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黄瀬白玖
2021年5月1日 21:31
H大学への進学が決まった千晴は、四月になるまでに下宿先に引っ越していった。私の進学先であるK大学は家からでも通えるので、私は今まで通り集落入口のバス停からバスに乗り、電車に乗り換え、高校の最寄り駅は通り過ぎて、大学に通うようになった。 卓哉君とは同じ大学でも、学部は違うのでしょっちゅう会うわけでもなかった。それでも時々連絡を取っては、時間を合わせて学生食堂で一緒に昼食を取った。「最近どう?
2021年5月1日 21:30
中学校に上がると、私と千晴はバスで学校に通うようになった。集落から車で三十分くらいかかる公立中学校は、一学年が七クラスもあり、私たちの分校を含めて四つの小学校から子どもが集まっていた。私と千晴はクラスが離れたので、初めて別々に授業を受けるようになった。「うちの担任、あんまり良い感じじゃないっていうか。気難しそうなオジサンって感じ」 入学式を終え、帰りのバスで千晴は唇を尖らせて言った。私は笑っ
群像新人文学賞応募作品です。箸にも棒にもかかりませんでしたが、供養としてupしておきます。 水原千晴と私は、一般的に言う幼馴染の関係である。彼女は山奥の集落で生まれ育ち、私は小学校に上がる数ヵ月前に、家族でその集落に移住した。 老人ばかりの集落にいて、千晴はそのとき、数少ない子どもの中でも最年少だった。彼女に一番年齢が近いのは、三つ上の男の子だったので、なかなか同等に遊ぶということも難しかっ