猛暑の日本で、原風景に出会いなおす
この夏は、わんぱく盛りの10歳の息子と6歳の娘を連れて、ノルウェーから一時帰国した。
6月末から一か月の実家帰省。
介護を受けながら、独居生活を送るマダムな母。
そんな母と、普段ノルウェー郊外で伸び伸び暮らす我々四人家族が、猛暑の日本で共生できるのか?
どんなに気を使っても、母の生活空間は侵略され、日々のルーティンは崩れるだろう。ただでさえ、日々の育児にキャパギリギリの私に、介護と育児の両立はできるだろうか?
そもそも、子供たちは日本滞在を楽しめるだろうか?
娘にとっては物心ついてから、地元で長期過ごすのは初めての経験。
こんな暑い日本は嫌や、ばーちゃんの家はモノ多すぎ、トイレの芳香剤の匂い嫌や!とか言わないか?!
そんな一抹どころではない不安を抱えながら、それでもやっぱり孫とゆっくり過ごしたいと言ってくれた母に甘んじての一時帰国。
滞在中も、予期せぬハプニングやら、いろんな試行錯誤を重ねたのだけど…。
試行錯誤の一つに、帰国早々、近所のお友達に遊んでもらう計画をたてた。
学校帰りのお友達と駅で待ち合わせて、その後は総勢6人の子供たちの心が赴くままに、コンビニでアイスを買って、その隣の公園に流れて。
初対面の子供たちも数人いたが、息子の方はすぐに打ち解けて、オブジェによじ登ってふざけあったり。娘の方は、恥ずかしさを一掃したかったのか、注意をひきたかったのか、単に暑かったのか、公園の水飲み場で激しく水遊びをはじめた。もう、全身びしょびしょ。
他の子供たちも水遊びに加わり、水の勢いも子供たちの歓声も留まりそうになかったので、慌てて隣に流れる川に移動。
低い滝にダイブする高学年の三人組。その周りではしゃいだり、水辺で石拾いをはじめる低学年女子たち。みんな普段着がびしょぬれ。そう、広々とした川は安全で格好の遊び場だったのだ。
40年前から変わらない風景に子供たちが居る。六甲おろしを肌に感じながら、楽しそうに思いのまま川で遊んでる。
それだけの出来事なんだけど、目の前で伸び伸びと川遊びする子供たちの姿に、自分の幼き日々が重なった。兄は毎日のようにこの川で魚捕まえてたっけ?川遊びでずぶ濡れになって、幼馴染のおうちに駆け込んだらその子のお姉ちゃんのお下がり一式着せてくれたなあ。キキララのハンカチもつけてくれたっけ。
毎週末、川沿いを愛犬と散歩したなあ。趣味で養蜂を営んでいた父は、我が家の蜂(愛蜂?)が川沿いの桜の蜜を求めてやってくるのを、嬉しそうに観察していた。家族や友達とバーベキューをしたなあ。
原風景と目の前の風景が重なり合う。
強引に川遊びに誘ってくれた娘の手を取り、ワンピースを捲し上げてサンダルのまま川に入る。ああ、冷たい水が沁み入る。こんなに冷たかったっけ?六甲おろしの涼々しさも。
橋の下が涼しそうだから、暑い日も遊べそうとか。若いお母さんたちの紫外線対策法を次回は参考にしたいなあとか。
後日、一人で同じ川を颯爽と歩く娘の姿に、未来の風景を想像してみたりも。
40年を経て、原風景と出会いなおす貴重な体験となった。