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【内視鏡の名医が解説!】内視鏡名医42名を特別公開!自分にとっての名医を見つける「自分の人生観を大切に」がん研究会有明病院 後藤田 卓志 先生インタビュー

誰しも名医に受診したいものです。でも、自分なんてとても無理では…と思われている方、もったいないです。日本は「国民皆保険制度」で、どんな名医にもアクセスできます。そこは、かけている保険料によって、受診できる医師に差がある欧米や中国とは決定的に違うところです。差がつくとしたら、入手する情報量です!

がん研究会有明病院 上部消化管内科部長の後藤田 卓志 医師に、わかりにくいセカンドオピニオン制度の説明やとても勇気が出るアドバイスをお伺いしました。


名医にインタビュー 後藤田 卓志 医師

後藤田 卓志 ごとうだ たくじ がん研究会有明病院 上部消化管内科部長
国立がんセンター中央病院で、最先端の内視鏡開発(内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)で日本を牽引した内視鏡の名手。東京医科大学消化器内科准教授、日本大学消化器肝臓内科学分野教授を経て現職。

がん研究会有明病院 上部消化管内科部長
後藤田 卓志 先生

◇患者さんと医師との共同意思決定

―内視鏡が進化することで、以前とは比較にならないほど治療方法の幅が広がったと思います。医師によって選択する治療法や診断さえ違うケースがあることを考えると、どの段階で名医を探せばいいでしょうか。
後藤田
 今現在、「何か調子が悪い」と思って受診する場合と、人間ドックなどで診断がついてから、「この病気を治したい」ということで受診する場合と全然違うと思います。「調子が悪いが、まだ診断がついていない」ならば、医師を探すのに時間をかけていないで、とにかく受診した方が良いと思います。
お腹が痛いといっても、腹部には臓器がたくさんあるので、消化器の疾患である可能性は五分五分で、婦人科や泌尿器、狭心症、肺炎の可能性だってあります。まずは病気の「あたり」をつけてもらわないといけません。その意味では、日頃から何でも相談できる、かかりつけ医がいることが重要だと思います。
―標準治療といってもいろいろなものがある中で、医師によって選択が変わることはありますか。
後藤田
 衆目一致する場合は簡単なのですが、微妙な時にこそ選択が違うことがあり、腕の見せどころなのだと思います。
例えば、がんの薬物療法ならば、推奨される薬剤の組み合わせはいくつかあって、患者さんの年齢、全身状態、体重、患者さん自身の哲学でさじ加減が違います。内視鏡的切除もやはり医師の技量によって選択が変わってくることもあります。外科手術も、ギリギリで胃を残せるのか、全摘になるのか。そこの微妙なところは、その主治医の考えがあると思います。
また、他の病院で胃の全摘と言われたケースでも、噴門側胃切除で上の方だけでがんが取れる場合があります。しかし、それはその医師の考え方で、胃の入り口だけを取り、下部を残しても食べることができない患者さんがいたという経験をしていると、医者はその手術はあまり良くないと判断して全摘する場合もあるかと思います。
ガイドライン(=標準治療)に則した治療が第一選択なのですが、最後のさじ加減は、やはりガイドライン通りにはいかないと思います。患者さんファーストで方針を決めるのは最低限必要なことで、最終的には医師自身の経験の上に患者さんにベストとなる治療法を提案し、患者さんと一緒に考えて決めることになります。SDM(Shared Decision Making シェアード・ディシジョン・メイキング)と言います。
また、術中に方針が変わってしまうこともあります。内視鏡的切除ができると治療に臨んだのに、手技中に適応ではなかった、あるいは技術的に困難であったということもあります。まずは安全に治療を行うことが第一義ですから、場合によっては方針が変わる可能性について、あらかじめ説明しておくのが重要でしょう。術者のメンツに固執しない、勇気を持って撤収することも大切、常に患者さんに真摯に向き合うことが医療だと思います。

◇主治医との相性が大切

―医師側から見て、こういう患者の態度は良くないということはありますか。普通に人間関係が作れる人なら、そんなに怯えなくても良いですか。
後藤田
 怯える必要は全くないと思います。今の時代、患者さんも何でも医師にお任せしている場合でもないでしょう。もちろん医師が威張っているのは論外です。患者さんと医師という関係以前に、人としてあたり前に接するように私は心がけています。その上で、やはり困って受診されているわけですから、丁寧にお話を聞いて、診察を行い、今後の検査や現状について自分の家族や友人に話すように説明しています。
一方で、常に人を信じられないようなドクターショッピングをして廻っているような態度の患者さんも稀ではなくいます。これではお互いに信頼関係は作れないと思います。人としてあたり前に接することを、患者さんの側にもお願いしたいことです。

―なかなか、そういうお医者さんはいないと思います。上から目線の態度であったり、あまりこちらに関心がない様子を感じる時があります。
後藤田
 それは、医師側の人間性や育った環境の問題ではないでしょうか。医師は横柄な態度で商売してもお金をいただけて、その上患者さんから、「ありがとうございました」と言われる希有な職業と、どこかで読んだことがあります。そのような時代があったかもしれませんし、まだ、そういった地域があるのかもしれませんが、さすがに時代遅れではないかと思います。
 多くの生き物は一目惚れで行動を決めているそうです。ですから、初診時に診察室に入って、「この先生、気が合わない」と思ったら、次回受診は止めた方が良いと思います。もちろん、医師側も、「この患者さん、合わないなー」ということもあります。そこは医師の応召義務(医師から断ることはできない)があるので、プロフェッショナルに徹して診療をするしかないところです。

―腕が良いけど、性格は…?という医師もいますね。
後藤田
 それは、患者さんがどちらを取るかです。性格よりも腕を取るという風に、ご自身で決めたなら我慢することもご自身の選択だと思います。ただ、腕がある医師、つまりは医師として自信がある医師は、一般的には性格も良いと思いますよ。
―直感が大事ということですね。
後藤田 患者さんに言いたいのは、医者と合わなくても我慢する必要はないし、ぱっと見て合わないと思ったら、さっさと代えなさいということです。余程の病気以外で、この医師しか出来ませんなんていう治療はもはや存在しないと思います。
自分が合うと思った人であれば相手も合うと思っていると思います。そのような場合は、例えば言い出しにくいと言われているセカンドオピニオンをしたいと言っても、喜んで紹介状を書いてくれると思います。自分の希望を我慢しているから、何か怒られてしまうのではないかと思ってしまうのではないでしょうか。また、気が合わないと思っている場合は相手も気が合わないと思っている場合が多いですから、セカンドオピニオンをお願いしたらむしろ喜んで紹介状を書いてくれると思います。気が合うか合わないかは、セカンドオピニオン後に戻ってくる場合に快く受けてくれるかどうかでわかるのではないでしょうか。

◇診断の重要性

―治療も重要ですが、診断が重要だと思います。がんだと言われて、がんではなかったということもありますか。
後藤田
 がんではないものを治療することは、まずないでしょう。組織検査でがん組織が診断されないと治療はしません。がんの広がり、つまりステージ(病期)を間違えると、「やりすぎ」や「やらなさすぎ」が起きます。ステージの診断とそれを受けての適切な治療選択ががん診療では重要です。
 外科と内科、放射線科や病理診断科でカンファレンス、キャンサーボードといいますが、一例一例を担当医個人の判断ではなくチームで検討し、その上で患者さんと最終の治療方針を決める過程(前述のSDM、共同意思決定)が大切だと思います。多くの目を通して決めるという点で、がん研有明病院は最高の施設だと思います。

内視鏡開発(内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)で日本を牽引した内視鏡の名手後藤田 卓志 先生

―カンファレンスがないところでは、外科医は切る傾向にあるということはないですか。
後藤田
 カンファレンスがないと、外科医は切りがちになるかもしれないし、逆に内科医が本当は切るべきところを内視鏡的切除としているかもしれません。どっちもどっちだと思います。

◇セカンドオピニオン制度を理解しよう

―まだセカンドオピニオンを医師に言いづらい、遠慮するという人がいます。
後藤田
 言いづらい空気にしている医師もいけないかもしれませんが、当の本人である患者さんもいけないと思います。躊躇している場合じゃないです。
まずは、セカンドオピニオンの制度をよく理解した方が良いと思います。セカンドオピニオンはあくまで他の医者に見解を聞きに行くことで、そこで納得したらまずは元の主治医に戻る制度です。その上で、他の施設で治療を受けたいとなれば改めて診療情報提供書を持って受診します。セカンドオピニオンは転院を前提とした紹介状(診療情報提供書)とは違います。患者さんにはこの違いを理解していただきたいです。
セカンドオピニオンの時に説明を受けた後で、「こちらで治療をお願いします」は、制度の趣旨からしたらNGです。初めから転院をしたいとの意志があるなら、正直に初めから、「他院で診療を受けたい」と紹介元の先生に伝えるべきです。
私の場合は、セカンドオピニオンに対しては、「患者さんから相談を受けた〇〇に対して医師としての見解を患者さんに説明しました」と返信しています。
患者さんにもセカンドオピニオンの趣旨を説明して、当院での治療を受けたい場合は、今回のセカンドオピニオンを書いていただいた先生から改めて私に診療情報提供書を書いて貰うように伝えて、一度戻っていただいています。患者さんにとっても医師にとっても面倒なのですが、これが私の理解しているセカンドオピニオンの趣旨です。

◇本来の主治医とは?

―通っている病院から、他の先生に紹介状を書いてもらうと、主治医が変わることを意味するので、「もう元の病院には戻れません」と言われるケースがありました。
後藤田
 そのような言い方を本当にされているのなら、それはその医師が悪いと思います。そんな医師なら行かない方が良いと思います。そんなことを言われたら、患者の方から、「結構です」と言えば良いと思います。前述したように、世の中にはその先生しか治療ができない疾患など本当に僅かしかないです。お互いに敬意を払った関係の上で、あなたの病気を治療できる医師は沢山います。安心して別の施設に替えていただければ良いと思います。
また、質問で「主治医が代わることを意味するので」と言われましたが、主治医ではありません。たまたま初診を診て複数回診察した担当医です。2つの明確な違いはないと思いますが、主治医は治療方針が決まりこれから治療となった場合、患者さんに対してその治療の責任を負う医師と考えてください。

◇判断に迷う微妙なケースで有効

―セカンドオピニオンで、主治医の診断、治療方針を疑問に思ったときは、どうやって患者を戻しますか。
後藤田
 例えば私の専門領域で言えば、胃がんに対して、「手術と言われたのだが、内視鏡で切除できないか」などがあります。あるいは、早期の胃がんに対する治療方針についてという漠然としたものもあります。
前者に対してですが、内視鏡切除の適応から患者さんには説明します。治療前に適応であっても内視鏡切除後に病理などの検討で適応ではなく、外科切除が必要な病変であることがわかることが10~15%程度あります。つまり、内視鏡切除可能(何とか取れる)と根治(外科切除が不要である病変)とは違います。これらを説明して、紹介元の先生が手術の方が良いと思われたことも一理あること、でも内視鏡切除もやってみる価値はあるかもしれないことなどを説明してご理解いただいています。
これらのやりとりを嘘偽りなく記載して、最終的には再度、患者さんと紹介元の先生とで話し合っていただくのに参考となるように返信しています。だからセカンドオピニオンなのです。
実際の診療において、まったくトンチンカンな説明でセカンドオピニオンの紹介状を書いてくる先生はまずいません。いずれも判断に迷う微妙な病変ばかりです。その意味では、患者さんと我々医師が情報と知識と経験をもって十分に話し合って、最終的には患者さん自身が納得された治療を受ける手助けをするのが、我々の仕事の第一歩だと思います。

◇自分が迷う理由をはっきりさせる

―主治医が治療方針の説明のときに、すぐに入院日や手術日を決められることもあります。患者としては、もう少し時間をかけたいです。
後藤田
 それは、待ってもらったら良いと思います。ただ、もう少し時間をかけたい理由を患者さん自身が理解しているかもポイントだと思います。
例えば、「この施設で治療を受けて良いものか」、「今日は一人で来ている(あるいは老夫婦のみ)ので子供に相談してみたい」、「何かのテレビで神の手とか言われている先生を見た記憶がある」、「自分は高齢だし治療する必要あるのか」、「さきほどの説明では理解できなかったことがある(でも先生は忙しそうで聞けない…)」など理由があれば、躊躇なく納得いくまで質問すれば良いと思います。
それで怒り出すようなら担当医(この時点では主治医かもしれません)や施設を替えれば良いと思います。繰り返しますが、医者はいくらでもいます。

◇セカンドオピニオンは入院する前に

―入院して治療が始まっていたら、セカンドオピニオンは無理ですか。
後藤田
 それは難しいと思います。国民皆保険の制度上、入院している患者さんが他施設の外来を受診する場合は全て自費になると思います。あるいは、一度退院してからとなり、現実的ではないです。やはり、納得してから入院した方が良いと思います。入院してから躊躇しているようだと、それこそ患者さんと担当医の関係が悪化しそうです。
また、セカンドオピニオンを受けられたとしても、「治療開始直前に来るってどういうこと? ちょっと変わった患者さん? 面倒くさそう」などと思われてしまうかもしれません。

―医師が自分の病院ではできないが、他の病院ならできる治療があることを患者に説明しないことはありますか。
後藤田
 今のご時世、そんな医師はいないと思います。「自分、あるいは自分の施設ではできないので、他を紹介します」と言っていると思います。この質問、ここまで医者が信用されていないということが寂しくもあり悲しいです。今までの医師の態度など積み重なってきた権威への不信感があるのですね。

―高齢の方は遠くの病院の名医には行けないという声が多いです。
後藤田
 まず、名医の定義がよく分かりません。今までの質問から察すると、神の手をもった医師ではなさそうですが…。でも、テレビで紹介している名医とは多くが神の手系です。神の手が必要な疾患はそれほどありません。テレビに翻弄されているだけだと思います。太平洋戦争を煽ったのは当時のマスコミです。マスコミは本当に恐ろしいところです。嘘も本当のように思えてきますから。いわゆるマスコミが創った〝名医〟に騙されずに、地に足をつけて、名医ではなく信頼出来る医師を探してください。この医師しか治療出来ない病気は殆どありませんので。
また、本当に名医がいたとして、高齢で遠方なので行けないという声に対しては解決策を提示できません。無理して行く必要はないと思いますが、どうしてもということなら自己努力で行っていただくしかないと思います。狭い日本です。
先人達のお陰で医療の均てん化が図られ、殆どの疾患は何処でも同じようなレベルで対応できると思います。それぞれに地域の県立病院、市民病院、基幹病院なら一般的ながんの治療は一緒だと思います。それを信じていない、あるいはマスコミに踊らされている自分自身の問題ではないでしょうか。
ただ、いろいろなデータによると、都会のがん専門病院と地方のがん拠点病院では予後が違うという結果(都会においても地域性によって違いがある)が報告されています。しかし、これは治療技術の差ということとは違うそうです。そもそも対象とする患者さんの年齢層が違います。東京に住んでいる人は比較的若いし、地方の人でも東京に治療に来る人は若く元気だからです。数字だけ見ていると解釈の判断を間違えます。背景についても考え、極力バイアスを除いたところで評価して判断した方が良いと思います。

◇自分の人生観を大切に

―患者は、「事前に質問事項を考えておいた方が良い」といわれますが、何を聞いたら良いかわからないです。
後藤田
 何を聞いたら良いかわからない、ということ自体が問題だと思います。自分の体、人生、命が掛かっているわけです。患者さんご自身も真剣に考えた方が良いと思います。考えていただかないと共同意思決定(SDM)もできません。質問も患者さん毎に違うと思います。
がんに特化して話しますと、家族に対する責任や準備、あと何年生きられるのかが第一義の質問と言う方もいると思います。あるいは、手術による合併症や後遺症がまずは心配という方もいると思います。ただ、これら治療方針と予後を決めるのに重要なのは、まずはステージです。ステージによって治療方針が変わり予後も決まってきます。
次に治療方法は一つなのか、オプションがあるのか。そして、それぞれの治療をやったときの体へのダメージや術後後遺症、予後はどうなるのか、などは少なくとも聞いたら良いと思います。
もっと突っ込んで聞きたいのなら、その疾患に対するその施設における治療成績、治療件数は聞いても良いことかもしれません。場合によっては費用について心配に思っている方もいると思います。

―決断を急がなくて良いですね。
後藤田
 心筋梗塞などと違ってがんの治療は一刻を争うものではありません。ご自身でも勉強して、分からないところは専門家に質問して、理解してから、それでももう一度、「間違いないか? 自分は納得したか? 家族はどうだ?」など自問自答した上で自分の責任で最終決断をすればよいと思います。
これが共同意思決定(SDM)です。いずれにしても、すぐに治療方針を決定する必要はありません。
年齢や基礎疾患などで手術のリスクや術後後遺症の重みの方が大きいのなら、それぞれの人生観や宗教観によっては、「私は治療しない」という最終決断があって良いと思います。
家族も含めて自分の人生ですので、人生に問いかけてご自身で決めることが何よりも大切なことだと思います。


『国民のための名医ランキング』より名医の紹介

なぜ、『国民のための名医ランキング』なのか

『国民のための名医ランキング』は、これまでに2016年版、2018年版、2021~23年版、2024~26年版を出版しています。出版当初は「医師にランキングなんて」という批判の声もありました。しかし、どんなに遠くても日本一の医師の所に足を運ぶのか、出来る限り近くで探したいのか、その選択は一人一人違います。選択を一人一人にゆだねたいという思いで、一つの参考になればと思いランキング形式にしました。主治医を選ぶことは人生を選ぶこと、その方の人生観に直結しています。皆さまが自分の納得のいく主治医に巡り合えますよう、心から願っています。

『最新版 国民のための名医ランキング2024~2026年版』掲載の内視鏡分野の中で、首痛、腰痛に特に強い整形外科(脊椎外科)の名医をランキング順に紹介します。(ランキング部門30人、有益情報12人)本書には、詳しい治療実績や先生の顔写真等を掲載していますので、ご参照ください。

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