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2022.11.22. ゴッドスレイヤー 神殺しの剣を見た

 中国映画。VFXに力が入っていて見応えのある映画だった。

 ネット小説家のルー・コンウェンには執筆した小説の内容が現実世界に影響を及ぼす能力がある。
 小説の悪役”赤髪鬼”が傷つけられると暗黒メガコーポの社長も同期して傷ついてしまう。小説の完結が自身の死だと恐れる社長は、娘を捜し続ける中年男のグァンに、娘の居所の情報と引き換えにルーの暗殺を依頼する。
 しかし、グァンは自身が寝ている間に見る夢とルーの書く小説『神殺し』の世界が繋がっていることに気付く。
 小説の展開次第では娘と再会できるのではないかと微かな希望を抱いてしまった彼は、ついルーの暗殺を先延ばしにしてしまうのだった……。

 この映画はグァンたちの生きる現実世界の話とルーの書く小説『神殺し』の物語が並行して語られる構成になっている。

 ルー殺しを強いられながらもつい彼に絆されて殺しを渋ってしまうグァンのままならない現実を描きつつも、殺伐とした世界観でありながら魅力的なビジュアルの中華ファンタジーを交互に映すことで見ていて飽きない。

 特に『神殺し』の世界のビジュアルはVFXに力が入っていて見応えがある。
 
 連なった真っ赤な気球が蛇のような胴体を形成し、搭乗員が宙から油の瓶と炎を落として城を燃やし尽くす、攻城兵器”龍”やガトリング砲をぶっ放す真紅の鎧武者の姿はAAA級のゲームタイトルの特異なビジュアルを見せられているようだった。

 また、小説の主人公と彼と融合する”生きる鎧”の設定もイかしていた。
 主人公の血を活力にし、鎧形態と自律した二足歩行の双剣使いの戦士の形態を切り替えた戦闘スタイルは抜群のケレン味である。

 また、現実世界の物語も負けていない。
 小説を書くことに熱中するあまり彼女に振られ就職に失敗しつつも、小説を書くことから離れられないルーの姿は、アマチュア創作者のはしくれから見ても心に迫るものがあった。
 
 何年経ってもロクな金にならない小説を書き続ける彼の姿は、ある意味自分のifのようで(俺は彼ほど熱心に書き続けているわけではないが)なんだかんだ絆されてしまうグァンの気持ちも痛いほどにわかる。


 このように魅力にあふれる映画だが、惜しい所もある。

 2時間という十分な尺がありながら、描写不足なのだ。

 小説の世界では、主人公と”生きる鎧”の関係をもっと深く切り込んで描いて欲しかった。命を奪うことに容赦のない鎧が優しさを持った主人公と関わっていくうちに徐々に心根が変化していく様をじっくり描いていけば、名コンビになりたのになと思った。
 もう少し掘り下げられたら、ナラクとフジキド、新一とミギーもしくはヴェノムとエディの様な魅力的な人外バディになれたはずだったのに。

 また、現実世界でもルーの小説が現実に影響を及ぼす理由についても説得力のある理屈が付けられていたら、個人的に物語にもっとノれたと思う。
 物語(フィクション)の世界を綴ることに人生を懸けているルーの信念と彼の現実改変能力をきっちり結び付けられていれば、クライマックスのフィクションの力を信じる者が奇跡を起こそうとする展開にももっと盛り上がりが生まれただろうなと残念に感じた。
 でも、下手に理由を付けたら野暮ではあるよな……。


 とにかく、惜しい所もあるが見応えのある映画ではあった。
 
 


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