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『ヤバい神ー不都合な記事による旧約聖書入門』(著:トーマス・クレーマー 訳:白田浩一)②

 前回もこの本について触れましたが、この本のタイトルに関しては、前回のタイトルのものをご覧ください。今回は、「ヤバい神」と書いているけど、いかに「ヤバくない」ことをこの本では書かれているということです。

 皆さん、ヨシュア記をご存知でしょうか。ヨシュアはモーセの後継者でカナンの地に指導者として入植したユダヤ人(イスラエル人)です。カナンの地には先住の民がいて、ヨシュア達、イスラエルの民一行が、いかにしてカナンの地を自分達の土地にしていったかということが書かれています。

 一見すると、神の好戦的な一面が出てしまっていて、私たちが宗教の授業を教えるに当たり、とても不都合なことが書かれているように読めます。実際には、欧米諸国の侵略の根拠に流用されたりした歴史があります。
 しかし、この本は、この神の好戦的な一面が見られるヨシュア記がどういう時代に作られたのかということについて、全体の一章分を割いて解説しています。そのうちの一部を引用し紹介します。

 ・(ヨシュア記が)アッシリアをモデルに用いて征服を描くことで、ヨシュア記1~12章の書き手達はヤハウェの好戦的なイメージを強調した。
 ・そのような強調は残念なことであると言わねばならない。
 ・従ってヨシュア記には、アッシリアとその神々に対するヤハウェの優位性を確認する論争的なメッセージがある。だが、このメッセージを展開するには、ヤハウェをアッシュル(アッシリアの主神)と同じように残忍で好戦的な神として描くという代償が伴った。P.133~134より引用
*(ヨシュア記が)、(アッシリアの主神)は私の挿入です)
 
 上記のように、この本ではヨシュア記の成立年代を、北王国がアッシリアに侵略されている時期としており、そのような時に、アッシリアへの対抗として書かれたとしています。ヨシュア記の成立年代がいつ頃であるかという論争は他所に任すとして、この本はいかに神が「ヤバくない」ということを書いているのです。

  これは聖書の読み方ですので、人によっていろいろな意見があると思いますが、私は、その物語がどのような背景で書かれたのかということを加味して読むべきと思っています。その観点で読むことによって、「ヤバい神」に見えてしまう神が「ヤバくない神」へとなっていきます。
 そういった解説が書かれてる本として読むのであれば、この本もとても意味のあるものになります。

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