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あらすじ小説情報本文 「ただいま」 夫の亮介が帰ってきた。妻の紗英は今日はいつもより遅かったなと思い、出迎えるために玄関に向かう。 「おかえり」といつも通り声をかけた。ふと亮介を見ると、髪がスポーツ刈りまで短くなっていることに驚いた。「ずいぶん短いね」と聞くと、「暑いし、なんかスッキリしたくてな。さっばりしたよ」と頭に手をやりながら答える。 雰囲気がずいぶん変わった夫にドキドキしながら「ご飯できてるよ。」とリビングに向かった。 「夕飯は何?」 「生姜焼きだよ」
あらすじ小説情報本文 夫は自由だと思う。髪が伸びれば切る、それ自体は当たり前の事かもしれない。大多数は床屋に行くのだと思う。夫はその時の気分によって変わる。気になって仕方ないのか、突然自分で切ったりもするし、普通に床屋に行く日もある。 そして時には、妻である私に切らせたりもする。何ら技量がある訳ではないので、バリカンで坊主にするしかできない。 坊主になっても夫は文句一つ言わないし、いつもと変わらない態度だ。彼にとってはたかが髪なのだろう。その感覚が私とはまるで違うも
あらすじ小説情報本文「ねぇ勝、バリカンして?」 彼女の千香からおねだりをされる。 「また? この前から一ヶ月も経ってないぞ」 「暑くてスッキリしたいの。お願い? ね?」 上目遣いでねだってくる。いつもの事だった。 「仕方ないな。分かったよ」 準備しようと立ち上がった。 「やったー!」 ◇ 発端は半年ほど前だった。髪の量が多い千香は、いくら梳いても髪が首に張り付いて鬱陶しいと愚痴をこぼしていた。当時、千香の髪は肩下十センチくらいの長さだった。 「内側を