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「不思議な薬箱を開く時・薬種・薬剤編」

いらっしゃいませ。

不思議な薬ばかりを取り扱っております、

"不思議な薬箱を開く時"でございます。

あら、今回は、季節的にも、手に入りやすいかも?

さあ、如何なものでございましょう。

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バトラキテス・蟾蜍の宝石
(bufo inaurem)

さても、珍しき哉。
身近な生物なのですが、
この蟾蜍の宝石、バトラキテスに至りましては、
まさに、珍宝と言えましょう。
ヨーロッパ、極東、中国と、
この宝石の採取に挑む者たちの記録が残されております。
ええ、もちろん蟾蜍の捕獲は、全くもって難しいものではございませんが。

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では、皆様に、”不思議な薬箱を開く時”開店以来の、
身近な生物でありながら、採取の困難極まる薬種をご紹介いたしましょう。

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バトラキテス 蟾蜍の宝石
<羅: bufo inaurem>

バトラキテスの採取に必要なのは、
当然の如く、蟾蜍です。
あの何とも見た目悪く、淑女方の美しい顔を顰めさせる数多の生き物の中の一種。

しかし、蝦蟇には、その業界の者しか知る由もない、
世にも珍しい宝石を生成する生き物なのです。

自然界、主にジメジメとした沼地や川、湿地に生息しておりますが、
捕獲時期の最も良しとするのは、交尾期直前であると記されております。

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“交尾期を迎えようとしている雌の蝦蟇”

余程の幸運が味方しない限り、
1匹で生成の成功を得るのは、至難の業でしょう。
念の為、5~6匹は、捕獲しておいた方がよろしいでしょう。
まあ、それでも、生成成功率は、低いのですが。

手のひら程の真っ赤な絹布をご用意ください。
真っ赤な絹布を蝦蟇に見せますと、喜んで跳ね始めます。
散々、喜ばせた後、興奮冷めやらぬ蟾蜍を捕まえ、
その絹布をぐいぐいと呑み込ませます。

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ここで、注意が必要です。
死なせてはいけません。
死んだ蟾蜍からは、バトラキテスの精製は不可能なのです。

そして、思いつく限りの”罵詈雑言”を投げつけて、
蟾蜍をこれでもか!とばかりに、怒らせます。

因みに、この”怒らせる”と云う、薬剤精製の為の方法は、
これからも登場致します。

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それでなくとも、交尾期直前であった雌の蟾蜍は、
喜びの後の罵倒と侮辱に激烈な怒りを催し、
体色も泥水色から、咲き染めた薔薇の桃色と変化してまいります。

さて、そろそろです。

大きく開口して、威嚇をしてきますから、
そこを狙って、指を突っ込みます。
出来うる限り、素早く蟾蜍の脳に向かって突っ込んでください。

蟾蜍の怒りの塊が、指に触れるはずです。
それこそが、バトラキテス、蟾蜍の宝石なのです。

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石を取り出しましたら、すぐに冷水に入れてください。
蟾蜍は、最後の手段とばかりに、毒素を放出してきます。
蟾蜍にとっては、あなたは不届き極まる簒奪者なのです。
あなたを毒殺しても、宝を取り返し、再び呑み込んでしまおうとするでしょう。

蟾蜍は、冷水を嫌い、中に入ろうとはしませんから、
冷水の中に落とし込んでおけば、取り戻されることを防げるでしょう。

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バトラキテスを失った蟾蜍は、
その後、死ぬか、惚けてしまうかのどちらかです。

バトラキテスは、毒殺を知らせたり、腹部、胃腸の病など、
様々な効能をもたらす素晴らしい薬種でございます。

この採取に難しい薬酒につきましては、
まやかしめいた魔術の様な効能などを提唱する学者もおりますが、
あくまでも、”不思議な薬箱を開く時”におきましては、
薬効の如何としてのご紹介でございますので、悪しからず。


さて、バトラキテス採取の際に用心すべきは、
バトラキテスを奪われまいとする際に放出される特別な強い毒でしょう。

この毒は、通常は出されない毒であり、
解毒薬は、テリアカなど、名だたる妙薬でしか、
解毒は無理です。

え?
テリアカの製剤法でございますか?
はいはい、この先、必ず、ご紹介させていただきますので、
それまではご辛抱を。

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