泳げる子供にライフジャケットを着せたら、新しいゴミ拾いプロジェクトが爆誕した話
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称ってことは、かなり認知されてきていると思うが、これが2015年に国連サミットで採択されて、2016年から2030年までの15年間で達成しようとしている目標ってことはどれだけの人が知っているだろうか。
ワタシが知らなかったSDGsとは
なんとなく、みんなが「えすでぃーじーず、えすでぃーじーず」言い出して、なんとなく「あぁ、なんか未来の地球のためにみんないいことしていこうや」的な流れくらいにしかとらえてなかった。これからずっとそこに向かっていくのかと。
でも、目標って言っているんだから、よく考えたら達成期限がないと確かに説得力はだいぶ欠けるよね。
今、2021年後半。ちょっとまって、あと8年ちょっとしかないじゃん。
ダイビングインストラクターという仕事上、これが一番目にとまるんだけど。
「海の豊かさを守ろう」と言われて、いや守らんでもいいでしょうって思う人はきっとゼロに近いと思うんです。2択だったら、一応守ったほうがいいを選ぶ人が多数かと。
このSDGsの17個の目標には、実は細かくそれぞれ10個ずつくらい全部で169個のターゲットがあって、さらに詳細に具体的な数値目標が書かれた232の指標があるんだって。(目標とターゲット・・・一緒じゃない?あ、ゴールを目標って訳しちゃったから、ターゲットの訳がなくなっちゃったのね。)
さらに言うと、それぞれの目標を細かく見ていくと、他の目標と重複する部分があって、17個の目標としているんだけど、実はそれぞれの目業が相互関係にもあるんだって。
大きな企業がこの目標に向かって取り組んでいるのはわかるんだけど。。。。話が大きすぎて、一般庶民の生活レベルで考えるとゴールが遠すぎない??あんまり気にしすぎると疲弊してくるし。
いやいやいや・・・、私ちゃんとサンゴに優しい日焼け止め使ってるし、海洋生物も傷つけないように中性浮力もマスターしたし、エコバッグも使ってプラスチックゴミを減らしてますよ!!
もちろん、そうなんです。そういう方はたくさんいらっしゃると思うし、否定する気は全くないんです。
ワタシが注目したいのは、言葉の解釈の仕方という部分です。
海の豊かさを守るためにという目標を見つめたときにね、ダイバーはサンゴを壊す可能性があるから悪ととらえる人もいると思うんです。まったく、ダイビングが身近になくて、あってもなくてもどっちでもいい人の方がむしろ多いだろうしね。
だけど、ダイビング業界から言えば『サンゴを守るためにダイバーができること』という立場でとらえることも可能ってこと。
学級会でクラスの目標を決めるときだってそうだと思うんだけど、みんなで決めたことって言っても、厳密な意味でのみんなではなくて、民主主義的には多数決、少なくとも51%以上の人が賛成した目標を達成するにはそれ以外の49%の人をどう動かすかというところにかかっていると思うんだよね。
日本人補習校での体験
話は全く変わるんですが、実は先日サイパンの日本人補習校の課外授業の講師というオファーを頂いて、幼稚部から小学二年生向けに「海の生き物」についての講義をしてきたんです。
みんなに「海にいる生き物」って何がいるかな?
と聞くと、やっぱり魚とかカメとかイルカとかサメとか花形キャストの名前がバンバンでるんだけど、今回ワタシが注目してほしかったのは、サンゴとかナマコを生き物としてとらえられているかというところ。
実際に、海でナマコが触手を伸ばして餌を食べる様子とか、折れたサンゴも実は死んでしまったわけではないこととかを観察してもらって、絵にかいてもらいました。
そして、その後「スノーケリングツアー」のガイドも引き受けたんですね。
そこで、海に慣れたサイパン生まれの子供たちに、お休みの日に家族でちょこっと行けるような地元のビーチを、我々ダイビングインストラクターがあらためてガイドをする意義が、実は当日までどうもしっくり来てなかったんです。
たぶん、開催する学校側はプロのガイドに任せる安心感があるだろうし、子供たちからみれば、いつも一緒に遊んでいる子とは違って学校の友達(特に日本人学校の)と一緒に海で泳ぐ機会は貴重なんだろうなくらいに思っていたんです。
開催の意義がしっくりと来てなかったので、当日泳ぎの達者な子たちに足のつく深度の海でライフジャケットを着せて泳がせる意義も、
「当然、プロが案内するスノーケリングツアーなんだから、ライフジャケットを装着してもらってなければ、万が一事故が起こった時に補償対象にならないじゃん。」
「マンツーで見られるわけじゃないし、子供は浮力が小さいから、浅いとはいえ安全のために絶対着てもらった方がいいでしょう。」
くらいの気持ちで当日を迎えたんです。
で、当然こういう事態になったよね。
「ボク泳げるから、ライフジャケットなんていらないよー!」
うんうん、わかるよその気持ち。
ワタシも中学校の時、小学校まではヘルメットなんて被らないで自転車に乗ってたのに、突然「校則だから!」「安全のために!」と大人から言われて、不本意ながらヘルメットを被って自転車通学してたもん。
「ねえねえ、ライフジャケットって着たことある?」
と聞いてみた。すると、そのブーブー文句言っていた男の子は、着たこともないと。なるほど、これは「ライフジャケット=泳げない子が着るもの」という式が成り立っているのね。
まず、みんなで安全にライフジャケットを装着して泳ぐ方法をレクチャーし、その一番文句言っていた子に
「ねえねえ、みんなにお手本見せてあげてよー!」
っていったら、「ったくしょーがねーなー」ってな感じで、立派にお手本を見せてくれて拍手喝采を受けて、得意げ。
やっぱり、子供なんてチョロいわね・・・。と、ワタシの中の悪魔がほくそ笑んでたのは、秘密にしておこうと思う。
チョロい子供が大好きすぎて、得意げになってる様子で萌えてた部分も否定できない。かわいすぎるだろー、さっきまであんなにブーブー言ってたくせに。キュン死するわ。
そして、大人で太ももから腰くらいの深さの浅い海でライフジャケットをしっかり来た子供たちと岩場の近くの漁礁になっているところを案内した。
しかし、ライフジャケット初心者があまりにも多すぎて、いつもの水泳バリにバシャバシャとバタ足をするもんだから、肝心の魚はすべて引っ込んでしまって観察どころじゃない。
魚いないよー!
と文句の出る子供たちに
「お前らがバタバタうるさいから、おさかなが引っ込んどるんじゃー!!!おらー!!」と怒鳴ったことは内緒にしておこう。ここには保護者はいなかったし。
ライフジャケットを着てるんだから、浮きながらそーっと近づいて観察してごらんと説明すると、言われたとおりにそーーーっと近づく子供たち。
ううううう、こういう素直なところがいいよね。子供って。可愛い。
最初はスズメダイなどの隠れてもすぐ出てくるものを観察し、次にヒメジなどのよく見ると特徴のヒゲが観察できる魚をご案内。
そして、最後は観察上級者向きのカエルウオ。臆病で引っ込んだらなかなか出てこない魚も観察することに成功した。
なるほど。これが意義だ。
突然、腑に落ちたんです。すとんと。
サイパンで生まれ育った子供たちは、確かに海には慣れているかもしれない。だけど、魚を観察するために海に入った子は実は少ないのかもしれない。
お休みの日にローカルキッズたちが桟橋から次々に飛び込んで遊んでいるのをよく見るけど、海の遊び方の選択肢をそれしか知らないという可能性もある。
だって、ライフジャケットを着て泳いでいるローカルキッズなんて、あんまり見たことないもんね。マスクやゴーグルだってつけてないし。
ライフジャケットも着ずに、あんなにバシャバシャしてたら、魚だって逃げる。マスクしてなければ、そもそも魚も見えないしね。
そこがすとんと腑に落ちたら、他のことまで次々に腑に落ちた。ドミノみたいに。
美しい島が隠している恥ずかしいこと
北マリアナ諸島は14の島があります。そのうち、サイパン島、テニアン島、ロタ島には美しい海と自然に囲まれた人々の暮らしがあります。
この美しい島々の写真をSNSなどで目にしたことがある人は多いと思うのですが、実際は隠している恥ずかしい部分があるんです。
ポイ捨て、不法投棄が実はとても多い。
それを完全に無視して「サイパンって美しい島なんですよー!」っていう写真だけを発信し続けていていいのだろうか。
昔は、ココナツなどのそこらへんに捨てても問題ないようなものが多かったから、ローカルにはゴミはゴミ箱に捨てるという感覚がないんだよ。
という話を聞いたことがあるのですが、さすがにその理由だけでは無理があるでしょう。そんな時代から何十年経ってるんだ。
家庭ごみ収集が無料ではないという部分も不法投棄につながっているとは思う。日本とは違って、サイパンでは自分たちでゴミ収集会社と契約をするか、アパートごとに契約するかして家庭ごみを処理する。小さいゴミ箱サイズで週2回の回収で月額$20くらい。島のはずれのゴミ捨て場まで毎回自分たちでもっていくことも可能。
実は、自分が放置したジュースの空き缶、紙パック、紙パックジュースのストローの包装ビニールのポイ捨てが、美しい海を汚しているなんていう感覚が一切ないのかもしれないと思ったんです。
だって、魚なんてバシャバシャ泳いで飛び込む海にたまたまいる「モノ」でしかない。海洋生物の生活にまで、寄り添えてないんでしょうね。
もちろん、学校ではSDGsだけでなく、ECOに関する授業だってちゃんとあるし、チャリティで地元の子供団体がゴミ拾いをしていることもある。
みんなその時は拾うのよ。その時はね。
自分事になかなかならないのよね。極論を言えば、空き缶をポイ捨てしないといけないとして、顔が浮かぶ友達の家の庭に投げ入れるか、海に投げ入れるかの二択だったら、きっと海を選ぶ方が多いんだと思う。
海に住んでいる人(人ではなく、海洋生物たけど)の顔が浮かばないもんね。まわりまわって自分たちの住んでいる環境を脅かすとか漁獲量が激減するなんて絶対つながらない。
49%の動かし方
多数決で決まったことに対して、最大でも49%の賛成ではない人がいる可能性がある。
その49%は単純に反対という意見ではなく、反対にも強弱があったり、無関心という層も一定数いることがあると思う。
みんなで決めたことを推し進めるには、この49%をどう動かすかがカギなんじゃないかと思っています。
実は、ワタシはずっと『ゴミ拾いで神様ポイントをゲットしたら、あとから良いことが自分に起こる』という活動をしている。
なんとなく、ダイビングの合間にゴミ拾いをし始めてから始まったこの活動。
とくに、広めるつもりもなく、一緒に潜った人たちや賛同してくれる人達と一緒にゴミを拾っては、あとから起こったラッキーなことを「神様ポイント還元だ!」とキャッキャッして喜んでいただけだった。
コロナ禍で入国制限が始まってからも、コツコツと続けていたら、地元のYoutubeチャンネルも特集してくれた。
日本式に言うと徳を積むというような考え方かな。
最近だと、大谷翔平選手のゴミ拾いの考え方が有名ですね。
ゴミ拾いをしただけじゃメジャーリーガーにはなれないけど、野球をめっちゃ頑張って+運でメジャーリーガーになれた人がいるという事実。
ゴミを拾わない大谷選手がメジャーリーグで活躍できなかったかどうかは大谷選手ご自身もわからないかもしれないけれど、ゴミを拾う大谷選手は間違いなくメジャーリーグで大活躍じゃないですか!
めっちゃ夢広がるわー!
これは、本当に「シンジルモノハスクワーレマース」の世界で、説明のしようがないのですが、本当にワタシのような一般庶民の生活レベルでも本当に良いことが起こる。
実際、ワタシ自身ももしかしたらSDGsに関しては『無関心』層としてカウントされる可能性もあるかもしれない。
SDGs。言いたいことはわかる。必要性もわかる。では、実生活レベルでどこまで協力して、継続してやっていけるかってところ。
サスティナブル(継続可能な)をもっと解像度を上げて、人によってアプローチを変えることが、実は大切なんじゃないかな。
地球の環境を守るため!未来の子供に美しい海を残したいというモチベーションで活動を続けられる人もいると思います。
しかし、ワタシがゴミ拾いを続けているのは、実際にゴミ拾いをしているときの方がいろいろ調子が良いという理由から。だから、続けているんじゃなくて、続いている。
続けていくことより、続いていく方が熱量が少なくて済むんですよ。
アプリを使う方法もある。
ゴミ拾いに特化したSNSなんだけど、ゴミ拾いした場所がグーグルマップで共有できるんです。
今のところ、サイパンで参加しているのがワタシだけのようで、サイパン島でゴミ拾いした印はすべてワタシ。
この印が増えていくのをゲーム感覚で楽しめて、喜びを覚える人もいるかもしれない。陣取りゲームみたいな感じで。
ゴミ拾い自体をゲームにしてしまっている人もいます。
一人一人へのアプローチ方法を工夫して「未来の地球を守ろう!」の一刀流ではなく、「ゴミ拾いをして、ラッキーを呼び込んじゃおうよ!」とか、アプリやゲームを利用したゴミ拾い企画をすれば、残りの49%を動かし続けて行けるかもしれないと思ったのです。
そうすれば、きっと一人でゴミ拾いを続けていくより、莫大な神様ポイントが貯まるはず。そして、莫大な神様ポイント還元が受けられるに違いない!という完全なワタシの邪な思い100%です。
いいんですよ。どんな思いでゴミを拾おうと、ゴミが海に流れる可能性が下がるっていう結果は同じなんでね。
ってことで、いろんなアプローチで北マリアナ諸島に落ちているゴミをなくそうという組織を立ち上げたいと思います。
その名も
Island Keepers CNMI
いえーーい!パチパチパチパチ。ゴミ拾い集団Island Keepers CNMIの爆誕です!
Facebookグループ・Island Keepers CNMIはこちら。
ただ、集団と言ってもまだメンバーはワタシ一人。Keepersなんて複数形にしてるけど、実際はオンリーワンしかいません。
でもね、きっと賛同してくれる人たちが集まってくると思ってます。
だって、本当にゴミ拾いしていると、良いことしか起こらないんですもん。
ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。今日もハートマークをポチっと押して、サイパンおみくじをひいていってくださいませ。