「耳屋」③ インフルエンザのおウチにお客
住宅街のコーヒー専門店。
耳屋の前にはコーヒーフロート、私の前にはマンデリンが置かれた。
「耳屋さんは、おウチの片付けって得意?」
「…最低限な感じです」
「時々、何時でもお客さんウェルカムで、家中全て片付いてる人っているじゃない??私は、それにはなれないみたいで…」
私はマンデリンの琥珀色の平面を眺めながら、話を進めた。
結婚して2年目位だったかなー。
まだ子供も居ない頃。
主人の両親が福島からウチに来る事になって、私は必死に家の掃除や片付けをしたのよね。
そもそもの話、私は家にお客さんを迎え入れるのがあまり得意じゃないみたい💦
どれだけ片付いても、義父母が来る事が「楽しみ」にはならなかったな。
いよいよ翌日義父母が来るって日に、主人が38度の熱を出しちゃって…。
多分、インフルエンザ。
翌朝も、全く熱が下がらないから、朝早くに義父母に電話して、主人が高熱を出しているから、今日は遠慮してもらえないか聞いてみたの。
「今更、取りやめろなんて何言ってるの!!熱くらい良いのよ!!」
って、憤慨された。
結局、2DKの一部屋に主人が寝込んだ状態で、残りのスペースに私と義父母の3人…。
狭いから、流石に宿泊はホテルを取ってたと思う。
2泊3日で、東京見物とかするわけではなく、10時位から夕飯後まで、ずっとウチで過ごしてた。
「ねえ耳屋さん、インフルエンザで寝込んでる人がいる家に来るのって、あり??」
「…自分は、聞くだけなので…」
耳屋は、ちょっと困った顔をして答えた。
「…そうね。耳屋さんだものね」
親だから、百歩譲ってあり?
でも、義父母にうつったら、福島にも帰れなくなるのに…。
まあ、元気に帰ったし、その後もインフルエンザにも罹らなかったけどね。
最終日の3日目に高熱を出したのは、私。
潜伏期間48時間で、完全にインフルエンザ。
主人は、両親が帰ったこの日から元気になって、私はこの日からひとり寝込んだ。
家に人を招く事があまり好きじゃないのって、「ダメな人」?
インフルエンザの人が居ても、喜んで家に迎え入れるのが普通なの??
私は、返事はないとわかっていながら、耳屋にまた問いかけてしまっていた。
おわり
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