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優しさとは

最近、優しさとは何か、ということをよく考える。

月一で参加させてもらっている「ふくしのおはなし会」という場でも、何度か話題にさせてもらった。

どうして優しさのことを考えるようになったのかと言えば、自分でもよくわからないが、福祉の仕事を8年ほど続けてきて、いまそのことと向き合う必要性をなんとなく感じているから。(全く答えになっていない)

優しさとは何か。今の俺には、ぱっと2つのワードが思い浮かぶ。


合理的配慮

障害者差別解消法という法律で謳われている考え方だ。

助けを必要としている人に対し、合理的に考えて、無理のない範囲で、必要な配慮を提供しましょう。みたいな感じ。

例えば、車椅子の人にとって、段差はつらい。じゃあ、スロープやらエレベーターを設置しよう。これが合理的配慮。けれど、それにはお金がかかる。だから、個人でやってる飲食店などには、そこまで求めない。これが「無理のない範囲で」ということ。私は、こんなイメージで合理的配慮の提供を認識している。

そして、私にとって優しさとは、この合理的配慮の考え方にとても近い。

最近、病院で仕事をしていて、20代の若い男性が相談に来た。職場で長時間残業、パワハラ?みたいなことをされ、気持ちが落ち込み、夜も眠れない。同棲している彼女がとてもしっかりした人で、彼女がいつも付き添ってくれて受診している。適応障害の診断で休職し、薬を飲んで療養していたが、会社とうまく話がまとまらず、結局退職することにしたらしい。実は彼女も同じ会社に勤めていたが、会社に対しムカついたため、彼女も辞職して、今後は海外で仕事をするとのこと。もちろん、彼氏も一緒に。

見るからに優秀そうな人だったから、仕事はいくらでも見つかるだろう。
さらっと、ムカついたんで、海外で働きます。なんて、俺も言ってみてーと思った。

彼女とは、いろいろ話をさせてもらったが、例えば、彼氏の仕事は、在宅ワークで何の問題もない職種らしい。適応障害で、出勤するのがつらいのなら、リモートワークに切り替えれば済む話。それを、合理的に考えて意味の分からない会社のしきたりみたいなことで、8時半までに出社しなきゃダメだ。みたいなのって、「ほんと頭悪いわー」。これは彼女のセリフ。けど、俺もそう思う。

実は、最近私右足の骨を折った。3日前くらいからようやく松葉杖生活から解放されたが、松葉杖を使っていた時は、本当にたくさんの人が助けてくれた。例えば、電車に乗れば、たいていの人が席を譲ってくれた。

ここで思うのは、「配慮のし易さ」ということだ。右足固定されていて、杖を使っていれば、誰が見ても「配慮が必要」とわかる。

けど世の中には、分かりにくいけど、骨折なんかよりもっと困っていて、配慮が必要なことってたくさんある。

骨折に比べれば、適応障害というのは、確かにわかりづらい。「新型うつ病」などとテレビで報道されているような状態も、本人は本当に困っているのだろうけれど、周りの理解を得るのは大変難しい。

最近読んだ本に、新型うつについて、精神科医がこんなことを書いていて、結構刺さった。

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新型うつ病は援助者であるわたしたち自身の器の大きさや鷹揚さ、深い焦点深度で他人の立場を眺められる能力の「発見器」ということになるのかもしれません。
             春日武彦「はじめての精神科」(医学書院)

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分かりにくさというものは、人に考えることを放棄させ、「根性論」みたいなものが入り込んでくる余地を与えてしまう。

先の相談の話に戻るが、リモートワークを取り入れるという、たったそれだけの配慮さえしてあげられれば、彼は、今も仕事を続けることができていたはず。これって、合理的配慮なんじゃないの?

職場の優しさが問われている。


ヒトツヒトツノコトバニアイヲ

という言葉が、箱根にあるティムニーという私の大好きなカフェの、トイレに貼ってあった。

便座に座りながら、じみじみ、そうだよなぁ、と毎回思う。

発した人には何気ない言葉でも、受け取る人によっては、トラウマのように引きずってしまうことって、結構ある。たまになら乗り切れても、きつい言い方をされることが続くと、自分でも気づかないうちに心は病んでいく。

まぁ、社会ってそういうもんだから、スルースキル身に付けなきゃね、メンタル鍛えなきゃね、なんて言われるけど、待て待て、一つ一つの言葉に愛があるか、そこまでいかなくても、優しい表現になっているか、発する側が点検するのが先だろう!!と思う。

最近テレビとかネットの言論を見ていると、相手を「論破」することが称賛されるような雰囲気をたまに感じるけど、優しくないなぁと思う。(笑。)

理屈は正しくても、人間はそれだけでは動かない。結局感情とか、スキキライで行動する。仕事をしていて、上司から受ける指示が正しいものでも、その言い方にトゲがあったり、あるいは上司が口だけの存在だったら、部下は動かない。

人の上に立つ立場の人ほど、「ヒトツヒトツノコトバニアイヲ」ができているか、セルフチェックが必要だろう。

私は去年の四月に転職して、めちゃくちゃ仕事しんどかった(今でも全然しんどい)けど、ある先輩のやさしさのおかげで、今でもなんとか仕事を続けていられている。
その先輩は、3月でパン屋さんに転職してしまったけれど、その人のように、患者さんに対して、不器用でもとにかく優しくありたいなと、思っている。自分がそうしてもらったから、優しさって何だろうと、最近よく考えるのかもしれない。

皆さんにとっては、やさしさって何ですか?

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