ヘレンと兎と、ヒル・トップ
「おかえり」とエスウェイトが云っている
美しい湖が笑顔で迎えて
ほら 木の陰から興味そうにうさぎが覗いているよ
「あの人は、僕のお母さんだ」と
「だけど、僕は気付いてるんだ」と
もう呼んでくれないヘレンの骨が撒かれた
ヒル・トップにうさぎはまだ暮らしている
「僕を産んでくれて、ありがとう」と
うさぎは何処かに去って行った
ニア・ソーリーにある二階建ての家
ナショナル・トラストで守られている場所で
ほら 優雅に動物たちが何も知らずに棲み着いて
「お母さんが守ってくれたんだ」
「美しい景観を買い取って」
もう起き上がらないヘレンの命が眠る
ヒル・トップにうさぎはまだ暮らしている
「僕は生まれてきて良かった」と
うさぎは夕陽を眺めていた
私も何かを遺したいなぁ
マーガレット・レインと名前を変えた
ビアトリクス・ポターのように変更を
明日へ行く足はとうに失くしても
あなたのように私は私でありたい
もう二度と目覚めないヘレンの愛は今も
ヒル・トップの農場に溢れている
うさぎは今もおしゃべり好きで
ヘレンと一緒に空を見ている
橙に染まる空を見つめている
私も並んでいいですか?