
交際時点で男が所得を教えないことが経済的DVだって?
個人対個人の対等な関係性において、一方的にプライバシーに当たることを聞かれた場合に、それを相手に教えないことがDV(ドメスティックバイオレンス)にあたることはない。情報開示請求権を一方は保有しているが他方は保有していない関係性を、対等な関係と呼ぶことが出来ないことなど、「対等」の概念から当然のように導き出される。自己のプライバシーに当たる情報のコントロール権を一方的に剥奪されることが、自己への"暴力(バイオレンス)"の概念に当てはまることはあっても、相手から一方的な権利剥奪を拒否することが、相手への暴力となることなどない。
「男女は存在において対等である。そうであるにも関わらず、社会が男女平等でないのはジェンダー差別が横行しているからだ」とフェミニストは偉そうに講釈を垂れる。フェミニズムに賛同し、常々「男女平等が大切!」と言い立てているような人間でも、女性が上位で男性が下位である関係性を、ジェンダー差別的な男女不平等な関係性と認識しないだけでなく、「その関係こそがジェンダー平等なのだ!女性を上位にしない男性は、女性に対してDVを振るっている」と言い出すことにある。
どれだけご都合主義的に「対等」や「平等」の概念を捉えているのだろうか。彼女らの頭にはプティングでも詰まっているのか。
市井のフェミニストだけでなく、メディアでその見解が取り上げられるような著名人であっても、女性特権を当然視した意見を述べつつ、「日本社会は女性劣位のジェンダー平等後進国だ!」との噴飯物の主張を繰り出す。
そんなバカげた対談がなされた以下の記事がyahoo!ニュースに転載された(※実は本稿を書き始めたのは2023年である。現時点からみれば既に相当に時間が経過している。申し訳ない)。そこで、対談で為された主張を本稿では批判していきたい。
■批判対象の記事に登場する対談者
この記事は対談記事なので記事で公表されている対談者のプロフィールを挙げておこう。
公認心理士・信田さよ子さん
臨床心理士としてDV、アダルトチルドレン、虐待、親子問題にカウンセリングや著作を通して取り組む。DV加害者プログラムや被害者の支援に携わり、DV加害者と被害者両方に関する知見も深い。
漫画家・瀧波ユカリさん
ドラマ化もされた人気作『臨死!!江古田ちゃん』『モトカレマニア』をはじめ、著作多数。「このマンガがすごい!2023」にランクインした『わたしたちは無痛恋愛がしたい』でも男女のDV問題に斬り込んでいる。
対談 信田さよ子・瀧波ユカリ 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc
2023年02月24日 CLASSY.
プロフィールでは触れられていないが、信田さよ子氏は日本公認心理師協会の会長を務めている臨床心理士業界の重鎮である。また、日本では90年代後半に流行語となった「アダルトチルドレン」の概念の普及の一翼を担った臨床心理士と言えば、凡そ彼女の影響力が掴めるのではないかと思う。そして、そんな「第四の権力であるメディア」を含めた権力に近い人間が糞みたいな見解を述べているのだ。
■令和日本において女性が大黒柱となることに支障など無い
批判対象の記事が公表されたのは2023年である。高度経済成長期や団塊の世代が現役であった、専業主婦が当たり前の時代の記事ではない。また、ジェンダーギャップ指数などで男女の所得格差が指摘されるが、実際のところ、男女の労働時間の格差がそのまま所得格差となっているだけのことである。このことは、男女で労働時間格差がほぼ存在しないといえる未婚の男女に関しては所得格差は存在していない事実からも明白である。フェミニストは「共働き世帯が増加しているにも拘らず男女で賃金格差がある」などと不都合な事実を隠して主張しているが、共働き世帯として増えたのは「フルタイム夫-パートタイム妻」の共働きであり「夫婦ともにフルタイム」は横ばいで推移している。
つまり、自分がフルタイムで働いて家計を支えようと志すならば、日本のマクロ的環境において男女は共にその道に開けている。産休や育休の際の賃金がどうのこうのというフェミニストもいるが、女性が絶対に外すことのできない産休期間について、日本では100%賃金は補償されている。育休時においてはその限りではないが、自分がキャリアロスなくフルタイムで働きたいのであれば、夫婦で相談して自分が大黒柱の役割を担って、夫がメインで育休を取得してもらえばいい話である。また妻が高報酬となるハードワーカーなのであれば、夫に専業主夫になってもらえばいい話である。実際に、海外ではそのような分担をしている夫婦も珍しくない。
感覚が昭和止まりのロートル人間に、令和の日本についての妥当な見解など出てくるはずもないのだ。老害といって過言でない人間の言葉を、託宣よろしく崇め奉ろうとするのは、いい加減止めればいいのにと思わざるを得ない。
■交際時点で男が所得を教えないことが経済的DVだって?
前節において、老害ゴミフェミの主張を目にしたときにいつも感じる憤りを私がまくし立てているのは、批判対象の記事における対談で以下のような遣り取りがあるせいである。妻の年齢が50歳以上であれば妥当と言ってもよいが、パートナーが20代や30代なのであれば見当はずれのトンデモ言説といってよい。
信田:(中略) 家計をともにしているのに収入を教えてくれないというパターンも聞き飽きるくらい多い。女性は出産でキャリアが中断される、さらには仕事を失うかもしれないリスクがあるなか、男性が収入を教えないというのは、女性を経済的不安に陥れてしがみつかせることになり、逃げられなくなってしまいます。
瀧波:私は結婚前でも男性が女性に自分の収入を隠したり開示を拒むことはDVだと思っています。男女で平均収入の差が大きくある今の日本で、男性が将来をともにするかもしれない交際相手に自分の収入を教えないという状態は果たして対等な関係と言えるのでしょうか?
信田:そうですね。たとえ女性のほうが収入が高い場合でも、これはDVに当てはまると思います。「出産をするかもしれない性」というだけで職を失う/就けるはずだったポストから外されるリスクがあるのが今私たちが生きている社会です。ジェンダーギャップ指数116位という現状から、20位ぐらいまで日本の順位が上がれば変わるかもしれませんが。
対談 信田さよ子・瀧波ユカリ 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc
2023年02月24日 CLASSY. (強調引用者)
引用において太字で強調した箇所にある「結婚前でも」を見て疑問に覚えなかっただろうか。
結婚後であれば、個々人のプライベート情報であっても結婚生活における必要性の範囲で知る権利が発生する種類のものもある。大抵の場合において、お互いの収入と資産状況はそういった種類のプライベート情報になるだろう。
しかし、結婚前において、個々人に属するプライベート情報に関して、たかだか交際しているという関係性だけで、一方的に開示請求権は発生しない。更に言えば、プライベート情報に対する一方的な開示請求に対して拒絶することが不当行為である経済的DVになることはない。
もちろん、お互いのプライベート情報を開示する必要性と合意があった場合には、相手にコントロール権が属するプライベート情報についても、開示を要求することができる。このことを具体的に説明しよう。
婚姻について二人である程度の合意が取れて、現在の二人の関係性は「結婚を前提としたお付き合い」にあると二人ともが共通して認識している場合において、お互いに結婚後のライフプランの話し合いをしているような状況にあるとき、お互いの所得や資産の現在の状態や今後の見通しについての情報交換を行うというシチュエーションならば、収入というプライベート情報の開示であっても、お互いに相手に迫るだけの正当な理由があると言える。何故なら、結婚を前提に交際している二人が「結婚生活に関わる重大な話し合いをしよう」と合意しているならば、その合意に「お互いにプライベート情報の開示を行うこと」についての合意も含まれていると考えることができるからだ。
ここで注意を促しておくが、「結婚を前提としたお付き合い」に関して、交際開始時点で明示的・黙示的を問わず「結婚を前提としたお付き合い」であることが示された交際のみを指すわけではない。当初は結婚を前提とせずに開始された交際だが、時間の経過と関係性の深まりによって、現実的な話として相手との結婚がお互いの共通認識になっている交際関係も含んでいる。
婚約一歩手前のような関係性で将来の結婚生活についての話し合いをしているという、かなり限定的な状況でないならば、相手のプライベート情報のコントロール権に対して、交際相手が何かを要求できることはない。ましてや、相手がそれを拒んだからといって相手の拒否がDVとなることはない。
譬え話でいうならば、交際相手の財産権に属する財布の中身に対して、一方的に相手の合意もなく「自分がその財布の中身を使えないのは、自分に対するDVである!」と主張することが、狂人の弁であるのと同じである。
通常の理解力の持ち主であればここまで説明すれば、対談における二人の主張が如何に異常であるか理解できるのではないかと思う。しかし、フェミニズムに傾倒した人間の理解力は、余人には想像できないほど低下している場合が殆どだ。そのため、フェミニストが大好きなミラーリング(=男女の立場が入れ替わった同様の構造をもつ状況を提示すること)で、対談の主張の異常さを示すことにしよう。
さて、不妊問題に関して女性の卵子の異常だけでなく男性の精子の異常が原因であることも少なくない。それにもかかわらず、かつての不妊女性に対する「石女(うまずめ)」のレッテルは、女性側要因による不妊だけでなく男性側要因による不妊によっても貼られていた。
かつて横行した「石女(うまずめ)」のレッテル貼りは、生殖についての典型的なジェンダーバイアスに基づいていた。それは「生殖についての責任は女性にある」というジェンダーバイアスである。そして、酷さの程度は緩和されたが、このジェンダーバイアスは今なお根強く残る。
ただそうは言っても、出産に至ることができない生殖器官異常に関しては、生物的に女性側の異常に起因する要素が多い。男性の生殖器官が妊娠・出産に関係するのは受精過程までのことであり、女性の生殖器官が妊娠・出産の全過程に関係するのとは大きく異なる。そのため、恙ない妊娠・出産を可能にする生物的要素は女性側に偏っている。
さて、「結婚の動機」として挙げられるものとして「自分の子どもを持ちたい」というものがある。少子化が叫ばれ、子供を持ちたいと考える人間は減少しつつあるとはいえ、結婚する男女の大きな目的として「自分の子どもを持つこと」がある。
これらのことを前提として、対談で瀧波氏と信田氏の二人が主張していたことをミラーリングしてみよう。すなわち、「単に交際しているだけの状態であっても、自分のコントロール権に属するはずのプライベート情報が、結婚生活において一般的に重要な意味を持つ情報であるとき、相手には自分のプライベート情報への情報開示請求権があり、自分がプライベート情報の開示を拒否した場合、それは相手に対する自分のDV行為となる」との内容の主張に関して、上記で見てきた結婚と生殖の話に具体的に適用してみよう。
さて、単なる交際関係にある男性から、一方的に「キミの生殖器官についての医学的な情報を提示してもらえるかな?この情報開示を拒否することは、ボクに対するDVだよ」と主張されたとき、「分かった。アンタがアタシと実際に結婚する気があるかどうか関係なしに、一般的に言って結婚において子供が出来るかどうか大事だもんね。交際関係にあったら、アタシの健康状態というプライベート情報であっても、アンタに提示しなきゃDVだもんね」という風に納得できますか、という話である。
ミラーリングしてみれば、瀧波氏と信田氏が対談において如何に異常な主張をしているかハッキリと分かるだろう。
異性側に立って考えてみれば自分が主張している内容がどのようなものであるか直ぐに理解できる場合は少なくない。それゆえ、フェミニストは男性に対して「女性の立場になって考えろ!自分が持つバイアスが分からないようなら、ミラーリングしろ!」と叫ぶのだ。しかし、フェミニストはいざ自分達が何かを主張するとき、主張内容について異性側の立場から想像してみることや、ミラーリングして自分の主張をチェックしてはいない。もし、異性側の立場で考えるとどうなるか、ミラーリングしてみるとどうなるかとフェミニストが批判的に検討していたならば、本稿で批判した主張を含めて彼女らの馬鹿げた主張は幾分か少なくなるだろう。
立場を入れ替えてみれば到底受け入れることが出来ないであろう、自分達にとっては利益となり快適な状態を齎すこととなる都合のよい理屈を男性達に押し付けて、更には、常に自分達女性を正義側において男性を常に悪者側に置くことのできる特権を、フェミニストは持っていると盲信しているのだ。
なぜ、そんなセクシストとしか表現しようのないフェミニストを崇め奉って、御説もっともですとメディアは取り上げるのか、私には理解が出来ない。
いいなと思ったら応援しよう!
