新譜レビュー/Elijah Fox, Zé Eduardo, Chuck Owen, Art Lande, Sam Williams, mindfreakkk, Jake Sherman
Elijah Fox『Wyoming(Piano Works)』
気まぐれジャズ批評、2023年8月号をドドンとまとめてお届けします。
Elijah Foxの名を知ったのは2021年初春のことでした。「The Afterglow is Still Enough For Me」山河の一雫とでも言い換えましょうか、ドビュッシー作曲「水の反映」の引用が冴え渡るアウトロに至るまで実にオーセンティックで優美な響きが漂う。"一耳惚れ"とはまさにこういうことだと感じましたね。タイトル『大平原』の通り、地平線の向こう側へと聴く者を誘ってくれる。
Zé Eduardo『Alter Ego』
"彼の名前なしにポルトガル・ジャズを語ることはできない"と客演を務めたOrquestra Jazz de Matosinhosの公式Bandcampが太鼓判を押すのもなるほど大いに合点が行く、圧巻の仕上がりです。ダブルベース奏者Zé Eduardoは、あくまでディレクター、コンポーザーそしてアレンジャーとして12曲61分間に及ぶ大作を届けてくれた。南ヨーロッパ音楽の魅力に酔える絶好の機会。
Chuck Owen『Renderings』
御年69歳、四半世紀以上に渡って自身のバンドThe Jazz Surgeを率いてきた名手がこちらも老舗WDR Big Bandを招いて繰り出す最新作。M-1「Knife's Edge」はその名の通り、切れ味鋭く響いてくる。航空ファンには説明不要、曲技飛行の一種ですよね。往年のスウィング・ジャズもコンテンポラリーも自由自在に乗りこなすWDRならではのサウンドでどうぞお楽しみ下さい。
Art Lande, Sam Williams『Portals』
つい先日リリースされたばかり、米ニューヨーク州出身のピアニスト・Art Landeとコロラド州ボールダー在住のサックス奏者Sam Williamsによる珠玉のデュオ盤。白眉の出来はやはりM-3「Coloumbine」でしょうか。表玄関・入り口・門・正門・始まり・門戸・物事の発端、大小様々な意味を持つ単語『Portals』に貴方なら一体どんな訳語を当てますか。
mindfreakkk『Silent』
珠玉の歌モノを重ね打ちして本稿の〆とします。シティ・ポップに目がない読者様に置かれましては、Tokimeki Recordsとの共作で彼女の名前をご存知の方もおられることかと思います。アジア音楽、とりわけ経済分野で重要なパートナー関係にあるタイのサウンドというのはどこか懐かしくも新しい。初めてという貴方のために、とびっきりのシンガーをご紹介しますよ。
Jake Sherman『Pennies From Heaven』
生まれ変わりがあるのなら、の一節といえば日本が誇るポップ・メイカーの星野源。所変わってアメリカはブルックリン出身、マルチ奏者Jake Shermanは近年ただならぬ存在感とメロウさで主宰の心を鷲掴みにしてくれてます。調律の怪しいアップライトピアノから鳴らされるサウンドはまさしく「憑依と転生」音楽が持つ不思議な魔力を体現しているかのようです。
※Kurt Rosenwinkelの新譜がヤバ過ぎるのなんて、最早言わずもがなです。
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