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本日の一曲 vol.509 バッハ:マタイ受難曲 (Johann Sebastian Bach: Matthäus-Passion, 1727)
先日ご紹介した「ベートーヴェンの合唱」が日本での年末恒例行事となった理由を考えてみますと、まさしくみんなで歌を歌うという「合唱」にあるのだろうなと思います。「ベートーヴェンの合唱」を演奏会で聴いたりして、数十人単位の合唱に触れたことがあれば、最初、その音量と大迫力にはびっくりすると思います。また、合唱の輪に加わって自ら合唱の一員として歌ってみても不思議な高揚感があり、これまた楽しいものです。
そんなことから合唱には祝祭感があり、1年間のまとめとして、1年間の最後の月であり、寒い冬の期間である12月に合唱をする、あるいは聴いて熱くなるということに特別な意味を見出しているのだろうと思います。
そして、「ベートーヴェンの合唱」には、あの「歓喜の歌」という覚えやすくて歌いやすいメロディーがあり、あらゆる合唱の中から、この曲が選ばれたのだろうと思います。
しかし、この「歓喜の歌」、短くありませんか?あっという間に終わってしまいませんか?もっと合唱したくありませんか?もっと合唱を聴きたくなりませんか?ということで、何回かに合唱曲をご紹介したいと思います。
その1曲目はバッハさんの「マタイ受難曲」にしたいと思います。ともかく、キリストが磔にされる出来事があったという予備知識だけで、「マタイ受難曲」冒頭の合唱曲をお聴きになってみてください。
「マタイ受難曲」の名盤とされるカール・リヒター(Karl Richter, 1926年10月15日生~1981年2月15日没)さん指揮ミュンヘン・バッハ合唱団と管弦楽団(Münchener Bach-Chor und Orchester)の合唱・演奏です(1958年)。
いかがだったでしょうか。冒頭からながれる8分の6拍子の低音部の規則的なリズムは、十字架を背負わされたキリストの歩みだとも言われています。
マタイ受難曲は新約聖書の「マタイによる福音書」第26章と第27章を題材にしたものであり、曲の種類としてはオラトリオ(聖譚曲)といってよいかと思います。旧約聖書と新約聖書は、信教の有無は別にして、人類の古い書物として一度は読んでおきたいものです。
バッハさんのマタイ受難曲は、クリスチャンの方が聴くとまた特別な意味があるのだろうと思いますが、逆に、クリスチャンじゃないと聴く意味がないのかと言われると、そうでもなくて、誰にでも特定の宗教でなくても宗教的な気持ち、あるいは感情というのはどこかにあると思いますので、そこにフォーカスを当てて聴いてみてもよいだろうと思いますし、バッハの「音楽」として聴いてみてもよいかと思います。
「マタイ受難曲」は全曲を演じるとなると3時間くらいかかる超大作なのですが、曲の進行は、エヴァンゲリスト(Evangelist, 福音史家)が担当していますので、何を言っているのかが分からないと、今ひとつ楽しむことができません(ちなみにエヴァンゲリオンとは「福音」のことで、語源はギリシャ語の εὐαγγέλιον です)。そこで、「オペラ対訳プロジェクト」さんの方で制作された動画で鑑賞されるのがよいかと思います。
「オペラ対訳プロジェクト」については、こちらの記事もご覧ください。
また、最近の演奏では、「フーガの技法」の記事でご紹介したオランダ・バッハ協会(Netherlands Bach Society)のものがありましたので、こちらもご紹介したいと思います。この動画は字幕機能がつけられていますので、字幕を有効化することをおすすめします。
「フーガの技法」の記事はこちらです。
それと、実は「マタイ受難曲」のアリア「憐れみ給え、わが神よ」については、こんな記事でご紹介したことがありました。
(by R)
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