ロジャース派の自己概念理論4:これまでの振り返り
ロジャース派の自己概念理論をこれから詳細に見ていく。当シリーズ記事では「有機的価値付け」から「自己配慮」までの発達メカニズムについて見ていく。ちょっと別の話題の記事を間に挟んだので、これまで書いたシリーズ記事について、少し説明しておこう。
ロジャース派の自己概念理論の構造に関する私の理解は以下の記事で述べた。ただ、具体的な説明はなく、抽象的な構造だけを提示しただけのメモ書き記事なので、意味不明に思う人も多いと思う。実際、「多くの人にとって『何を言っているのかまるで分からない』という内容だよ」との評価を頂戴した。そんなわけで、私の「ロジャース派の自己概念理論」についての解釈に興味を持ったという酔狂な人も以下の記事は目を通さなくてもよいと思う。
さて、ロジャース派心理学あるいは人間性心理学が最終目標とする人格完成は、孔子の70歳での境地「七十にして矩を踰えず」である。自分の思うままに振る舞っても(他人の目からみても)道理を踏み外さず自分を肯定できる境地こそが、ロジャース派心理学が目指す最終到達地点である。
そして「自分の思うままに振る舞ったときの経験への評価(=価値)」は、ロジャース派の最終目標に関係してくることから、自己概念理論において最重要であると把握できるのではないだろうか。
自分の思うままに振る舞う行動の(夾雑物を挟まない)経験の価値が、ロジャース派のいう「有機的価値」であり、矩を踰えない行動の経験の価値がロジャース派のいう「"価値の条件"に適う価値」である。この境地においてはロジャース派のいう「理想自己」と「現実自己」が一致しており、不適応を生じさせることもない。
この構造を理解するには、まず「ロジャース派のいう"有機的価値"とは何ぞや?」という基本を理解しなければならない。そのためには、有機的価値自体もさることながら、「経験を"価値付ける"とは何ぞや?」を知らなけらばならない。とはいえ、余りにも哲学的議論をしてしまえば、心理学を取り上げているのやら哲学を取り上げているのや分からなくなる。
そこで、ギリギリ心理学っぽい範囲で議論していくことを本シリーズの基調とした。そして、その第一弾が以下の記事である。
次が、ロジャース派心理学の特徴とも言える「重要な他者」概念をみていく記事である。
「重要な他者」は「価値の条件に基づく価値付け」に大きく関わってくる存在で、この存在が居なければ、(他者の)肯定的配慮を受けることができず、他者の「価値の条件」を受容する"心の構え"が形成されない。また重要な他者による肯定的配慮は、他者の肯定的配慮の追認によって自らが作り出す「オリジナルの価値の条件」の形成にも関係し、更には有機的価値を自ら追認して「オリジナルの価値の条件」を形成する「自己配慮」という重要な精神メカニズムも形成する契機となる。また、重要な他者からの肯定的配慮は「他者の"価値の条件"」の内面化の呼び水になる。
そのような作用を持つ、人生の始めに出会う「重要な他者」がどのようなものであるかを取り上げたのが、次の記事である。
一般的意味での"重要な他者"とロジャース派のテクニカルタームとしての「重要な他者」は当然ながら異なる。このことに関する誤解を受けて注意事項として以下の記事を書いた。また、親子の愛情に関するメカニズムに関して、他の動物と共通のメカニズムが働いていることを先の記事で見たのだが、そのことが感情的に受け止められないとの評を受けて、そのことに関する私の見解を述べた。そんな二つの注意事項を述べたものが以下の記事である。
次稿ではロジャース派の概念の「重要な他者」を成人が獲得していく過程について本人視点から解説する。周囲の人間が主体をどう扱うか、どう見るかといった視点ではないことを断っておく。
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