本日の一曲 vol.241 リスト 死の舞踏 (Franz Liszt: Totentanz, 1849)
死の勝利
フランツ・リストさんの「死の舞踏」は、ピアノとオーケストラのための作品であり、2曲のピアノ協奏曲と並んで演奏会で取り上げられる曲です。
作曲のきっかけは、1838年から翌1839年にイタリアを旅行した際、ピサのカンボ・サント墓地にある壁画「死の勝利」を見て、着想を得たそうです。
リストさんが見た壁画「死の勝利」とは、前述のページにある14世紀に描かれたブオナミコ・バッファルマッコ(Buonamico Buffalmacco)さんのフレスコ画「死の勝利(Trinfo della Morte)」だそうです。
怒りの日
そして、グレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)」の旋律を使って、主題と5つの変奏による劇的な曲を作り上げました。「怒りの日」の譜例はWikipediaにありました。
グレゴリオ聖歌「怒りの日」は、ペルリオーズの幻想交響曲第5楽章でも使われていますが、こちらは1830年の作曲であり、1811年10月22日生まれのリストさんが19歳ころの作品ですので、幻想交響曲の使用例を引用したことは間違いないと思います。
「怒りの日」の使用例は、Wikipediaにあるように、チャイコフスキー、サン=サーンス、マーラー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチと錚々たる作曲家たちが引用しており、西洋のクラシック音楽の語法として、この旋律が現れれば、それは「裁き」のことであると定番化しています。
近年では、スタンリー・キューブリック監督の1980年の映画「シャイニング」冒頭で効果的に使われていたことが印象に残っています。
死の舞踏
リストさんの「死の舞踏」はこのような背景がありますので、演奏する際には、思い切り「終末」感を出してもらいたいものです。
最近では、アリス=紗良・オット(Alice Sara Ott)とサー・アントニオ・パッパーノ(Sir Antonio Pappano)さんロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)が昨年2023年10月に演奏しましたので、これをご紹介します。
追伸(2024/11/04):シャイニング
キューブリック監督作品「シャイニング」冒頭のテーマは、アメリカのシンセサーザー奏者であるウェンディ・カルロス(Wendy Carlos, 1939年11月14日生)さんとそのプロデューサーであるレイチェル・エルカインド(Rachel Elkind-Tourre, 1939年2月23日生)の作品です。
ウェンディ・カルロスさんは、日本のシンセサイザーの第一人者冨田勲(1932年4月22日生~2016年5月5日)さんがモーグ・シンセサイザーを購入するきっかけを作ったアルバム「スウィッチド・オン・バッハ(Switched-On Bach)」の作者「ウォルター・カルロス」さんです。
追伸(2024/11/04):イザイの無伴奏ソナタ2番
ヴァイオリニストにとっての難曲ですが、ウジェーヌ・イザイ(Eugène Ysaÿe, 1858年7月16日生~1931年5月12日没)さんの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番にも「怒りの日」がバッハ・無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番プレリュードと絡み合わせてモチーフとして用いられています。
トーマス・ツェートマイアー(Thomas Zehetmair, 1961年11月23日生)さんの演奏です。
ツェートマイアーさんはイザイ・無伴奏ソナタ全曲を録音していますので、そのプレイリストです。
(by R)