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「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは!
「不思議な薬箱を開く時」です。
医療保険が、日本ほど整っていないお国では、
目玉が飛び出そうな医療費がかかってくるとか。
具合が悪くなっても、ドラッグ・ストアに売っている、
市販品のお薬で、凌いでいるのが現状のようですね。
病気に罹って、命よりも、お金が先に尽きてしまいます。
サリーさんの薬箱に入っているのは、
お安いのか、高くついてしまうのか?
では、今日も、お薬箱を開けてみましょう。

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お薬番号・35

「死者を安らかに眠らせる薬」

亡くなった方が、化けて出る。
これは、けっこうあります。
何か思い残すことや、
強烈な恨みなどがある場合、
死者が、なかなか安らかに眠れないのです。
ちょっと不健康なこの状態は、
日本では、成仏していないと表現されますね。
さて、このお薬は、1377年、
イタリアはヴェネツィアの医者、
フェデリーコ・ゴイスの治療書に記されていました。
彼は、さまざまな薬剤を研究し、
治療書として、世に出そうとしたのですが、
教会から邪悪な禁書と指定されてしまい、
焚書に処されてしまいました。
しかし、彼の一族は、密かに治療書を保管。
その後、ジェノヴァの大学の書庫へ移したのです。
当時、人々を脅かしたペストにより、
鳥肌物の数の死者が出ましたが、
ペスト禍を逃れた遺族たちに、
幽霊の目撃事件が、頻繁に起こったらしく、
フェデリーコ医師の元にも、
眠れない、卒倒してしまうなど、
精神的な苦痛を訴える患者が大勢、
来院する毎日であったそうです。
そこで、前代未聞の、
死者のための薬剤を研究し、
記録によれば、大成功であったとか。
では、調剤料をご紹介しましょう。

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「死者を安らかに眠らせる薬」処方

グリーンリプト貝の生殖器・・・・・・・・・15個分
人間の胎盤・・・・・・・・・・・・・・・・1人分
ニンニク・・・・・・・・・・・・・・・・・1欠片
鱈の肝油・・・・・・・・・・・・・・・・・1匹分
ケラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5匹
タツノオトシゴ・・・・・・・・・・・・・・3匹
牡蠣の卵・・・・・・・・・・・・・・・・・12粒

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諸注意
胎盤、ケラ、タツノオトシゴは、
よく乾燥させて、粉末状にして、
使用してください。
鱈の肝油は、新鮮な物を用意しましょう。
ペストなどの法定伝染病で亡くなったご遺体の場合、
レベル4の装備をお忘れなく。
火葬前に、素早くご遺体の口から、
投薬しましょう。
もう、亡くなっておられますから、
嚥下することが不可能ですので、
ぐっと喉の奥に押し込んでください。

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備考欄
未曾有の僻地へ出向かなくてはならないような、
すごい薬剤はありませんね。
もし、あなたが亡くなられた方の、
思い残しや、恨みの対象であるなら、
試してみる価値はあります。
死者を強制的に安眠させてしまおうという、
宗教観など、まるで無視したやり方ですが、
現世は、生きている者たちの世界です。
死者が彷徨い出るとなりますと、
何かと不都合が多いでしょう。
神父様から、聖水をまき散らされ、
咽るほどセージを焚かれたり、
霊能者から、祝詞やら、お経やらを読み叫ばれて、
叩き出されるような目に会わされるよりも、
静かに眠っていた方が良いというものです。
亡くなった方に、もう一度会いたいと願っている方には、
用のないお薬ですが、
早々に逝くべき世界へ行っていただいた方が、
魂のためと思われます。

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