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『ヤバい神ー不都合な記事による旧約聖書入門』(著:トーマス・クレーマー 訳:白田浩一)①
上記の本を読んだ感想ですが。まず最初に言えることは、このタイトルは出版元である新教出版社の方と文中に書かれていますが、タイトルに「ヤバい」とつけるほど「ヤバく」は感じないということです。例えば、大学で聖書を勉強した方であれば、この本の内容を「ヤバい」と思わないと思います。しかし、こういう刺激的なタイトルをつけなければ売れないという出版業界の現状がこのタイトル付けの背景にあるのだと思います。と、書いてしまうと、出版社批判かと思われてしまうと思いますが、それは本意ではありません。どの程度の一般人がこのタイトルを見て買うのかは分かりませんが、言いたいことは、宗教科に携わる者がこのタイトルを見て買い控えてはならないということです。
私はこの本に書かれていることはなかなかに授業に取り入れられる内容だと考えました。
例えば、一例を紹介したいと思います。「第一世代のキリスト者にとって、聖書とは旧約聖書のみであった」という箇所です。私たちは新約聖書と旧約聖書を知っているから、旧約聖書と新約聖書の比較が出来ますが、第一世代のキリスト者にとってはまさしく不可能なことです。そうすると、私たちと第一世代のキリスト者が見るイエスキリストないし、ユダヤ教というものが違って見えてきてもおかしくはないということです。この視点の違いに私たち教員は気づかなければいけないということです。生徒達には常々、複数の視点を持って、一つの事象を見なくてはならないという話をしていますが、そもそも私たちが複数の視点を持つようにしているかということを気づかせてくれる一文でした。さて、今回の結論ですが、どんな本であっても一度手に取って読んでみることで、気づけることは多くあるということです。この本に書かれていることで、他にも授業に取り入れられそうなことが書かれていたので、また後日紹介できればと思います。
中井 智