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火の玉の如く18(小説)
後半も俺たちは何度か猛攻を受けたが、しのいだ。俺たちの勢いに相手も飲まれている!
何度か俺たちもブルドッグスもチャンスがあったがモノにできなかった。
俺は不思議な空間にいた。身体はクタクタだけど、心はやけに躍っていた。そして魂が熱く燃え盛り、このスタジアムと一体になるのを感じていた。
やがてホイッスルが鳴った。
「「「やったあ!!!!」」」
俺たちの勝利だ!みんなが駆け寄る。
「上山!やってくれたな!」
矢野さんが俺に握手を求めて、そう言った。俺は矢野さんと握手を交わすと矢野さんは嬉しそうにうなづいた。
「俺とも握手してくれるかな、上山くん」
声のほうを見るとブルドッグスの真田が握手を求めて近づいてきた。後ろには千葉、酒井、マルコもいる。
「素晴らしいライバルが現れた。次は負けないぜ、"疾風のサムライ"の後継者」
真田はそう言って俺と握手を交わした。その後、千葉、酒井、マルコとも握手を交わす。
お互いに健闘を称え合い、俺たちはベンチに向かい、応援してくれたサポーターに一礼した。
再びベンチに向かうと横にいた村上が俺に握手を求めてきた。
「上山、ずいぶん意地の悪いことをして本当にすまなかった。俺はサッカーに人生を賭けていると自負していたから、お前が遊び半分でクラブに入ったと思い、許せなかったんだ」
村上はそういうと深々と頭を下げた。俺は村上のその姿を見て、俺も村上に変な意地を立てていたことを恥じた。
「村上さん、俺も村上さんに変な意地を立てていました。本当に恥ずかしいです。許してくれますか?」
そう言って俺は村上に深々と頭を下げた。
「これからは良きチームメイトであり、ライバルだな。上山!」
「はい!」
お互いにそういうと俺は村上と握手を交わし、お互いに肩や背中を叩き合った。
その姿をオッサンが嬉しそうに見つめている。
俺と村上の周りをメンバーがみんな囲んでいた。なんだかんだ言ってもやはり村上、いや村上さんもスポーツマン。本当は気持ちのいい奴なんだ。そしてクリムゾンウォリアーズのメンバー全員がスポーツマンであり、素晴らしい戦士。俺はあらためてこんな素晴らしい仲間達と闘えることに喜びを感じた。
静かにオッサンが俺たちに近づいてきた。
「今日の勝利によって我々は優勝に一気に加速がついた!そして俺たちは一丸となった!もう恐れるものはない!このまま突き進むぞ!」
「「「オォォー!!!」」」
オッサンの言葉に俺たちは吠えた。
「上山」
「はい」
オッサンが引き上げるメンバーを見つめてから、俺に言った。
「本当に今までよく頑張った。しかし、まだまだ勝負は続く。今まで以上に引き締めろ!」
「はい!」
そういうとオッサンは俺と肩を組んでそのまま俺と一緒に引き上げた。不思議な縁だな。オッサンとは、俺がボクシングができない身体になり、ヤケになった後、出会い、いつのまにかサッカーにすべてを賭けていた。
だが、まだだ。まだ終わってはいない。俺は頂点を目指してオッサンと仲間たちとこれからも走り続ける。
ロッカールームでは皆が陽気に談笑し、いつも以上に勝利に皆が酔った。俺たちは一つにまとまったことを感じた。このまま優勝まで駆け抜ける!この先の試合はただぶち当たるのみ!俺たちはさらに強くなったことをお互いに感じていた。
その後着替えて、選手専用の出入り口から出ると、ほのかさんが俺を待っていた。
「今日の大活躍おめでとう」
「ありがとう」
ほのかさんの言葉に応えると俺たちは並んで歩き出した。
「もうサッカー選手としての自覚もプレイヤーとしても一人前だね。蓮くん」
「いやー。まだまだ半人前ですよ」
俺は頭をガリガリかきながらほのかさんにニッコリ笑って言った。ほのかさんが嬉しそうに笑みを浮かべている。
「私ね。これからも蓮くんの活躍見ていたい。ずっと側で。いいかな?蓮くん?」
ほのかさんが頬を少し赤らめながらいう。俺はドキドキしてきた。
「もちろん、これからも!」
俺がそういうと、ほのかさんは嬉しそうに微笑んで、俺の手を握ってきた。
それから俺たちは黙ったまま帰って行った。
月がやけに輝いて綺麗だ。静かに俺たちを照らしている。夜の帳が下りる中、手を繋ぐ俺とほのかさんの影が静かに風の中流れて行った。