火の玉の如く3(小説)
試練
あれから数ヶ月経った。俺は腕も完治し、あのオッサンのいるグラウンドに向かった。3日前に腕が完治したことはオッサンに伝えた。ただ3日後に来いとだけオッサンは言った。
スパイクは無いからランニングシューズを履いて行った。
グラウンドに近づいてきた。照明灯が近づいてくる。俺は今日こそあのオッサンに一泡吹かせてやると思った。
入口に着き、俺は大声で言った。
「今日からお世話になる上山蓮です!」
選手がウォーミングアップする中、オッサンがニヤッと笑って入口を開けた。
「おう!入れ!みんなに紹介する。ああ、俺の名前は秋山譲治だ。よろしくな」
オッサンはそういうとみんなを呼び寄せた。俺の顔を怪しげにみんな見る。
「おう、前に話した上山だ。お前、蓮って言うのか?しゃれた名前だな。自己紹介しろ」
オッサンに背中を叩かれて俺は皆の前で自己紹介した。
「今日からお世話になります、上山蓮です。よろしくお願いします!」
俺がそう挨拶しても、みんなしらーっとした顔をしている。なんだ?なんだ?俺になんかあるっていうのか?
「お前、サッカーを全く知らない初心者らしいじゃないか!そんな奴はいらん!帰れ!監督、こいつを入れることには反対です!」
何やら背の高い奴が俺を睨みながら言ってきた。どうやら俺の話はみんな知ってるみたいだな。コイツ威勢はいいが、俺が本気になれば痛めてない左腕ですべてノックアウトだぜ。口に気をつけろ!
俺はそう思いながら、そいつを睨んだ。
「コイツを入れるのは俺の決めたことだ。村上、嫌なら辞めてもらうぜ」
「いえ、監督がそう言うなら別に……」
村上という奴はそう言って黙った。
オッサンはコーチと思っていたが監督だったのか。どうりで堂々としてやがる。
「上山、お前の"レン"はどういう字だ。ああ、俺の名前は矢野だ。よろしくな」
「あ、ハスの"蓮"です。こちらこそよろしくお願いします!」
俺は矢野という人に頭を下げた。オッサンが俺になんか渡した。
「練習着だ。当分の間はシューズはお前の履いてるのでやってもらうぜ」
オッサンが、練習着を渡した。俺はそれを広げた。朱色でカッコいい。なんて書いてあるんだ?英語だな。俺がじっと見ているとオッサンが笑って言った。
「そいつはクリムゾンウォリアーズって書いてあるんだ。それから社長には話はつけた。安心しろ」
「クリムゾンウォリアーズ?社長ってなんスか?」
俺がそう言うと皆が一斉に笑い出した。
「「「ははははははははははははははは」」」
そんなに笑うことねーだろ。俺はサッカーは全く知らないんだ。
「なんだ?お前、何にも知らないのか?うちのクラブは楽園の傘下のチームだ。れっきとしたプロだ」
オッサンの言葉に驚いた。俺はアマチュアのサッカー好きのチームと思っていた。それがプロとは。
それに楽園ってネットショッピングで有名な楽園だろ?おいおい、ちょっと間違えたかな。
俺はびっくりしたが来た限り後には引けない。
俺もボクシングじゃ有望な選手だったんだ。
「それじゃ他の奴は適当にお前が挨拶して名前覚えろ。皆は昨日の続きだ。上山は俺がいいというまで走れ。ただし俺の指示通り走れ」
オッサンがそういうと皆それぞれ散らばって練習を始めた。
「何ぼーっとしとる。早く着替えて走れ」
俺はロッカールームに向かった。まあ走ることは基本だしな。それにボクシングでも嫌というほど走っている。楽勝だな。その後サッカーを教えるということか。
俺はそう思いながらジャージに着替えた。
グラウンドに戻るとオッサンが何やら棒を持って立っている。
「よし、俺がジョックと言ったらジョック、ダッシュと言ったらダッシュで走れ。早く行け!お前、用意いいなランニングシューズ履いて。さあ走れ!」
オッサンが棒で俺のケツを叩いた。おい!いいのか、体罰だぜ。コイツ。
「なんだ?不満そうな顔をしやがって、うちは体罰容認のチームなんだよ!なめてないで走れ!」
体罰容認?聞いてないぞ。俺はオッサンの指示に従い走る。
「ジョック!よし、ダッシュ!」
他の選手が休憩を取りドリンクを飲んでいても俺はひたすら走らされている。
イカれているぜ、このオッサン。
こうなったら、オッサンと俺の根比べだ!
俺はドリンクも飲むことなくひたすら走らされていた。