コンセプトを再定義して爆発的ヒットにつなげる方法
商品コンセプトは大事です、というと起業家には受け入れられるのだが、既に商品を持っている経営者からは次のように否定的な声が上がることがしばしばある。
「うちは仕入れたものを売っているだけだから関係ない」
「新しい商品を作る余力が残されてない……」
「コモディティ商品にコンセプトとか意味ないでしょ」
しかし、この考えは間違いだと断言できる。
商品コンセプトが大事ではないと述べる経営者の95%は認知的不協和が働いた結果としてそう考えているに過ぎない※。
本当は良い商品コンセプトを作って爆売れさせたいのだ。しかし、既に商品があってどうにもできないという現実と折り合いをつけるために「商品コンセプトなんて意味ない」というように思考を変えているのだ。
これでは「ブドウが好きという思考」と「食べられなくて諦めるという行動」が一致してないときに「どうせ酸っぱいしまずいに決まっている」と思考を変えたイソップ童話のキツネと同じである。
あなたは賢い人間(に属する種)であってキツネではない。
そしてブドウは甘くてうまいし、商品コンセプトは大事だ。
あなたは認知的不協和を抱える必要はない。
既に別のコンセプトで商品を作ってしまった?問題ない。
家業を継いだので、商品を変えられない?問題ない。
コモディティ商品を仕入れて売っている?問題ない。
すべてなんの問題にもならない。
既存商品であっても、コモディティ商品であっても良いコンセプトを見つけて爆売れさせることは可能なのだから。
是非とも、今回解説する内容を実践して「既存商品」、「コモディティ商品」のコンセプトを再定義して顧客の知覚価値を高めていこう。
今売れていない商品が爆発的なヒットにつながることを、あなたが継いだ家業が急成長することを願っている。
既存商品のコンセプトを再定義して爆売れさせた事例
この章では既にある商品がコンセプトを再発見することにより売上を伸ばした事例を紹介していこうと思う。賢明な皆さんなら既知の情報もあるかもしれないが容赦してほしい。
マリンスポーツをする男性向けスキンケア商品、低迷していた売上が再定義で12年間以上右肩上がり
市場に合わせて(≠市場を作る)ヒットした食品たち
カップヌードル
キッコーマン醤油
明太子
高価格帯の男性用パンツをどう売るか?
マリンスポーツをする男性向けスキンケア商品、再定義で低迷していた売上が12年間以上右肩上がり
1969年にアメリカから日本に上陸した当初は理美容院を中心に販売をしていたスキンケア商品シーブリーズ。
サーフィンなどのマリンスポーツファンから人気を博し、夏や海をイメージするCMを大量投下して夏の定番ブランドとして成長していった。
上陸31年が経過した2000年に資生堂のブランドとして吸収され、継続して夏と海をイメージしたプロモーションを行うが売上は低迷していく一方。
その背景には時代のトレンドの変化があった。
1990年代まではガングロブームもあり、日焼けや海に行くこと自体がトレンドだったが、2000年以降は逆に美白ブームが到来していた。その状況下で変わらないプロモーションをしていても若者たちには響かなくなっていったのだ。
実際、ターゲットの行動や嗜好を調査してみると80%以上の人がブランドイメージを夏や海と回答する一方で、75%の人が海やプールに行く回数が減った、もしくはいかないという結果に。
数値にも表れた以上、リブランディングをしない言い訳はなくなった。
2007年に使用シーンを海から街へと変化させターゲットをマリンスポーツをする男性から中高生へ、「日焼けケア」から「汗やにおいケア」へとコンセプトを再定義。
CMも高校生の日常に近い学校での撮影や共感を得る女優の起用を行いブランドイメージの大刷新。
低迷していた2007年から、リブランディング以降、右肩上がりで成長を続けている※。
市場を作るのではなく、市場に合わせてヒットした食品たち
2021年9月時点で累計500億食以上売れているカップヌードル。日本では1971年9月に発売され、銀座三越前の歩行者天国での試食販売で注目を集めた。
爆発的なヒットにつながったのは、1972年2月に発生した浅間山荘事件で機動隊員が湯気の上がるカップヌードルを食べている様子がテレビで中継されたことがきっかけだった。
このカップヌードル、1973年にアメリカで販売するときは麺製品としてではなく”具の多いスープ”と再定義して海外市場に売りだしたのだ。
というのも当時のアメリカには日常的に麺を食べる習慣はない。「手軽に食べれる麺製品です」などといってもスーパーなどの小売店には伝わらず「は?そんな売れなさそうなものに棚を渡せるか」となることが分かっていたのだ。
そのことは創業者である安藤百福が書いた「魔法のラーメン発明物語」に登場するエピソードからも読み取れる。
この短い文章を読めば「良いものができたからそのまま売る」という傲慢な考えではなく「市場に適応していくことの重要性」を理解している人間だということが分かるはずだ。
ハーバードビジネススクール教授のジェフリー・ジョーンズ氏もこの姿勢に感銘を受けて安藤百福を題材にハーバードビジネススクールの教材を書いている。
1950年代にキッコーマンがアメリカで醤油を売り出したときも似たようなマーケティング戦略をとっていた。
醤油を「日本食を作るための調味料」ではなく、「ステーキにあうソース」として売り出したのだ。
市場に合わせてコンセプトを再定義することでヒットを生み出した例は他にもある。それが明太子だ。
福岡出身のレストランオーナー、ヒミ・オカジマさんがニューヨークで経営する博多料理屋では明太子を直訳して「Cod roe(タラの卵)」としていた。
しかし、魚卵を食べる文化がないアメリカ人は食べてもいないのに「なんだこのメニューは!気持ち悪い!」とけんもほろろに扱われたそう。
どうにかして食べてもらいたい。食えば美味しさが分かる。
そう考えたオカジマさんはCod roe(タラの卵)ではなく、HAKATA Spicy Caviar(博多のスパイシーキャビア)と訳を変えて売り出したところ、爆発的に大ヒット。
高価格帯の男性用パンツをどう売るか?
1枚約7000円する男性用パンツを販売しているsunny voice。
Amazonではカルバンクラインが3枚セットで4500円くらいから販売していることを考えれば4.6倍ほど高い計算になるこのメンズ下着。
当初は「ふんどし」というコンセプトでネット販売していたが月の売上は数万円程度。
しかし、「女性がプレゼントに選ぶ高級メンズ下着」としてコンセプトの再定義をおこなったところ、テレビ出演が決まったり、阪急メンズ館から連絡が来て出店が決まったりと大ヒット。
一時期は阪急メンズオンラインの月間売上の40%がsunny voiceという月もあったそう。
商品を変えなくてもコンセプトは変えられる
このように、商品は変えずともコンセプトを再定義することで市場ニーズと適合して爆発的なヒットにつながった例というのは沢山見つかる。
分かるだろうか?簡単に言うと、現時点で売れてない商品であっても「何とかなる可能性」というのを秘めているということだ。
無知ゆえにコモディティ商品だと思ってはいないか?
仕事柄、私は普通の人よりも沢山の事業者と会話することが多い。
完全に偏見でしかないが、売れていない事業オーナーは自分の扱っている商品・サービスが他と代り映えのしないコモディティ財だと考えていることが多い。
特に家業を嫌々ながら継いだ人はその傾向が強い。小さいころからともにあったせいなのか、その商品・サービスを客観的に見ることができていないのだ。本当は凄い商品・サービスであるにもかかわらず。
コレは極論だが「真のコモディティ商品(まったく同じ商品)」なんてものは存在しない。コモディティだと考えてしまうのは商品に対する無知や客観性の消失によるものだ。
無知によってコモディティと思い込んでしまうことを説明するのにピッタリな話がある。
ジェームズ・W・ヤング著「アイデアのつくり方」に登場する、フランスの自然主義の小説家であるモーパッサンが、小説を書く勉強法として先輩作家の「コモディティ商品だから」から言われたとされるエピソードだ。
「パリの街頭に出かけてゆきたまえ。そして、一人のタクシー運転手を捕まえることだ。その男にはほかのどの運転手ともちがったところがないように君には見える。しかし君の描写によって、この男がこの世界中の他のどの運転手とも違った一人の独自の人物にみえるようになるまで、君はこの男を研究しなければならない」と。
コモディティ商品だと思ってしまうのはこれと同じだ。自分の商品については詳しくても、他社の商品については無知なケースがよくあるのだ。
無知ゆえに他の商品との違いが見えないだけであって、本当にまったく他と変わらない商品というのは極めて稀である。
主観的に見過ぎてコモディティ商品だと思ってはいないか?
そして、コモディティだと思い込んでしまうもう一つの理由が客観性の消失である。要するに当たり前のこと過ぎて気づけないのだ。
私は大学生から一人暮らしを始めたのだがバスタオルは毎日新しいモノを使っていた。しかし、同じように一人暮らしをしている友人の中には一回使ったバスタオルを干して次の日も使うタイプの人間もいることをひょんなことから知った。
今になってみれば「そりゃそういう人もおる」としか思わないが、その時までは「バスタオルは毎回新しいモノを使うのが当たり前」だと思っていた。自分の中の常識にはなかなか気づけないのだ。
讃岐釜揚げうどんチェーンの丸亀製麺は、すべての店舗内で打ちたてのうどんを提供している。麺は他社の製麺所から購入したりするのが一般的だが、丸亀製麺では1店舗ごとに製麺機を置いてできたてを提供しているのである。
その分だけコストをかけているにもかかわらず、当人たちは当たり前のことだと思っていたのだ。
マーケティング会社が丸亀製麺を支援した時に見つけたのがまさにこの「店内製麺」だった。調査をしてみたところ、来店客のなかで店内製麺を認知していたのは5割未満であることが分かったのだ。
当初は「そんな当たり前のことを宣伝しても」と反対されたものの、テレビCMなどで店内製麺を前面に打ち出すと見事大ヒット、低迷していた売上はV字回復をとげた。
社内の常識と、商品・サービスを購入するお客様の常識は違うのだ。コンセプトを再定義するときにはそのことに意識を向けなければならない。
売れる商品コンセプトの見つけ方ー実践編
さて、これまで結構なスペースを使って「商品コンセプトは再定義できること」、「真のコモディティ商品は存在しないこと」を伝えてきた。
しかし、今回はここからが本番である。
今ある商品のコンセプトを再定義して売れるコンセプトにするためにはどうすればよいのか?について解説していこうと思う。
既存事業を伸ばしたいオーナー経営者や家業を継いで売上を伸ばしていきたい人は是非とも定期購読して読んでいただきたい。
この先有料部分に入っていきます。
興味をもったなら、初月無料の定期購読がオススメです(2か月目以降も月額たったの980円)。
2024年9月中に購読すればこの記事も含んだ2024年9月に更新されるスモビジ大全の記事が全部読めます(月4本以上更新)。
しかも!!定期購読していればこれまでに公開している購読者限定記事(無料だけど購読者限定のパートがある記事)も追加課金なしで読み放題(約100本くらい)!!!
1記事あたり約10円で読める。超お得です。
事業をやっている人なら確実に役に立つことをお約束します。
サポートしたつもりで身近な人にプレゼントして上げてください.