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書くだけで心が軽くなる――ストレスに向き合う、新しい自分の見つけ方

ストレスを下げる一番の方法

さくらは、職場のデスクに座りながら、深くため息をついた。目の前には、処理しきれないほどの書類と、点滅するメール通知の数々が並んでいる。派遣社員として働くさくらの仕事は、誰かが手をつけなかった細々としたタスクを片付けることがほとんどだった。締め切りが迫っている業務を片付けながら、同僚から「これもお願い」と追加の仕事を頼まれることもしばしば。

「なんで私ばっかり…」

心の中でつぶやきながらも、さくらは断ることができなかった。小さな派遣社員としての立場を守るため、いつも無理をして仕事を引き受けてしまう。終業後には体がぐったりとして、家に帰るとすぐにベッドに倒れ込む日々が続いていた。


兄との会話

その夜、さくらは家でスマホを手に取り、2歳上の兄にLINEを送った。

「最近、仕事がつらすぎてストレスがやばい。どうしたらいいんだろう?」

すぐに既読がついたが、返信は少し時間がたってからだった。

「ストレスが溜まってるなら、書いてみるといいかもよ」

「書くって何を?」

「エクスプレスライティングって知ってる?心理学の方法で、感情や考えをそのまま紙に書くだけでストレスが減るらしいよ。」

聞いたことのない言葉に、さくらは少し興味を持った。

「でもそれ、本当に効くの?」と半信半疑で返信すると、兄は「科学的にも効果が証明されてるらしいよ」と続けて送ってきた。


エクスプレスライティングとの出会い

翌日、さくらは仕事から帰ると、小さなノートとペンを取り出して机に向かった。書くことに慣れていないさくらにとって、何を書けばいいのか最初は戸惑った。けれど、兄が教えてくれた「テーマを決めて自由に書くだけ」というアドバイスを思い出し、今日一日の出来事を書き始めることにした。

「今日は、いつも通り忙しい日だった。上司に頼まれた仕事を片付けている間に、同僚から別のタスクを押し付けられた。その時は『またか』と思ったけど、結局引き受けてしまった。断れない自分が嫌になる…」

手が止まることなく、次々と思い浮かぶ感情を書き連ねた。仕事のプレッシャー、同僚への苛立ち、そして何より、自分自身に対する不満。それを書き終えるころには、心の中に溜まっていたモヤモヤが少し軽くなったように感じた。

「不思議だな…」

彼女はそうつぶやきながら、少しだけ微笑んだ。自分の感情を整理する時間を持つことが、これほどまでに心に影響を与えるとは思わなかった。


変化の始まり

その後、さくらは毎晩寝る前にノートを開き、エクスプレスライティングを続けた。どんな些細なことでも、感情を正直に書くことを心がけた。ある夜は仕事の愚痴、別の夜は幼い頃の記憶や将来の不安について書いた。

「書いていると、自分が何にストレスを感じているのか、少しずつわかってくる気がする…」

書くうちに、さくらは自分の中にあるパターンに気づいた。例えば、職場で「嫌だ」と思いながらも断れない状況が続いていること。同僚に対する苛立ちも、実は自分が過剰に責任を背負い込んでいるからではないかという考えが浮かんだ。


兄への報告

「最近、書くことにハマってるよ。最初はただの愚痴だったけど、意外と頭がすっきりするし、自分の考え方も見直せてる気がする。」

兄にそう報告すると、「それはいいことだね。ストレスって溜め込むと体にも悪影響を与えるし、早めに対処するのが大事だからね」と返信が来た。

さらに兄は、「エクスプレスライティングって、免疫機能を高める効果もあるらしいよ。書くことで体の健康まで良くなるなら、やらない手はないよね」と続けた。

さくらは思わず笑ってしまった。兄が時々こうして教えてくれる新しい情報は、自分の人生にちょっとした光を差し込んでくれる。


未来への一歩

数週間後、さくらは仕事の中でも少しずつ変化を感じるようになった。同僚に新しいタスクを頼まれたとき、軽く「今はこれで手一杯だから、後でお願いできるかな?」と言ってみたのだ。

「意外と断れるんだ…」

自分の中での小さな発見だった。それ以来、少しずつ「自分の気持ち」を大切にするよう心がけた。

エクスプレスライティングは、さくらにとってただのストレス解消法ではなく、自分自身と向き合うための新しい習慣となった。毎日の忙しさの中で感じる小さなストレスを、ノートに書き出し、整理し、少しずつ前向きな気持ちへと変えていく。そんな時間を持てたことで、さくらの心は確実に軽くなりつつあった。

ストレスをゼロにすることはできない。でも、書くというシンプルな行動が、確実に彼女の人生を変え始めていた。

書くだけで心が軽くなる――ストレスに向き合う、新しい自分の見つけ方


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