映画日誌’24-45:花嫁はどこへ?
trailer:
introduction:
ひょんなことから取り違えられた2人の花嫁の人生の行方を描いたヒューマンドラマ。『きっと、うまくいく』などで知られるインドの人気俳優アミール・カーンがプロデューサーとして製作を手がけ、アミール・カーンの元妻で『ムンバイ・ダイアリーズ』などで知られるキラン・ラオが監督を務めた。インフルエンサーとしても注目される俳優ニターンシー・ゴーエルのほか、本作が映画初主演となるプラティバー・ランター、アーミル・カーンに才能を見いだされたスパルシュ・シュリーワースタウらオーディションによって大抜擢された新鋭が競演する。(2024年 インド)
story:
2001年の大安吉日、とあるインドの村。育ちも性格も全く異なる2人の女性プールとジャヤ、結婚式を終えた2人の花嫁は同じ満員列車に乗って花婿の家に向かっていた。しかし2人とも同じ赤いベールで顔が隠れていたことから、プールの夫ディーパクが勘違いしてジャヤを連れ帰ってしまう。列車に置き去りにされたプールは、夫の家の住所や電話番号が分からず困り果ててしまうが、そんな彼女に屋台の女主人が手を差し伸べる。一方、見知らぬ村に連れてこられたジャヤは、ディーパクの家族になぜか夫と自分の名前を偽って告げる。
review:
クソ重い映画を立て続けに観てしまい、心が癒しと安らぎを求めていた。そうだ、こんな時は観るアーユルヴェーダが必要だ。そんな折、インド映画の名作『きっと、うまくいく』の主人公ランチョーを演じたインドのカリスマ俳優アミール・カーンが脚本に惚れ込み、元妻のキラン・ラオに監督を託したというヒューマンドラマが公開され、言葉や文化の壁を超えて世界中の賞賛を集めているという。ほうほう、辛口批評サイト「Rotten Tomatoes」の批評家スコア100%てどないやねん。
同じ赤いベールで顔が隠れた2人の花嫁が、花婿の勘違いにより取り違えられてしまう物語だ。普通に考えると有り得なさそうな展開なんだが、有り得るのである。そしてより奇想天外なドラマが待ち受けている。実は直前に人身売買を扱った映画を観てしまい、インドで女性が行方不明は絶望的すぎると思ったりしたが、片目を瞑る。ちなみにその映画、レビューを書こうとしていろいろ調べてみたらなかなかの香ばしさだったので、そっと両目を瞑って観なかったことにした。ノンフィクションにしてはご都合主義がすぎると思ったわ(遠い目)
話を戻すと、Rotten Tomatoes 批評家スコア100%も納得の感動と面白さであった。巧みなストーリーテリングで、何かを企んでいそうなジャヤの不思議な行動の謎が解かれていくが、スリリングで目が離せない。そのミステリーに引き込まれる一方で、困難な状況に戸惑いながらも、マンジュおばさんの背中を見て自我に目覚めていくプールの健気なひたむきさに心打たれたりする。多様な愛とユーモアが散りばめられた脚本が素晴らしく、プールとジャヤを取り巻く人々のキャラクター造形も見事。
慣習や経済的事情により、したくもない結婚をさせられたり、生き方を諦めなくてはいけない。インド社会に横たわる不公平や不平等を映し出しながら、自分らしい幸せを手に入れるために闘う2人の花嫁の姿を通して、女性が勝ち取っていくべき権利と平等を描いている。インドにおける女性の立場について考えさせられるが、かと言って伝統を一方的に否定することなく、世界の有り様をありのままに包み込むような態度に好感が持てる作品だった。てか、そんなことよりボリウッド映画なのに歌い踊ってないぞ!?それはいいのか!?