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2023年2月の記事一覧

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 14 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 14 (「澪標」シリーズより)

澪さんとケンカして、アパートを出たものの、帰り道が分からず、田んぼのど真ん中で雨の中途方に暮れていると、農道に入ってきた軽自動車のヘッドライトに照らされた。

「あれ?あなたは、最近うちの店に来てくれている人ですよね?どうかされましたか?」
軽自動車から降りてきたのは、レコードカフェの店主だった。カフェの営業を終え、自宅に帰るところだったらしい。

店主はずぶ濡れの僕を軽自動車に乗せ、カフェに連れ

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 13 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 13 (「澪標」シリーズより)

益子焼の工房で、澪さんの元夫に「澪さんの夫」だと啖呵を切った僕だったが、まだ正式に澪さんを籍に入れていなかった。澪さんの「還暦までは『鈴木澪』として看護師長の仕事を全うしたい」という意向からだ。キリの良いところまで全力で働きたいという気持ちは充分理解は出来る。僕は、モヤモヤとした気持ちを抱えながら、紫陽花の咲く季節を迎えた。

週末、澪さんが看護師長当直で自宅に帰らないので、東京の息子の航平の家に

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【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 12 (「澪標」シリーズより)

【コラボ小説「ただよふ」番外編】陸《おか》で休む 12 (「澪標」シリーズより)

新緑が眩しい季節。僕は澪さんの自動車を借り、久しぶりに運転していた。行き先は栃木県の南東部にある益子町、焼き物の産地である。

「航さん、具合はどうですか?」
澪さんが助手席から心配そうに僕の様子を窺っている。

「特に問題はないですよ」
現代は自動運転システムが発達して、高齢者による事故は激減している。交通機関が限られた土地に住み始めたので、免許を返納しなくて良かったと思った。

「すいません。

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