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ファンシーショップ「トント」の思い出3 お店の一年を振り返る(1~6月編)
おもちゃ屋「さくらトイス」を経営する父の元に生まれた私は、短大を卒業すると、「さくらトイス」のファンシーショップ部門を担当することになりました。それと並行して、さくらトイスとは別会社として私が社長を務めたのが、ファンシーショップTONT(トント)です。
今回はTONTのお話、三回目です。
当時、業界誌で、ファンシーショップ運営についての取材を受けたことがあります。
そこに店内の様子が写っていましたので、ご紹介します。どんな店だったか、雰囲気を感じていただけるかと思います。
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おもちゃ屋とファンシーショップ、経営の違い
私はファンシーショップ部門の後、おもちゃ屋の二代目社長となりましたが、両方を比べて、ファンシーショップの経営とおもちゃ屋の経営は、似て非なるものだと、つくづく感じました。
ファンシーショップは店で商品を自由に選べますが、おもちゃの場合はメーカー指導型で、メーカーが力を入れて宣伝する商品が売上げを作っていきます。
また、おもちゃメーカーはおもちゃ業界の団体などもあり、まとまっていますが、ファンシーメーカーは違います。サンリオがダントツで後は様々な異業種の会社のデビジョン(部門)だったり、小さなメーカーだったりします。
だからこそ、店側で、店の立地に合わせた品揃えや季節に沿った品揃えをしていくことが日々の売り上げに繋がりました。
ファンシーショップの一年 1月~6月編
●1月
お正月です。おもちゃ屋ではゲームソフトが売れますが、(クリスマスは親が決めたおもちゃが贈られるので、子どもたちは自分の欲しいゲームソフトはお年玉で買います。)ファンシーショップでは売っていないので、1月に売れるのは文房具中心の新学期準備用品です。
新学期が始まって落ち着くと、店はバレンタインデーの準備に取り掛かります。チョコレート売場、手作りチョココーナー、袋や箱・ラッピングペーパー・カード等を展開します。狭い店なので店の売り場の40%くらいはバレンタイン関係の商品になります。
●2月
バレンタインデーまではチョコ一色。店内だけではなく店頭に特設売り場も出させてもらっていたので、建国記念日からバレンタインデーまでの3日間はしっちゃかめっちゃかです!
ある年には、チョコを持ったレジ待ちのお客様が並んでいる中、鍋を持った常連の中学生がやってきて、「お姉さん、チョコがダマになっちゃった。」と叫んでいます。
レジを他の人に代わってもらい彼女に対応。こちらも忙しいですが、彼女も必死ですものね。
バレンタインの次の日は、また大変です。バレンタインの装飾を取り、ホワイトデーの準備。
前日にほとんどのバレンタイン関係の商品は売れていますので、店は品物が無くガラガラです。商品の入れ替え整理をしていたら、年配のお客様に「店じまいなさるの?」と聞かれ、「いえいえ、これからも続けますのでよろしくお願いいたします。」と答えました。それ程売れたのでやりがいがありました。
ホワイトデーは腕の見せ所です。店で販売しているカップ、ハンカチ等の小物とキャンディを合わせて、ホワイトデー向けのオリジナルセットを作れるだけ作ります。
2月は前半のバレンタインで売り上げを作り、後半はホワイトデーの仕込みに明け暮れます。
●3月
ホワイトデーまでは、作っては売り作っては売りの毎日です。バレンタイン同様店頭に特設売り場を設営して販売します。
男の人はファンシーショップには入りにくいので、特設売り場は良く売れます。
そして、社会人男性は単価が高く、量も多く、選ぶ時間も短いので、バレンタインよりも販売の手間がかからず売り上げが作れます。その前の仕込みは大変ですが嬉しい忙しさです。
ホワイトデーが終わるとすぐに卒業式です。友達同士でサイン帳を交換したり、色紙に寄せ書きしたりします。先輩たちへお別れ会のプレゼント品が良く売れます。
●4月
新入学、新学年の始まりで文房具類やスクールバックが売れます。雑巾も良く売れました。
もちろんプラコップ、コップ袋、ランチBOX、ナプキン、ランチバッグも売れました。
100円ノートを100種類位集めて店頭の特設売り場で売ったこともありました。これも学生だけではなく前を通りかかったOLや主婦たちも買ってくれました。
●5月
ゴールデンウイークを過ぎると遠足や卒業旅行があります。
地元密着の店なので情報はお客様からもらいます。キャラクタータオルはバスタオルやフェイスタオルがセットで売れます。水筒やレジャーシートも人気キャラクターはあっという間に売れ切れです。
もう一つ大事な日「母の日」です。エプロンが良く売れましたが、買ってくれるのはありがたいけれど私的には母親に「もっと働け」と言っているみたいだなと思っていました。手作りのカードとお手伝い券とか肩たたき券の方がお母さんは喜ぶのではないかと心の中では思っていました。
●6月
梅雨に入り、6月はこれと言って強烈に押す商品がありません。父の日は、母の日ほどの勢いがなく、カードかハンカチ位しか売れません。傘の品揃えを見直したり、清潔を保つために石鹸やフレグランス、化粧品に重点におき品揃えしました。
店の中は落ち着いていますが、6月にはバレンタインの展示会がキャンディメーカーで開かれます。
もう、来年のバレンタインの発注です。売れ筋商品はここで数出しをしておかないと来年の数の確保できません。それにしても早すぎる!と思っていました。
1月~6月までの半年の商品の流れを追ってきました。後半の7月~12月は次回に!
昭和27年から平成19年までの55年間、東京・埼玉・神奈川・千葉・茨城の各地に34店舗を構えていたおもちゃ屋「さくらトイス」の2代目社長を務めた私が、おもちゃ屋・ファンシーショップの思い出話、懐かしいおもちゃのことをつづっていきます。毎月11日に公開予定ですので、続きをお楽しみに!
また「さくらトイス」「トント」のことを覚えている方、ぜひコメントをくださいね。
編集協力:小窓舎