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火の玉の如く1(小説)
新たなる挑戦
スポーツ選手としてボクシングで俺は頂点を目指していた。そうあの出来事までは。
俺は男としての生きがいをボクシングに見た。
必ず世界を取る!俺の拳一つで!練習も誰にも負けないくらいやった。俺は誰にも負けない自信があった。
パンチ力だって負けやしない。
コーチが持つパンチングミットに打ち込む!
「上山!もっとだ!ワンツースリーフック!」
コーチの顔が歪む。パンチングミット越しでも俺のパンチが効いている!
よし!おもいっきりぶち込んでやるぜ!
俺はおもいっきりパンチをぶち込んだ!
「よし、上山!ここまでにしよう。しかし、日に日にお前は強くなるな」
コーチが俺にそう言ってタオルを渡す。
俺は頂点を目指しているんだ!世界を!
「おう、上山、帰りメシ食おうぜ」
コーチが俺に言う。俺はそのままシャワールームに行き、着替える。
「コーチ今日は何を食いましょう」
「おでんはどうだ?」
俺はコーチに指でOKとサインを出した。
コーチは笑みを浮かべて俺を待っている。
「さあコーチ行きましょうか」
俺がそういうとコーチも、より笑みを浮かべて街の中へ歩き出した。おでんはコーチの知り合いの店で、とてもうまい。練習の後は一際うまさが増す。ジムを出て街に繰り出す。コーチと店に向かう。
「上山危ない!」
コーチがそういうと俺に向かって工事中の鉄骨が倒れてきた。俺は咄嗟に避けようとしたが、遅かった…。
俺の右腕が下敷きにされた。身体の芯に痛みが走る。
「上山大丈夫か!?待ってろ!救急車を呼ぶ!」
コーチはスマホを取り出すと救急車を呼んだ。
俺はそのまま救急車に乗り病院に搬送された。
その後、俺は目を覚ました。目覚めて少しすると看護師さんが部屋に入ってきた。看護師さんが俺に言った。
「上山さん、目覚めましたか。もう少しゆっくり休んで下さい」
俺は医師にすぐにでも練習できるか聞きたかったので、看護師さんに言った。
「先生はどこですか?俺はいつから練習できますか?」
看護師さんは何も言わない。ただ顔を伏せるだけだ。俺は居ても立っても居られず、ベッドから起き上がり、医師を探した。
「あ!上山さん!そのお体では!」
看護師さんを振り切り俺はドアを開けて医師を探した。
病院の廊下を歩いている時、俺は信じられない言葉を聞いた。
コーチが医師と話をしている声が聞こえてきた。
「なんですって!上山がもうボクシングができない!そんなバカな!なんとか治療できないんですか!」
「無理です。この手首の筋を切り、この状態です。ボクシングは諦めるしかありません。日常生活には支障はありませんが」
それでも食い下がるコーチにはありがたかったが、俺はもうボクシングはできないんだ…。
コーチが部屋から出てきた。
「上山。まさか聞いていたのか?」
「ええ、ボクシングはもうできない…コーチ今日は俺を1人にしてくれないか」
俺はそういうと病院から飛び出した。
くそ!くそ!くそ!なんだってこんな時に!
俺は全身が裂ける程悔しさと怒りが心の中で吹き荒れていた!
その夜は街をぶらぶらしていた。何をしていたかは覚えてない。気がつくとサッカーのグラウンドに来ていた。
みんな生き生きと練習している。俺はその姿を見るとよけいに腹が立ってきた。
何もやることも無い。草の上に座りサッカーの練習を見ていた。
「おい。サッカーに興味あるのか?」
コーチらしき男が俺に声をかけてきた。
俺は無視した。
「なんだ、怪我してるじゃないか。どうしたんだ?」
なおもコーチらしき男が声をかけてくる。うっとうしいから横を向いた。
「愛想の悪い奴だな。態度が悪い。どうだ?ちょっと体を動かしては?気が晴れるぞ」
俺はその言葉を聞いてなんだか胸くそ悪くなり
ツバを吐いてさらに横を向いた。
「おい、お前!ツバ吐いたな。サッカーを侮辱してるのか。よし、グラウンドにこい。俺が相手してやる」
俺は黙ったままグラウンドの中に入った。勝負?片手でも俺に叶うわけないだろ。オッサン!
俺はグルグル腕を回していた。するとコーチらしき男が俺に向かっていう。
「何してんだ。俺たちの武器はこれだ。これで俺と1対1で勝負だ。俺が勝ったらお前はサッカーをやれ。俺が負けたらお前のいう通りのことをしてやる」
本気か?俺はサッカーは初心者でもフットワークの素早さでは俺に叶う奴はいなかったんだ。
ここはもう現役でないことを悟らせて、帰るか。
「お前から攻めて来い。俺を抜いてシュートしたら勝ちだ」
「後悔しなさんなよー!」
俺はそういうとボールをドリブルしながら一気に攻め込んだ。相手が動くのを察してフェイントをかけた。
俺の動きにオッサンがついてこれないのを確認して。しかし、この後、俺も信じられないことが起きた。