vol.1.2 第2部 鮎川浜
「鮎川浜は鯨の町」と、この町で長年暮らしてきた人たちだけでなく、周りの集落の人たちも話す。鮎川浜に住めば鯨肉をたらふく食べられる、と憧れだったという。捕鯨基地として栄える以前、鮎川浜は牡鹿半島の先端の小さな漁村だった。約100年前からいくつもの捕鯨会社が進出、捕鯨産業が好況となった鮎川浜には1万人もの人が集まり、立ち並ぶ飲食店や映画館が賑わった。今は木々が生い茂る周辺の山々の上まで田畑が広がっていた。捕鯨の最盛期、南氷洋での半年間の航海に出れば家を1軒建てられるほどの収入があ