![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169178924/rectangle_large_type_2_ce75d0847da4e51cedc14325c7dbe81a.png?width=1200)
#02|多難の連続。夢を諦めず、地元千厩で小さなカフェを営む小山裕子さん。
![](https://assets.st-note.com/img/1736311294-2Er4QDziPlgYWCKHX6y1Vsok.png?width=1200)
せんまや百人図鑑第二弾。
今回、取材させて頂いたのは千厩町内でカフェを営む『小山裕子』さん。
裕子さんの出身は千厩町小梨地区で、「ケーキ屋をやりたい」という夢を持っていたため、地元の千厩高校を卒業後、東京の製菓専門学校へ進学しました。専門学校卒業後は東京と札幌で合わせて十年間、住み込みでケーキ屋で働いたり、ホテルやカフェなどで調理担当をしていました。
働きながら調理師免許を取得し、仕事では次第に、商品開発にも携わるようになっていました。
そんな働き盛りの都会生活の最中、裕子さんのお母様の体調が悪化。
看病のため地元に戻ることを決め、千厩での開業を目指すことになりました。
しかし、いざ店舗を探すとなると、土地所有者の複雑さや物件所有者の曖昧さ、そもそも存在する空き店舗の所有者がわからないという事態に直面し、店舗さがしは多難を極めました。
お母様の体調が次第に悪化していく中、「母が生きているうちに開業してお店を見せたい」という気持ちが鼓舞し、苦難の中ではありましたが土地を決め、開業の準備をしていた真っ最中、東日本大震災に直面しました。
震災後は家族の助言もあり、当初の開業計画は全て白紙に戻したといいます。
この怒涛の最中に裕子さんのお母様が他界。
今後のことを考えていた矢先、空き店舗活用を目的とした一関市の「新規店舗開店等支援」の広告が目に留まり、すぐに事業計画を提出、前回の店舗決めでの難航が嘘のように、とんとん拍子で物事が決まっていきました。
多難を経て、裕子さんは遂に、2011年12月「カフェキャトル」を開業しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1736313548-ocNAS6upmeF5RYWITCa890Z4.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1736313600-9SDOb1CnaUEtcoYRsVF84vgH.jpg?width=1200)
裕子さんに「カフェキャトル」で大変だったことを伺ってみました。
「接客業って難しいと思う。お客さんによって距離感も違うから、話好きの人もいれば、そっとしておいてほしい人も居たり。とにかくコロナ渦中が大変だった。…けれど常連さん方に救われてなんとか続けて来れた。
最近は、物価高騰で材料費が高くなっているから、メニューの価格を上げざるを得ないのが心苦しい。加えて、近年は更年期の影響で体調が思わしくない日が続くこともあって昔のようには身体が動かない」
コロナ禍は例外なく裕子さんのお店にも大打撃がありました。
苦難を乗り越えた今は、お店を通じて出来たお客さんとの繋がりが嬉しいと裕子さんは語ります。
「常連さんやお店を愛して贔屓にしてくださっている方々の存在がありがたいのはもちろん、学生時代に店に来てくれていた子が大人になってまた顔を出しに来てくれたり、あまりお話ししてなかった方でも転勤の挨拶をしにわざわざお店に来てくれることが嬉しい」
裕子さんに地元千厩についての想いを伺いました。
「都会に住んでいた頃は、部屋と職場の往復の生活だった。その時から別に都会じゃなくても生活はできるなって思っていた。今思えば都会は刺激的だったかな。まさか、地元の千厩に戻ってきてお店をやるとは思ってなかったけど、千厩は生まれ故郷で愛着のある地域だし、地元の友達もいる。病院も飲食店もあるし、車やネットもある時代、贅沢を言わなければ十分生活ができる。学生時代と違って自分の足で好きなところへ行けるし、コンパクトで住みやすいまちだと今は思う」と語ります。
一方で地域活性について、「新しいものだけではなくて、昔からある古いものを活かすことが必要なんじゃないかな。商店街の店先はシャッターが閉まっているけれど、奥には人が住んでいることが多い。所有者の高齢化で店先だけを貸し出すにしても、トイレ問題や片付けが困難という理由で貸し出したがらない人もいる。店をやろうとして店舗を決めるのは、まず大家さんとの相性と対話が大切だと思う」と語ります。
そんな裕子さんのこれからの夢を聞いてみました。
「大それた夢は持たないけど、この店を、おじいさんおばあさんが住む昔ながらの喫茶店のような、まちの人の拠り所になるような場所にしたい。細く長く続けていけたらなと思う」
今年で13周年を迎える「カフェキャトル」ご店主の小山裕子さんが季節の野菜やフルーツを使用して丁寧に毎日手づくりするパスタやスイーツを求め、今日も町内外から多くの方がお店を訪れています。
編集後記
カフェキャトルさんには、高校時代によくお世話になりました。友人や家族と、そして一人でも、いつ訪れても居心地の良いお店であり、流行りに無頓着で無知な私に、ワッフルやキッシュ、クロックムッシュなどのお洒落な食べ物を知る機会を与えてくれたお店でもあります。高校卒業から約10年、地元に移り住むとは到底想像していなかった私ですが、戻ってきて初めて足を運んでみたキャトルさんはあの頃と変わらない、居心地の良い場所のまま。『あの頃はどんな想いでここにきていたっけ』『そういえばあの時一緒にここにきた子は元気かな』など、ノスタルジーな気持ちにさせてくれました。そんな愛着のあるお店を経営されている裕子さんのお話を聞き、多難の中でも夢を諦めなかった彼女の姿に勇気づけられました。これからも、誰かの心の拠り所になっていくであろうカフェキャトル。私もひとりのファンとしてこれからも自分のペースで応援していきたいと思います。
(取材執筆…千厩町地域おこし協力隊)