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さくらゆき ショートショート集

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さくらゆきのショートショート(企画参加作品・オリジナル作品)をまとめました。
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#詩

朔の日【詩】

朔の日【詩】

ふみづきついたち
はははゆく

あかつきのそらから
こくこくと

うみからうまれし
たいようは

つきをかくして
のぼりゆく

ひとりまどより
ながめしは

さらぬわかれは
かなしけれども

こぼれぬなみだは
いみじけれ

春の雨【詩】

春の雨【詩】

春の雨

ピアノ

記憶を指でなぞるよう

たどたどしいメロディー

無造作紳士

奏でることに意味はなく

再び蓋は閉じられる

冬の色【#シロクマ文芸部】

冬の色【#シロクマ文芸部】

冬の色

晴れ渡る空の薄い青

朝の凍えた日の氷の透明

荒れた空のグレー

空から落ちてくる雪の白

街を山を森を覆い尽くす白、白、白

日が落ちた後の無彩色

モミの木の常緑

イルミネーションのカラフル

キャンドルのオレンジの光

行く年の漆黒の闇

新しい年の日の出の赤

世界を包み込む新しい日の光の金色

冬の色

秋桜【#シロクマ文芸部】

秋桜【#シロクマ文芸部】

秋桜を揺らす風は、コキアの丘を燃やしているかのよう

天に向かうかのように、僕と君は丘を登っていく

きっと楽園って、こんな場所なのだろう

君の笑顔が陽の光の下で輝く

丘を登りきって見下ろすと、コキアの群れと海の青と秋桜のピンク色

しばらく君といっしょに眺めていた

日が傾き、空は金色に包まれた

僕らは楽園から去らなくてはならない

丘を下ると日は落ちて色を失った秋桜

秋が好き【#シロクマ文芸部】

秋が好き【#シロクマ文芸部】

秋が好き

夏の海は観光客のためのもの

賑やかなのも良いけれど

私は秋の海の静けさが好き

波打ち際を歩く

海鳥とこんにちは

砂浜から眺める

夕方の陽の光に包まれた

街を眺めるのが好き

街クジラ【#シロクマ文芸部】

街クジラ【#シロクマ文芸部】

街クジラ
波打ち際から街に向かって
笑顔を振りまくオレンジ色のあいつ

街クジラ
海に浮かぶ滑り台
滑るとちょっとスリリング

街クジラ
淋しくなったら会いたくなる
愛嬌のあるあいつ

街クジラ
目を瞑れば浮かぶ
夏色の思い出

月の耳飾り【#シロクマ文芸部】

月の耳飾り【#シロクマ文芸部】

月の耳飾りを揺らし
長いスカートの裾を翻し
舞い踊るあなた

あなた以外の
時が止まったように心奪われ
息をするのも忘れる

それでも望月は
ゆっくり夜空に弧を描き

舞姫は朝陽がのぼる前に
姿を消した

黄泉に、還る【第二回「絵から小説」】

黄泉に、還る【第二回「絵から小説」】

「第二回『絵から小説』」という企画のお題絵Aに詩をつけました。

私は綺麗なまま、いきたかった。
貴方の記憶の私は、綺麗なままでいて。

そう願ったのに。
どうして迎えにきてしまったの。

もう私はあの頃の私ではない。
光の世界は私を焼き尽くす。

だけど貴方は知らずに手をひいていく。

ねえ、振り返らないで。
振り返らなければ、私は綺麗な思い出のまま。

本当は私だって貴方の元に還りたい。
でも

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