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全てを賭けてもいいさ、足元を照らす灯りさえ無くても。



予め断っておきますが、これは特定の会社やグループを非難したり、批判したり、貶めることを目的とした記事ではないです。

ある一事象にまつまる自分の心の動きを、忘れないうちに、忘れないように書き留めておきたい、そんなしがないオタクの独り言。

そして、本当は世に、人に見える形で公開するかを凄く迷ったけど、なんとなく、一応出しておかないといつか後悔する気がして、人に向けて公開することにした、そんな独り言。


ご理解の上でお読みいただけたら嬉しいです。





思えばあの日から、心が少しずつおかしくなっていってたのかもしれない。

遡ること7ヶ月弱。2022年12月下旬のある日。

バイト終わりに電車の中でスマホを開くと、友達から私を心配する旨のメッセージが届いていた。何のことだろうと疑問に思い、慌ててSNSを開くと、タイムライン一面に蔓延していたのは、不穏なゴシップニュース。

大好きなアイドルグループが、彼ら自身が大好きな場所を、
自分の手で手放すらしい、という噂。

ソースの曖昧さと、信じたくない思いに身を委ねて。
「そんなことはない」と自分に言い聞かせて。
そっと画面を閉じ、大きく深呼吸をした。



気持ちがザワザワしたまま、迎えてしまった大晦日。
複雑な想いを抱えたまま、カウントダウンコンサートのテレビ放送を待った。

ほどなくして放送が始まった。

すると、そこには、私の大好きな人たちが、ドームの大きな舞台で先輩方と共に踊っている姿があった。

グループ名も紹介されて、7人のために作られたオリジナルの衣装を身にまとって。



テレビを見ながら、思わず涙が零れた。溢れ出た。

思わず、「良かったね」と画面に向かって言葉が漏れた。

グループ結成年から(流行病の都合もあり)、1度も出演できていなかったその大舞台に、7人揃って出られたこと。

先輩のバックについて嬉しそうに踊る姿も見られたこと。

放送後に知り合いのレポで知った、「放送枠外で1曲目のオリジナル曲の披露があった」ということ。

その1つ1つがたまらなく、とてつもなく嬉しくて。



「ほらやっぱり、変な噂なんて嘘じゃんね」
「彼らはこの事務所で夢を叶えるんだもんね」と、
噂の当事者でもない私が誇らしげな気持ちになっていた。

でも、年が明けて2023年。

最高の気分で年を越し、余韻に浸ってから眠りについて、午前中も終わるという頃になってゆっくり体を起こした、ら。

何の気なしに開いたスマホの画面を見て、今度こそどん底に突き落とされた。

そこには、「昨年の嫌な噂は事実である」という旨を、彼らの所属する事務所の社長が、メディア向けに語る記事が。
そして、その記事の内容に戸惑うオタクの呟きが、TLを埋め尽くしていた。

あの安心感と誇らしげな気持ちから、たったの10時間後の出来事だった。


じゃあ、さっきの生放送の楽しそうなパフォーマンスは?

「この事務所で必ず」、そう言っていたあの言葉は?

「横浜アリーナで単独ライブをする」、あの夢は?

胸ぐらを掴んで本人たちに聞きたいことが沢山だった。
「事実だ」と他人によって突きつけられたところで、そのことを信じられないし、信じたくもないし。


それに、1-2月には、メンバー7人中3人が外部舞台の出演を控えていた。
もし、そこにまで影響があったりしたら。
そういった、考えられる余波のことを思うと途端に悪寒がした。

いや、待って。
きっと辞めるのではなく、なにかの煽りを受けて辞めさせられるとか、そういう話なのだ。
彼らは嫌々事務所を退くに違いない……なんて。
退所が本人たちの選択であることを認めたくないために、自分にとって都合のいい色々なことを好き勝手考えた。
自分のことが嫌いになるくらい、1人で勝手に妄想を膨らましては「そうじゃない」と消化して、憂鬱で真っ暗な気持ちのなかを揺蕩っていた。

こんなことをしてもなんの意味もないということも、分かっていた。



それから、呆然としているうちにどんどん月日は流れた。

思ったよりも、悪い大きな影響が顕在化してくることはなかった。

結局舞台はどの公演もちゃんと彼ら込みで上演されたし、そこには笑顔で芝居を打つ彼らがちゃんといた。
Jrが出演する某音楽番組にだって、地方局の番組のレギュラー出演にだって、休むことなく姿を見せてくれた。


ただ、変わったことも多々あった。

彼らが頻繁に投稿をしてくれていた事務所の動画配信コンテンツは、昨年末以降全く更新がなくなっていた。
週に2回のグループの有料ブログでは、絵文字のない、生気のない、1スクロールに収まるほどの文章が綴られていった。

本人たちの動いている姿や、楽しそうで生き生きとした様子を、今までのようにこまめに見ることが出来ない。そのことが、これほどに辛いのかと痛感した。

そんな間も時だけが静かに流れた。
今後の彼らはいつからどうなってしまうのかも分からないまま。

月末月初にはHPにある所属タレントの一覧を何度もリロードして、彼らがそこから消えていないことを確認して。「所属」という安心を得てからでないと眠れなくなった。


3月に控えていた単独ライブも案外あっさり終わった。これは私が(高倍率の競争に負け)参戦できなかったからそう感じているのかもしれないが、本当にあっさり終わったように感じた。
レポを見る限りでは、7人がいつも通りの高精度なダンスを、パフォーマンスを、そして仲の良さそうなMCをステージで繰り広げたように見えた。
一点、違うことがあったとすれば、SNSで見たセットリストくらいだろうか。
「集大成」という言葉が似合うような、今までやってきた人気曲カバー+オリジナル曲の、人気おかず全部乗せ弁当のようなセトリだった。

この人たち、本当に終わっちゃうんだ、終わらせるつもりなんだと、少しずつ突きつけられていくような感覚だった。

それから、いつもは泣かないメンバーが顔をグショグショに濡らしながらアンコール曲を歌ったというレポを見たことも思い出した。
あっさり終わったと感じたのはやはりその場に私が行かなかったからかもしれない。すみません。

それから、多くのメンバーが持たせていただいていた地方局の番組のコーナーレギュラーも、順にそれぞれ卒業していった。
私の好きなメンバーの「僕が(この世から)いなくなっちゃうわけではないですから」という言葉に少しだけ気持ちが和らいだものの、寂しい気持ちと迫り来るお別れの予感に心がザワザワしていたのも事実だった。

Jrのメンバーが多く出演している音楽番組にも、遂に出演しなくなってしまった。

ここ数年、バックとして出演していた先輩グループ主演の舞台にも、彼らではないJrメンバーが出ることになった。

私が応援している彼が、業界に足を踏み入れることを決意したきっかけでもあったその舞台に、それまで5年間も出演していたその舞台に、彼が出演出来ないことは、私にとってにわかには信じ難かった。
動向を見れば事情など理解できるが、頭では分かっていても納得はできなかった。
情報解禁日には大泣きし、1人でヤケ酒を飲んだ。


5月に予定されていた彼らの単独コンサートは予定通り開催される旨が発表された。
コンサートが近くなると、「5/25付けで7人揃って卒業」の旨が事務所から発表された。Jrの卒業(退所)が事前に知らされるのはかなり異例だった。

私は、その事務所にこだわっていた7人が、先輩の背中を追いかけていた7人が、本当に好きだった。し、元々先輩である別グループのことも応援していたくらいだから、その事務所の届けるエンターテインメントが好きなのだった。

好きな場所から、好きな人たちが離れる、その事実はかなり残酷なものだった。
けど、事務所社長が彼らに向けて出したコメントの「人生を楽しんでください!」という呑気な部分を見て、少しだけ、ほんの少しだけ、「あ、辞めて正解だったかも」と思えた。
思うしかなかった、のかもしれないけど。




ファンは、オタクは、アイドル本人たちの選択を受け入れて、信じて、ついていくことしかできない。

彼らが世間に向けて発した言葉を咀嚼して、パフォーマンスを解釈して。
そうやってコミュニケーションを取るしか方法がない。

し、別に、直接話したいともあんまり思わない。
これがアイドルとオタクの関係性であり、距離感だから。これが1番丁度良いと思うから。
欲しい供給だけを受け取り、要らない部分はテキトーに流してしまえばいい。
そうすればそれなりに楽しく推せる。

でも、会えなくなってしまうかもしれない、今まで通りに応援できなくなるかもしれないという可能性がチラつき始めると、話は変わってくる。

どんな形でもいいから、今までのことなんてこの際どうにかなっても仕方ないから、少しでも元気な姿が拝める方法があるなら、その藁に縋りたい。
一瞬でも長く、少しでも深く、彼(ら)のことを見たいし知りたい。
100%の形でなくても、受け入れる覚悟なら持つことができる。

そう思うようになっていってしまう。少なくとも私はそうだった。

その事務所で、その周りの人に囲まれて、その歌と衣装と環境で、アイドルとして頑張っている彼のことを好きになったわけだけれど。

もうその姿を見納めるしかないというのなら。
もし他の場所で、他の人と、他の歌と衣装でなら輝かせてもらえるというのであれば。
この際、それでもいいのかもしれない。

彼はきっと、彼なりにうまくやるだろうと、なぜだかそう思えるから。
なぜだか、また会える気がしてしまうから。


この先がどうなるのであれ、あなたについていきます。

基俊介さん。

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