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映画日誌’24-56:ヘヴィ・トリップⅡ 俺たち北欧メタル危機一発!

trailer:

introduction:

12年間ライブすらしたことがないド田舎のメタルコピーバンドが巨大メタルフェスへの出場を目指して繰り広げる珍道中を描き、大ヒットを記録した2019年のフィンランド映画『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』の続編。前作に引き続き、ユッカ・ヴィドゥグレンが監督を務め、フィンランドのメタルバンド「MORS SUBITA」のミカ・ラマサーリが劇中音楽を手がける。日本のメタルダンスユニット「BABYMETAL」が重要な役どころで出演。(2024年 フィンランド)

story:

ノルウェーの巨大フェス<ノーザン・ダムネーション>へ殴り込みで逮捕・収監されていたメタルバンド「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」のメンバーたち。服役中の彼らのもとに超大物レコードプロデューサーのフィストが訪れ、ドイツで話題のメタルフェス<ヴァッケン・オープン・エア>への出演をオファーするも、準備不足と投獄を理由に辞退してしまう。そんな矢先、ギタリストのロットヴォネンの実家であるトナカイ粉砕場兼スタジオが地上げ屋によって消滅の危機に陥っていることが分かり、彼らは脱獄を決意する。

review:

2024年の映画納め、“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”のバンド「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」が巻き起こす珍道中を愛でることに決めた。『バグダッド・カフェ』の4Kレストア版とどっちにするか迷ったが、やっぱり新作だろう。実際には駆け込みでチャン・イーモウ監督『紅夢』のデジタルリマスター版をねじ込んだので、完全な映画納めにはならなかったのであるが、それはシネマート新宿が悪い(褒めてる)。

2019年に公開された一作目の『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』は、北欧のメタル大国フィンランドを舞台に、フィンランドで最も知られていないヘヴィメタルバンドが巨大フェスを目指して奮闘するコメディだ。IKEAの国、フィンランドは人口10万人あたり53.2のメタルバンドが存在し、人口比率で世界で最も多くのメタルバンドがいるメタル超大国である。
そんなフィンランドでコメディ映画史上最大規模の巨費が投入された前作は、SXSWで上映され一躍話題となり、異例のヒットとなった。全体に漂う間抜け感と哀愁、その隙間にこれでもかと詰め込まれたバカバカしい笑い。今年になってから映画好きが集まるイベントでオススメ映画として紹介してたら、なんと続編が公開されるというではないか。前作の再上映も決定し、もう2024年12月はヘヴィ・トリップ一色だったよね、主に新宿三丁目あたりが。

そして満を持してシネマート新宿に聖地巡礼した。一言で言うと、いろんな意味でひどい映画だったが、ファン的にはもはやこれでいいやと思える仕上がり。愛すべきバカが愛すべきバカのままで、映画的に詰めが甘いところも含めて丁度良い塩梅なのだ。映画サイトのレビューが軒並み高いのは、『ヘヴィ・トリップ』ひいては「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」のファンが、馬場対ブッチャーの試合を眺めるプロレスファンのような暖かい目線で見守った結果だろう。

とはいえ、商業主義に走り過ぎた音楽業界の構造に絡め取られ、空中分解しながらも“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”の矜持を保った(ような気がする)「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」の生き様に胸を打たれた(ような気がする)。国内外で活躍する3人組「BABYMETAL」がメンバー全員セリフ有りの重要な役どころで登場するので、日本人的にはちょっとうれしい。総じて楽しい映画納めであった。

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