走れメロスな日常②私はセリヌンティウス
中学校国語教師のといです。
本日の記事は、「走れメロス」を学習中の生徒たちを笑ってほほえましく見ていたら自分もそうなってしまった「走れメロスな日常①いや、まだ日は沈まぬ」の続編です。
セリヌンティウス。
邪智暴虐の王を倒そうとして捕まり死刑になるメロスに3日間の猶予を与えるため、
王城に呼び出された挙句に人質にされた可哀想なメロスの友人。
人質にされることを聞かされても黙って頷き、
3日間の間、王にからかわれても「メロスは来ます」とだけ答えたという強い心の持ち主です。
それにしてもこの状況。
メロスを疑ったって、誰も怒らないよセリヌンティウス。
読者の私達だって、メロス間に合わないんじゃないかと、
…いやさっさと走れメロス!と思ってたからさ。
ほんと、同情の余地しかないキャラクターです。
さて、そんなセリヌンティウスに、私もなりました。
日曜日の午後のTSUTAYAで!
ダンナさんと店内に入ろうとすると、
ハッピを着たお姉さんが「くじ引きやってまーす!どうぞ!」と箱を差し出します。
条件反射でくじをひくと、4等でした。
「あっ!おめでとうございます!こちらへどうぞ!」と案内されたのは、TSUTAYA入口に設けられた特設ブース。
そう、そこは携帯電話会社「◯u」の、
キャリア乗り換えキャンペーンの会場だったのです!
お姉さんは
「ハイ、4等のアメです!あのー、その代わりと言っては何ですが、
説明だけさせてもらってもいいですか?
今限定キャンペーン中で、この会場で契約してもらったらめっちゃ安くなるんで!」と言います。
うーん、ウチはdocomoを30年近く使っているし、dカードとかd払いとかも使っているから、他のキャリアに変える気はありません。
しかも「限定」「今契約」って、一番契約しちゃいけない条件だよ!
でも、アメもらっちゃったら断りにくいじゃないですか…。
キャリア変更する気もないし…とためらっていると、なんとダンナさんが!
「じゃあ僕は本を探してくるから、話聞いといて」ですと!
メロスー!置いていかないでくれー!
かくして私は人質となり、セリヌンティウスの3日間に匹敵する長い長い時間を過ごすことになったのでした。
知識豊富な◯uのお姉さんの話は止まりません。
乗り換えるとどんなにお得かを、鮮やかに説明してくれます。
私が控えめに「でもd払いも使ってるしなー」とか
「子どもたちが離れて暮らしてるので、この会場で手続きできないですよね」と言っても、
「大丈夫です!その場合は…」と
すぐ代替案を出してきます。すごいよアナタ。
実はウチはダンナさんが家計管理をしていて、私が勝手に契約を変えることはできません。
(する気もないし)
しかしそのことを伝えるとお姉さんは
「じゃ、ご主人が戻ってくるまで待ちますか!そろそろ来ますよねえ?」と言うではありませんか。
メロスー!来ちゃダメだー!
同じ話がまた始まってしまうー!
でも、あなたが帰ってこないと、話が終わらない!
メロスに来て欲しい思いと来てはならぬという思いに挟まれた私。
ああ、ここで「変える気ないんで!さよなら😊」と立ち去れたらどんなにいいか。
ああ、わたしは悪徳者にはなれないのだよメロス!
分かってくれるよねセリヌンティウス!
助けてくれゼウスー!
もう誰に何を懇願したらいいのかよく分からなくなりました。
振り返ると、レジで会計をしているメロス…いやダンナさんの姿が見えます。
…どうする、どうするメロス?
しれっと〇uキャンペーンコーナーに戻ってきたダンナさんは、
にこやかに言いました。
「終わった?」
それだけですかメロスよ!
でも私には、もうこの一言を言うしかないのです。
「うん、終わった!
説明ありがとうございましたー!」
脱出!
こうして、本家よりはだいぶあっさり戻ってきたメロスによって、
人質となったセリヌンティウスは解放されたのでした。
メロスのけろっとした表情からは、
「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」のような葛藤(?)は感じられませんでしたとさ。
結論。
何かもらえるからって、フラフラ付いて行っちゃいけません。
相方がメロスまたは太宰タイプの場合、セリヌンティウスにされる恐れがあります。
お気をつけください。