40歳でも彼氏ができた女(14):父へ同棲のご挨拶。
ついにMさんが、父のところへ挨拶に来た。
いい歳した2人の同棲だから親への挨拶はなくてもいいかなと思ったけれど、わたしは父と同居しているのだからと、ちゃんと挨拶に来てくれた。
それなのに父。
その日の朝一にMさんの写真を前もって見せたら、
「ハゲてるな」
と一言。
自分の方がハゲてるくせにと、喉まで出かかった。
うちでは狭すぎるので、近所のデパートのレストランフロアにある、1番落ち着いているお店でということになる。
当日は、駐車場が分かりにくいだろうなと思ったから、わたしはひと足先にMさんに拾ってもらって、一緒に車を停めに行った。
いつもよりちゃんとした服装のMさん。
車の中ではだいたいいつもわたしから手を繋ぐのに、この日はMさんから繋いで来た。
緊張してるんだろうなーと察する。
先にお店に入り、父がデパートに到着するまでの間わたしはそわそわしながら、どこに座ればいいのかなとMさんに聞くと、こっちだよと自分の隣を指差す。
なんだか、自分側じゃなく知らない男の隣に娘が座るって、父はどんな気持ちなんだろうと少し切なくなった。
父が到着し、わたしがお店の前に迎えに行って、席にて父とMさんがご対面。
無口すぎるわたしの父。
一体どんなふうになるのだろうと心配で仕方なくて、最近の1番のストレスだった。
でも、そこはやっぱりMさん。
抜群の安定感だった。
おかげで父も、それなりに楽しそうに話していた。
最近は、色々と2人のこの先のことを話す機会が多いけれど、その度にMさんは本当に的確で、何の異論も湧いてこなくて、なんと頼りがいのある人なんだろうと感激している。
父との会話もスマートで、本当に素敵な人だなと改めて思った。スキィィィィ‼︎
無事挨拶を終え、Mさんは帰って行った。
父にMさんの印象を聞いてみると、
「変な人ではないな。好印象だ。」
とのこと。
次の日Mさんに父の印象を聞いてみると、
「親子揃って素直なんだなと思った」
とのこと。
父がMさんが働く業界のことを、衰退していくから大変ですね、と言ったからだ。
まあ周知の事実なので、それを言われて嫌だったという事ではなく、素直すぎるわたしたち親子を面白がっていた。
もう引越しは数日後。
昨日は、ふだんぜったいにそんなこと言わない父が、
「色々と世話になったね」
と言ってきて泣きそうになり、夜中にふと目覚めたら眠れなくなって、父の言葉をまた思い出して今度は本格的に泣いた。
今日は、
「もう新生活も始まるから」
と言って珍しくケーキを買って来てくれた。
また泣きそうになる。
41歳の娘の遅すぎる巣立ちを前に、父よなにを大げさにと思うのだが、実はわたしもわたしでちゃんとさびしい。
幸せに向かうのにその気持ちがどうしても分からないと思っていたけれど、わたしは今、立派な同棲ブルーみたいだ。