業を10時にすればいいし、こんな素敵な日にはちょっとくらいハメを外していいだろうと思えた。

わたしはぜったいに、この日のことを忘れないだろう。

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ぱいなっぷる子
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