映画日誌’24-32:クレオの夏休み
trailer:
introduction:
6歳の少女と乳母の血のつながりを超えた絆を描いたヒューマンドラマ。監督は、共同監督を務めた『Party Girl(原題)』でカンヌ国際映画祭カメラドールに輝き、本作が長編単独デビューの新鋭マリー・アマシュケリ、製作は『燃ゆる女の肖像』などセリーヌ・シアマ監督作品を初期から手掛けるLilies Filmsが務めた。主演には、撮影当時5歳半で演技初挑戦のルイーズ・モーロワ=パンザニが抜擢。2023年カンヌ国際映画祭「批評家週間」のオープニング作品に選出され、大きな話題を集めた。(2023年 フランス)
story:
父親とパリで暮らす6歳のクレオは、いつもそばにいてくれるナニーのグロリアが世界中の誰よりも大好き。お互いに本当の母娘のように想いあっていた2人だったが、ある日、グロリアは遠く離れた故郷アフリカへ帰ることになってしまう。突然の別れに戸惑うクレオを、グロリアは自身の子どもたちと暮らすアフリカの家に招待する。そして迎えた夏休み、クレオはグロリアと再会できる喜びを胸に、ひとり海を渡り旅に出る。
review:
6歳の女の子と乳母の愛と絆を描いた人間ドラマだ。パリで父親と暮らしているクレオは、幼い頃に病気で母親を亡くし、乳母のグロリアに育てられている。本当の母と子のように仲睦まじく暮らしていたが、グロリアが故郷アフリカに帰ることになり、突然離れ離れになってしまう。そして待ちに待った夏休み、大好きなグロリアに会うため、クレアは単身海を渡る。しかしそこにはグロリアの実の子どもたちがおり、何なら孫まで産まれてしまって、あれ思ってたんと違う!どないやねん!みたいな成長譚だ。
クレオ役のルイーズ・モーロワ=パンザニ、撮影当時は5歳半。パリの公園で遊んでいたところをプロデューサーにスカウトされ、本作で演技初挑戦となっただと!?驚異的に演技が巧すぎる。そしてグロリア役のイルサ・モレノ・ゼーゴ。かつてポルトガルの植民地であったカーボベルデで看護師として働き、フランスに渡りナニーの仕事をしていたそうだが、本作のリサーチで監督がナニーの女性たちと話していた中で出会い、出演が決まったとな!?これまた驚異的に演技が巧すぎる。観たらわかる。
現代の日本では乳母なんて想像もつかないが、欧米では普通の家庭でもナニーやシッターを雇う文化があり、近年は人件費の安い移民がナニーの仕事を担うケースが多い。物語の舞台となるカーボベルデは、アフリカ北西沖に浮かぶ小さな群島だ。乾燥した気候で農業生産に適さず、これといった産業もないため出稼ぎに出る人の割合が大きい。クレオとグロリアの愛にあふれた物語の中に、自分の子どもを国に残して出稼ぎにきた貧しい国の女性が、豊かな国の経済を支えているという構図が映し出されており、私たちの感情を複雑にさせる。
だとしても、クレオとグロリアの間には確かな深い愛と絆が存在し、優しく心を撫で、温かい涙を誘う。とにかくクレオの何もかもがかわいらしい。クレオの豊かな表情、喜怒哀楽、くるくるの巻き毛やかわいいおでこ、大きな瞳、長いまつげ、愛らしい手指、ずっと眺めていたいほどにかわいい。よくぞここまでかわいらしさを映像に納めたものである。そして幼い心象風景や遠い記憶を映し出すアニメーションが心地好い揺らぎをもらたし、作品をより魅力的なものにしている。とても素敵な映画だった。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?